自信と反骨心で世界王者目指す ロサンゼルスで暮らす人々-vol.809

By Yukiko Sumi

岡田 博喜 / Hiroki Okada プロボクサー

高校でインターハイ、国体の2冠を達成し、プロ入り後も日本Sライト級王座、WBOアジア・パシフィック同級王座を獲得など順調にキャリアを積み重ねる岡田博喜さん。米国大手ボクシングプロモーション、トップランク社と昨年8月に3年の契約を結んだ (Photo credit: 角海老宝石ボクシングジム)

7月中旬から、通算3度目となるロサンゼルス合宿を行うプロボクサーの岡田博喜さん。キャンプ、試合を含めて5回目のLAは「ここでは強い相手とスパーリングができるし、明日はだれとやるんだろうという張り詰めた空気は、日本ではなかなか味わえない。その雰囲気を味わいつつ緊張感を持ってやれている」と、充実の日々を過ごす。

昨年8月、米国の大手ボクシングプロモーション、トップランク社と3年の契約を結んだ。日本人では2人目という大きな出来事だが、「なぜ僕なんかにオファーが来たかいまだに不明」と笑う。

 

米国デビューは昨年9月。カリフォルニア州フレズノで判定勝利を収めた。今年2月には再び米国のリングに登場し、元世界王者相手にプロ初黒星を喫したものの「負けたけど収穫があった」と、気持ちはより前に向いた。

 

米国では客の反応がシンプルだ。いい試合は称えられ、内容の悪い試合ではブーイングが飛ぶ。ファイトマネーも高く、「ここでがんばって大金を目指したい。次、日本でやるのは引退試合のとき」という覚悟でアウエーでの戦いに挑んでいる。

 

Kー1の魔娑斗選手にあこがれ、中学2年でボクシングを始めた。高校3年時にインターハイと国体の2冠を獲得。

大学ではボクシング部の監督と合わずに一度は競技を辞めた。それでもボクシングが好きで、ジムに入会した。

「プロになるつもりはなく、スパーリングがしたかっただけ」だったが、ある日、ジムのマネジャーから「プロ登録しておいた」とライセンスを渡された。

いつのまにか決定していた試合は「マジかよと思ったけど、もうやるしかない」と腹をくくって臨み、TKOで白星デビューを飾った。

 

“いつのまにか”でプロになったが、今でもリングに立ち続けているのは「ボクシングが好きだから」。周囲の期待に応えたいという思いも大きい。

「デビュー戦で勝って『次もがんばれよ』と言われたとき、ああ、応援してくれているから裏切れない、という気持ちがわいた」と振り返る。

上を目指していたわけではない。しかしやればやるほど欲が出てきた。日本王者になり、東洋、アジアランキング入りを果たすとタイトル獲得。

「気がついたら世界ランクに入っていて、もう目指すところは世界しかない」というところまで来た。今の“最低”目標は世界挑戦。「もちろん世界王者になりたいけど、それは最終目標」と話す。

 

今年2月、フレズノで行われた米国2戦目でプロ初黒星を喫した。しかし「あの試合の後からボクシングに対する引き出しだったり、精神力は上がっている。次の試合でそれを出したい」と話す

ボクシングを始めてから「自分に少し自信が持てるようになった」という。

「一つのことをやり通す強さや反骨心が身につき、自我が確立した。やっていてよかった」と語る視線の先にあるのは、世界の頂点だけだ。

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