渡米で殻突き破る ロサンゼルスで暮らす人々-vol.798

By Yukiko Sumi

上條 史織 / Shiori Kamijo ダンサー

ディズニーが好きでダンスを始めた上條史織さん。13歳と遅いスタートだったが渡米で殻を破りプロのカンパニーに入団した。「やらないよりはやったほうがいい」と、挑戦者の姿勢を貫く Photo credit: Alex Cole

ロサンゼルスを拠点に活動するダンスカンパニー『Entity』。メンバー13人と少数精鋭のプロフェッショナル集団だ。上條史織さんは150人がチャレンジしたオーディションを勝ち抜き、同カンパニーで初の外国人正式メンバーかつ唯一の日本人ダンサーとして2017年から参加している。

米国滞在5年目の現在、ダンスインダストリーやベネフィットのショーに出演しながらワークショップでのパフォーマンスやレッスン提供、マドンナなどの人気アーティストの振付師であるマット・キャディ氏のアシスタントを務めるなど、多忙な日々を送る。

「ディズニーが大好きで、ディズニーランドで踊りたくて」ダンスを始めたのは13歳と遅い。お年玉を貯めてディズニーランドの年間パスを買い、ショーを見るために一人でディズニーランドに通う中学生だった。感情を言葉ではなく体の動きで表現することが新鮮に映り、いつの間にか〝踊ること〟自体に夢中になった。

「唯一人生で続いていて、これ以上好きだと思えることはないぐらい好き。ダンスをやめたらストレスで死ぬ」と言うほどダンスにかける想いは強い。「死に物狂いで踊って自分の全部をすべてから出す感覚は、恋愛でもお金をもらっても得られない」。

2017年に150人が受けたオーディションに合格した『Entity』では、カンパニー初の外国人正式メンバーかつ唯一の日本人ダンサーとなった Photo Credit: Mike Esperanza

数年前に訪れたLAで、そのダンススタイルに魅了された。帰国してから3年間必死に働き、渡米のためにお金を貯めた。この間、東京のダンススタジオで教える傍ら、SMAPや中川翔子といった人気アーティストのバックダンサー、リトルグリーモンスターの振り付け助手も務めている。

「教えることは受ける側と見る側の両サイドからの視点で自分の感覚を再確認することができて、引き出しが増える」と、すべての経験を自分のダンスに活かす。そんな姿勢がEntityのオーディション合格という形で実を結んだと言える。

「メンバーも振り付けもジャンルにとらわれていない。メンバーは皆、どんなジャンルでも踊れる。日本にいるときからずっとあこがれていた」というカンパニーの一員になってから、殻が破れた感覚があったという。「日本でキチッとしたダンスの形をやってきたけれど、それを突き破って、米国で周りのダンサーとかに感化されて殻がパカッと開いた瞬間があった。それからいろいろな話が来るようになった」。

今後はコレオグラフィーとダンスの両方に携わり、コンセプトムービーを制作して世界に配信するなど、活動を形にできるようなプロジェクトに取り組んでいきたいと話す。「楽しくない時期もあったけど、やらないよりはやったほうがいい」というチャレンジ精神を貫き、米国から世界へ羽ばたく。

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