編集部で聞いてみたら……頻度もお手入れ方法もバラバラすぎた
夏の間、猛暑の日も土砂降りの日も、山歩きを共にしたギアたち。
「滝汗をかいて背負ってたザック、毎回洗うのが面倒くさくて」……という話を編集部でしたら、「え?ザックって洗うものなの??」という答え。編集部員にアンケートをとったらこんな結果になりました。
編集A:すべてきっちりお手入れ派
ザック:夏場は毎回。風呂場で手洗い
シュラフ:シーズンごとに風呂場で水洗い
テント:毎回。タオルで汚れを拭き、室内で乾燥
編集B:洗濯機で時短、もしくは放置
ザック:洗わない。毎回汚れを拭き取り
シュラフ:2〜3回ごとに1回。洗濯機で洗い干す
テント:何もしない
編集C:ザックの汚れは気になるが……
ザック:ほぼ毎回。風呂場で手洗い
シュラフ:洗わない。使用後にベランダで干す
テント:毎回汚れを拭いてベランダで干す
編集D:お日様パワーでなんとかする
ザック:年に1回程度。風呂場で手洗いして天日干し
シュラフ:洗わない。天日干しのみ
テント:雨の日に撤収した場合は風呂場で水洗い後、天日干し
編集部でもお手入れ方法がバラバラだと判明しました。たしかに山に行く頻度、汗をかく量、住環境も違いますが、こんなに自己流の扱いで私たちのギアは大丈夫なのでしょうか???
総合アウトドアメーカー<モンベル>にお手入れ法を聞いてみた
編集部のアンケートによると、お手入れをする上での最難関は「干す場所」。都会の住宅事情だと「ベランダがない」なんてこともありますよね。またお手入れをしない理由として「洗うとギアが傷みそうだから」なんて声もありました。正解はどこにあるのか……。
そこでギアお手入れ用の洗剤や撥水剤も販売している<モンベル>広報部に、正しいお手入れ方法があるのかどうかを聞きに行きました。
そもそもギアって洗っていいの?ダメなの?
ウェアならばわかるのですが、ザック、シュラフ、テントは水洗いや洗剤洗いをしても大丈夫かどうかわからず、ついつい後回しになってしまいます。
モンベル
仲間さん
汗を吸うザックはこまめに、シュラフはかさが低くなったり保温性が下がったと感じたりした場合は丸洗いします。テントはスポンジや雑巾で汚れを拭き取るだけでもOKですが、汚れが目立つ場合は洗濯します。
また洗剤を使うことで、皮脂や泥汚れも落ちやすくなります。お手入れをきちんと行うことは、ギアの寿命を延ばすことにつながりますよ
「洗うと生地が劣化する」説は本当ですか?
洗濯をすると「コーティングなどが剥がれたり加水分解したり、劣化するから洗わない」という意見もありました。そう言われれば、何となく説得力も感じてしまいます……。
モンベル
仲間さん
生地へのダメージを心配されてのことだと思いますが、その生地にあった正しいお手入れを行えば大丈夫です。ジッパーが腐食したり撥水性が落ちたり、使用後汚れたままにしておくと、それ以上のダメージになることもあります
陰干しって言われても、スペースがないんです……
お手入れ方法を調べていると、乾燥は「陰干し」と指定されていることが多いです。家の中は狭いしベランダがないので、公園など直射日光のあたる場所でもお手入れできるといいのですが。
モンベル
仲間さん
陰干しを推奨するのは、紫外線による生地の劣化を防ぐためです。ベランダでの陰干しが難しければ、屋内でスノコや網戸など風通しのいいものの上に載せて、平干しでもOKですよ。扇風機などを使って、乾燥時間を短くさせるのも有効です
なるほど。
今回はモンベルが出している以下の洗剤と撥水剤を使って、この夏使ったギアを手入れしてみたいと思います!
O.D.メンテナンス ベースクリーナー 400ml
常温水でもしっかり洗える中性洗剤。防水透湿性素材にも適応。
成分:界面活性剤20% 、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン
価格:1,000円
O.D.メンテナンス ダウンクリーナー 200ml
ダウンのタンパク質を傷めず洗える中性洗剤。ロフトを回復し、保温力をアップさせます。化繊綿にも対応。
成分:界面活性剤30%、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミ
価格:700円
S.R.スプレー 330ml
防汚性にも優れた撥水・撥油スプレー。乾燥機による熱処理が不要なので手軽に使えます。防水透湿性素材にも適応。
成分:フッ素系ウレタン樹脂/シリコーン樹脂
価格:1,239円
自宅で実際に洗濯&お手入れしてみた
モンベルの仲間さんのアドバイスを参考に、今回は私物ギア3点のお手入れをしてみました。どれくらい汚れが出るのか、怖くもあり楽しみでもあり……。
使われてる素材が多すぎな「ザック」編
地べたに置かれ、雨に濡れ、汗を吸い……。3アイテムの中で最も汚れているであろうザック。ただお手入れをするにも、ベースの生地やベルトパーツなど、使われている素材がメーカーごとに違いすぎるのが曲者です。
今回は<KS ultralight gear>というガレージブランドのザックのお手入れです。一般的によく見かける素材だったので、こちらで試してみることにしました。
水でも大丈夫ですが、皮脂などの汚れが落ちやすいぬるま湯の方がおすすめ。こすったりすると、コーティングの剥離などにもつながるので、5分ほど浸けおきしたのち、やさしく押し洗いします。
洗い終わったら、洗剤液を流して、水がきれいになるまで十分にすすぎます。
ザックにはプラスチックパーツなども多く、また防水性の高い生地が使われているため脱水機にかけるのはNGです。
写真では逆さにしてシャワーに吊るし、内部も含めて水をきります。タオルで水分を拭き取った上で、室内で自然乾燥。
モンベル
仲間さん
「室内で干すためのものがない!」というひとは、写真のようにバスタオルなどを敷くのも一手ですよ
さて、お手入れは完了ですが、いったいどれくらいの汚れが出たか……気になるところですよね?
