「映画通し生き方学んだ」 ロサンゼルスで暮らす人々-vol.802

By Yukiko Sumi

落合 賢 / Ken Ochiai 映画監督

LAを拠点に日本、ベトナムで活躍する映画監督、落合賢さん。AFIの卒業制作短編映画『ハーフケニス』では、全米監督協会(DGA)から日本人として初めて審査員特別賞を受賞。これまで数多くの賞を受賞しキャリアを積んでいる。公式サイトはhttp://www.kenochiai.com

ロサンゼルスを拠点に、日本とベトナムでもプロジェクトを展開する映画監督、落合賢さん。たとえ国がどこであろうと、映画作りや映画に携わるところすべてが「自分の居場所」だという。初めて映画を作った12歳のときからそれは変わらない。「小さいころから映画を作り続けていて、もう24年ぐらいになる。ずっと映画中心の人生を送ってきて、映画を通して生き方自体を学んだ」と話す。

映画作りの楽しさは一つ一つの過程にあり、頭の中にあるやりたいことを一つ一つ具現化していき、各スペシャリストのビジョンが徐々に加わりできあがっていくプロセスや観客と共有することを含めた一つの大きなうねりを楽しめるのだと、その魅力を語る。

日本の高校卒業後の2002年に渡米し、南カリフォルニア大学(USC)、アメリカ映画協会付属大学院(AFI)で映画作りを学んだ。これまで短長編合わせて30本以上の作品を撮っている。長編映画は計5本。3カ国を股にかけて活動していることもあり、なかなか目標の「年に1本の長編」は難しいというが、全米映画監督協会審査員賞、国土交通大臣賞、ヒューストン国際映画祭最優秀短編映画賞、札幌国際短編映画祭最優秀短編映画賞など数々の賞を受賞し、着実にキャリアを積み上げてきた。

映画制作の際に意識するのは、〝人と人とのつながり〟だ。「昔からそのテーマは変わっていないけれど、年を重ねるごとにつながりのあり方は変化してきている」と明かす。映画監督にとって一つ一つの作品は、その年年での自分のあり方や成長を記録する「柱につけた身長のキズのようなもの」だという。いろいろと折り合いをつけなければならない部分は出てくるものの、そのときの等身大の自分が作品に表れる。30代半ばになり、周りには第二、第三の人生を歩みだしている人もいる。家族を築く大切さを実感するようになり、「最新作では父娘のつながりを描くことに挑戦した」と語る。

ベトナムでの長期にわたる撮影を終えた現在は、住み慣れたLAに戻り脚本を書き溜める毎日だ。日本人として日本で生まれ育ち、20代から30代にかけて米国で学び、近年はベトナムで過ごすことも多い。そのクロスカルチャーを活かした作品を作りたいと考えている。スポーツものやミュージカル作品への挑戦や、まだ実現していない米国で英語の長編映画を撮ることも視野に入れている。

2016年には『サイゴン・ボディガード』でベトナム映画初の日本人監督として注目を浴び、2018年公開の『パパとムスメの7日間』は同国内で大ヒットを記録した

「映画は20世紀の芸術。21世紀の芸術、エンタメは何かと問われると、ゲームなどがあるがまだ映画に取って代わるものはできていないので、それを模索中」と、新たな分野の開拓にも意欲的だ。

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