「再挑戦できるならトップも争える」宮田莉朋のWTCR初挑戦は不運の連続も、示した速さ

 WTCR世界ツーリングカーカップ第8ラウンド『JVCケンウッド・レース・オブ・ジャパン』は10月26日に決勝レース1が、10月27日にレース2が行われた。今回ワイルドカード枠で参戦し、たAudi Team Hitotsuyamaの宮田莉朋は、レース1ではトラブルでレースを終え、レース2では25位。レース3ではスタート直後のクラッシュでリタイヤという結果となったが、自信を得る週末となった。

 FIA-F4での初の連覇、そして全日本F3選手権では今季チャンピオンを争うなど、レーシングカートからフォーミュラでステップアップしてきた宮田。スーパーGT GT300クラスではSYNTIUM LMcorsa RC F GT3をドライブしているが、これまではあまりハコのイメージはなかった。

 しかし、わずか2回ほどのドライブを経て挑んだ今回のWTCR鈴鹿のワイルドカード参戦は、宮田の名前を世界中のツーリングカーファンに知らしめることになった。雨のフリープラクティスから、名だたる世界の強豪たちに食い込む順位につけると、金曜の予選1回目では7番手に。予選2回目では、赤旗中断でタイム更新がならず下位に沈んでしまったものの、それでも予選1回目、そしてシフトのアクチュエーターのトラブルでリタイアするまでのレース1の走りで、世界に『Ritomo Miyata』の名を広めた。

 迎えたレース2/3では、「守る必要もないのでガンガンいきました」と後方からのレースでバトルを展開しながら、25位でフィニッシュした。フロントグリルに接触のダメージがあったが、それも走行には支障がない。レース1からの課題だったスタートに向けて、チームは宮田の好みに合わせ、「自分の好きにやった結果」見事成功。大きくジャンプアップすることに成功した。

 ただ、一気にポジションを上げることに成功したが、チームメイトの富田竜一郎が「ここからがいよいよ『WTCRだな』という感じのレース」と語るとおり、1コーナーからS字にかけて激しい攻防が展開される。宮田も、ふだんのレースなら横に並ぶことなどあり得ないS字の進入に「3〜4ワイドの状態」で飛び込んだ。

 その混乱のなかでプッシュされた宮田のアウディRS3 LMSはコースオフを喫し、さらにコース復帰したところでトム・コロネルのクプラTCRと接触。スピンを喫し、マ・キンファのアルファロメオ・ジュリエッタTCRとクラッシュ。フロントとサイドに大きなダメージを受けてリタイアしてしまった。

 WTCRの洗礼を受けるかたちになってしまった宮田だが、とはいえ週末の3レースを振り返ると、不運だった部分が多いとはいえ、最後のレース3では課題のスタートも解決。速さをアピールして終えることができたこともあり、「それほど悪い印象はなく終えられた」という。

「週末を通じて、いい順位だったのにトラブルが出てしまったり、予選でタイム抹消になってしまったりと運がなかっただけで、チームのクルマも含めて、速さの面でいい状態で走れていたのは間違いないです」と宮田はレースを振り返った。

「最初はちょっと胃がキリキリしましたが(笑)、上位も下位も経験できましたからね。もし次回チャレンジできるのであれば、鈴鹿でなくとも他のコースでも、非常に楽しみなカテゴリーになるのかな、と思っています」

 レースウイーク中、宮田のもとにはアウディスポーツのスタッフが訪れたり、ライバル勢も注目する存在となった。「再度挑戦できるのであればトップ争いできると思います」と宮田も自信をみせた。

 トヨタの育成ドライバーであり、来季に向けては、国内でのステップアップが有力視されているが、もし可能ならば、もう一度WTCRでの戦いが見たい……と思わせる宮田の初参戦となった。

WTCR鈴鹿ラウンドに参戦した宮田莉朋のアウディRS3 LMS
WTCR鈴鹿ラウンドに参戦した宮田莉朋
WTCR鈴鹿ラウンドに参戦した宮田莉朋のもとには、今季全日本F3のタイトルを争ったサッシャ・フェネストラズも応援に駆けつけた。
宮田莉朋(アウディRS3 LMS)
ガブリエレ・タルキーニ、ケビン・チェコン、ロブ・ハフといったWTCRの猛者達を抑えた宮田だが、悔しいレースとなった。

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