リアム・ギャラガー『ホワイ・ミー?ホワイ・ノット』 繊細とまで言えるロックに対する愛情表現

リアム・ギャラガー『ホワイ・ミー?ホワイ・ノット』

 プラチナ・ディスクに輝いた2017年の『アズ・ユー・ワー』に続く2枚目のソロアルバムです。オアシスそしてビーディ・アイの解散からの数年間、兄ノエルとの確執そして破滅的な言動で一時は再起すら危ぶまれていた彼を支えてきたものは、誠実なロック・スピリッツと、繊細すぎるともいえる音楽に対する愛情でした。

 「同じ物をもう一度、さらに良く作ることが自分のミッション」という彼の信条は自身にもファンに対してもひたすら誠実なロックを作ることであり、いたずらにスタイルを変えたり、人目を惹く話題作を作るのではなく前作より一歩でも良い作品を作る努力をすることだったのです。例えば今作では全曲をパートナーと共作することによってより魅力のある曲作りに成功しています。今作品に感じるアルバム・イメージは愛と寛容。かつてはアルコールとドラッグ漬けだった彼が今大切にしているのは子供と健康。音楽的にも人間的にも理想であるジョン・レノンがそこにいるのです。

(ワーナーミュージック・2300円+税)=北澤孝

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