さすがに1回の山行だったので、ドロドロした黒い水になるほど汚れは出ませんでしたが、でも全体的に茶色く濁った水になっています。そしてよくよく見ると、細かな砂泥や草切れが沈んでいました。草切れは背面パッドのメッシュなどに入り込んでいたようです。これが2回3回、ワンシーズン、数年の使用となると……想像するのがこわい!
万年床になりつつあった「ダウンシュラフ」編
寝るときにしか使わないし、さほど汚れていないと思いがちなシュラフ。使用後に陰干しをするだけでOKかと思いきや、長年洗っていないとかさが低くなり、保温性が低下することもあるようです。今回はダウンシュラフをお手入れしてみます。
初めて購入した<モンベル>のシュラフ。海辺でのキャンプや国内外の登山に加え、来客時には友人の布団代わりに使ったりと、今回のギアのなかでもっとも使用頻度が高いもの。でもお手入れはテン場での天日干しと、使用後数時間の陰干しのみ。
シュラフを洗うのに最適なのはバスタブです。しっかりダウンが浸かるようにぬるま湯をはり、洗剤を入れます。ポイントはジッパーを閉めて、軽くたたみ空気を押し出すこと。なかなか水を吸いませんが、根気よくていねいに押し洗いをしていきます。中綿がしっかり濡れるまで洗います。洗濯液がきれいになるまで、すすぎを繰り返します。
脱水はダメージを与えないよう、まずはバスタブ内で水を押し出します。絞るのは中綿にかたよりができるのでNG。今回は洗濯表示を確認し、ある程度水を押し出した後に脱水機を使用しましたが、もし脱水機NGの場合は、バスタオルなどで残りの水分を吸い取らせます。そのあとすぐに乾燥機にかけます。濡れたままシュラフを放置しないように!
モンベル
仲間さん
乾燥機は「弱」設定にして最初は1時間、まだ乾いていないならば30分追加するなど、シュラフの乾き具合をこまめにチェックしてくださいね
今回は合計2時間でほぼ乾きましたが、念のため室内でも3日ほど乾燥させました。
早く乾かしたい!と乾燥機を強設定にすると、生地にダメージを与えてしまう可能性もあるので、焦らず気長に乾かすのがベターですよ。
では、こちらも汚れをチェック!
買って以来7年間、洗っていなかったシュラフからはいったいどんな汚れが出るのでしょうか……。
茶色い水にはなりませんでしたが、洗濯液はかなり濁っています。こまかな砂もシュラフ内に入り込んでいたようです。うーん、やっぱり洗うと汚れていることがわかりますね。
洗うも干すもかさばり度No1の「テント」編
ほかの2つはお手入れ時がわかりやすいけれど、いちばん迷うのがテント。よほどの汚れでなければ丸洗いしなくても大丈夫です。そして自宅で設営してみたら、この状態。あまりの狭さに我が家の猫も困惑。
モンベル
仲間さん
場所を取るテントのお手入れを楽にする秘訣は、できるだけ撤収前にきれいにしておくことです。特にテント内の細かな砂などは、設営状態のまま入口を下に向けて出しておきましょう
今年購入したばかりのテント<NEMO>のホーネット。初張りは土砂降りの五竜岳だったこともあり、撥水性が落ちている気がします。
汚れを拭き取った後は、フライシートにまんべんなく撥水スプレーをかけておきます。スプレーは吸い込むと有毒のため、屋外で噴射します。乾燥は約20分程度。ベランダがない場合は、スプレー作業のみ日陰のある屋外で設営してからかけるといいかもしれません。
スプレー噴射はベランダで行いましたが、乾燥は室内で。室内干し用の折りたたみ式物干しは場所も取らないので、1台あると便利ですよ。
お手入れと同じくらい大事!シーズンオフの保管方法
冬山は登山をお休みするという人は、半年近くギアを室内で保管することになりますが、ここでも注意点が。
モンベル
仲間さん
シュラフやテントはスタッフサックで密閉して保管すると、湿気が内部にこもることがあります。綿の布袋などにゆとりを持たせて通気性をよくする、乾燥剤も一緒に入れるなど、保管時も乾燥状態を保つようにしましょう
せっかくお手入れをしても、保管方法が悪かったせいで劣化してしまうなんて切ないですよね。
ザックは風通しのいい場所にかけて、シュラフは付属のストリージバッグ、テントは手持ちのコットン製エコバッグに入れて、今シーズンは保管したいと思います。
今回教えてもらったお手入れ方法で、大事なことは3つ。
汗や泥をすっきり落としたギアで、気持ちよく登山。長く使うためにもぜひお手入れしてくださいね。