小惑星ヒギエアの形状が判明。「準惑星」に再分類される可能性

火星と木星のあいだを公転する小惑星「ヒギエア」。遠く小さく暗いことから観測が難しい天体なのですが、今回その詳しい形状を把握することに成功したとする研究結果が発表されました。

■直径およそ430km、ほぼ球形をしていた

ヒギエアを観測したのは、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の「超大型望遠鏡(VLT)」です。今回のVLTによる観測ではヒギエアの表面の95パーセントを撮影することに成功し、その形状がほぼ球形をしていることが明らかになりました。

データの分析により、ヒギエアの直径はおよそ430km自転周期は13.8時間であると判明しました。NASA・ジェット推進研究所(JPL)のデータベースによると、過去の観測で割り出された直径はおよそ407km、自転周期は約27.6時間とされています。実際のサイズはそれよりも一回り大きく、自転周期はほぼ半分だったことになります。

■ヒギエアは20億年前の衝突によって形成された?

小惑星帯にはヒギエアと似たような軌道を描く小惑星が幾つか見つかっており、「ヒギエア族」と呼ばれています。ヒギエア族はヒギエアの破片と考えられているのですが、観測によって判明したヒギエアの地表には、ヒギエア族の小惑星を生み出したような衝突の痕跡が見当たりませんでした。

そこで研究チームがシミュレーションを行ったところ、今からおよそ20億年前、ヒギエアの元になった天体に直径75~150kmの別の天体が正面に近い角度で衝突した可能性が出てきました。2つの天体は衝突によって大小の破片に分裂しましたが、その一部が球形に集まって今のヒギエアを形成し、残った破片がヒギエア族の小惑星になったとみられています。衝突後の破片からヒギエアが形成される過程を示したシミュレーション動画が、ESOから公開されています(Movie Credit: P. Ševeček/Charles University)。

■小惑星から準惑星に分類が変わるかも?

実は、ヒギエアが球形をしていることは、天体の分類上重要なポイントとなります。

天体の比較的新しい分類に「準惑星(dwarf planet)」というものがあります。太陽を公転してはいるものの、惑星のように独立した軌道を持たない(似たような軌道を描く天体が他にもある)天体のうち、自身の重力で球形をしているものが準惑星に該当します。

小惑星帯最大の天体である「ケレス」は当初小惑星に分類されていましたが、球形をしていることから準惑星に分類が改められました。以前は太陽系の第9惑星とされていた「冥王星」も、海王星の外側にあるエッジワース・カイパーベルトで多くの天体が見つかり始めたことから、現在は準惑星のひとつに数えられています。

ESOは発表のなかで、これまで小惑星に分類されてきたヒギエアも、今後は準惑星に分類が変更される可能性があるとしています。

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Image: ESO/P. Vernazza et al./MISTRAL algorithm (ONERA/CNRS)
Source: ESO
文/松村武宏

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