事業承継~あなたの会社、誰に継ぐ?~

北海道は後継者不在率が全国ワースト

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今週のけいナビは「事業承継」がテーマ。
北海道の中小企業の後継者不在率は、全国で最も高く7割を超えていて、その数は、10万社に及ぶと推定されている。

北海道では後継者不足が深刻

まず取材したのは、先月、札幌で開かれたイベント。テーマは『事業承継への心構え』。親などから会社を引継いだ「経験者」が、自らのリアルな体験を話した。

経験者が事業承継の苦労や難しさを語った

後継者不足の背景には、全国的に中小企業の経営者が高齢化していることにある。いわゆる「団塊の世代」が、今も会社を引っ張っている。イベントを主催したNN生命執行役員の信岡良彦CXOは、「経営者は多忙で、後継者対策が後回しになりがち。後継者不足は深刻な問題」と話す。親が社長という参加者は「現状の業態や方向性のままいくのかどうか。変革するなら、古参社員もいる中でどう進めるのか」と課題を話す。

事業を受け継ぐ側も悩みは絶えない

小樽の地酒専門店「酒商たかの」。日用品雑貨の問屋業からスタートし、2代目の高野泰光さんが酒屋とスーパーを展開。3代目の洋一さんは、当初は家業を継ぎたくないと小樽を飛び出し、一部上場のゼネコンに就職。アジア各国のインフラ整備に貢献した。30歳になり「帰らなければならない」と決心するも、薄利多売の安売り店として、経営は危機的な状況だった。

当初は事業を継ぐ気がなかったという3代目。父もそのつもりだった

売り上げは年間で数億円あったが、赤字続き。そこで取り組んだのが「事業の絞り込み」。赤字のスーパー事業をやめて「酒屋」1本に絞れば立て直せると考えた。着目したのは、「特約店」の仕組み。酒屋の中には、日本酒を作る蔵元と
直接取り引きができる「特約店」がある。厳しい条件もあるが、「特約店」になれれば「地域でここだけでしか買えない」など、他に比べ有利な条件で販売できる仕組みだ。「酒商たかの」の場合、特約店の契約を45の蔵元と結んでいる。

蔵元と直接取り引きができる「特約店」に着目した

父・泰光さんが始めた有料テイスティングコーナーをヒントに、角打ちの「酒場」も開業。ベテラン社員を説得し、スーパー部門から移ってもらった。売り上げは縮小したが、黒字に転換。今後は、この"酒場スタイル"の飲食店をフランチャイズ展開する計画だ。

形を変えながら看板を守ることも、事業承継の一つのあり方だ

札幌にある事業承継の公的支援機関「北海道事業引継ぎ支援センター」。2011年の設置以降、相談件数は増加。昨年度、累計で1,200件を超えた。中小企業診断士の資格を持つアドバイザー5人が、主に親族以外の承継を中心に支援している。

親族の事業承継が統計的に減っている中、ここ数年増えてきているのが、企業が買い取って引き継ぐ「M&A」。昨年度成立した28件の事業承継のうち、ほとんどがM&Aだという。だが、「敵対的なM&A」のイメージなどから、浸透していないのが現状だ。

中小企業診断士の新宮隆太さんは、「中小企業の場合、友好的なM&Aしか成立しない」と話す。成長が見込める会社でも後継者がいないがために、廃業の道を選ぶケースもあるという。必要なのは「計画性」だ。

上川の美深町。牧場の敷地内にあるチーズ工房「きた牛舎」。地元のエサで育った、新鮮な牛乳でラクレットチーズなどを作っている。

10年前に工房を立ち上げた島英明社長は、家庭の事情から、再来年の春で引退を決めた。そのため、後継者を探すことに。チーズ作りの経験は問わず、やる気と美深に住むという覚悟があれば、チーズ作りを一から教え、施設や車、スタッフも引き継ごうと考えている。

美深のエサで育った牛の乳からひと月に300キロほどのチーズを生産。地元の道の駅などで販売している。札幌をはじめ、北海道外の物産展などにも出向いてチーズを売り、美深の町をアピールする。年間の売り上げは2,000万円ほど。施設の規模を考えれば、3,000万円くらいまでは伸ばせるという。

チーズを通じて美深の酪農をアピールしたいと、これまで取り組んできたという

実は島社長、工房の開設当初から後継者を探していたという。これまで何人か候補はいたが、事業承継までには至らなかった。そんな時、商工会を通じて知ったのが、全国の空きや問題の解決を図る、「0円都市開発」の取り組みだ。

これまでにかけた設備投資は約1,500万円。それを0円で引き継ぐという

物件や事業そのものを0円で譲渡しようという取り組み。島社長は「チーズ工房を始めるにあたって、課題や障害をクリアしてすぐに動けるということも『0円』ということが表現してくれる」と話す。

後継者にも美深への思いを持ってほしいと語る島社長

取材をしていたディレクターにも「引き継ぎませんか?」と声をかけていた島社長。この「0円都市開発」を通じて、新たな後継者候補が見つかったという。「美深を第2の故郷だとして、ここの良さを分かってもらい、住みついて次の代につなげてほしい」と話す。

会社の数だけ、事業継承の形がある。それぞれの悩みや思いも引き継ぎ、会社を持続させるために苦心している。

番組の最後は鈴木ちなみさんの一言。コメントのフルバージョンはYouTubeなどのSNSで公開中。
(2019年11月2日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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