被爆クスノキと“対面” スピーチコンで苗木植樹を紹介 ベトナムのフインさん

被爆クスノキに触れ、説明を聞くフインさん(中央)とゲンさん=長崎市坂本2丁目、山王神社

 「遠い国で存在する、再生のシンボル」-。7月にベトナム・ダナン市で開かれた日本語スピーチコンテストで、会社員のフイン・ティ・トゥー・トゥイさん(24)は、長崎市の山王神社にある被爆クスノキへの思いを語った。原爆の熱線と爆風に耐え、奇跡的に新芽が出たことに触れ「いつの日か、直接手を触れたい」と結んだ。その願いが30日、かなった。
 コンテストは、長崎県とダナン市共催。2016年から毎年実施し、1位と2位には、副賞として県内の視察旅行が贈られる。日本のアニメや映画などを通して独学で日本語を勉強したというフインさんは、グランプリを獲得。2位で大学生のゲン・テイ・テュイ・クインさん(20)らと一緒に、26日から県内の観光地などを訪問している。
 スピーチでフインさんは、15年8月に中村法道知事がダナン市を訪れ、平和の象徴として被爆クスノキの苗木を植樹したことを取り上げた。当時、大学生だったフインさんは、祖父と植樹式を見学。被爆クスノキのエピソードを聞き「日本を肌で感じた」。長崎市出身のシンガー・ソングライター、福山雅治さんが作詞作曲した「クスノキ」の一節も歌い、感極まって涙があふれた。「いつの日か、あの大楠に直接手を触れたい。ベトナムから愛と真心を届けます」と結んだという。
 待ちに待ったこの日。山王神社を訪れ、被爆クスノキの幹にそっと触れたフインさんらは、原爆が投下された74年前に思いをはせた。「つらい時、悲しい時、クスノキのように頑張ろうと思った。夢がかなってうれしい」と語った。
 フインさんとゲンさんは将来、日本に留学して日本語や文化をもっと学びたいという目標があるという。対面前日の29日、県庁を訪問した2人に、浦真樹県文化観光国際部政策監は「長崎とベトナムは歴史的にもつながりが深い。家族や友人たちとぜひ何度も長崎を訪れてほしい」と話した。

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