「待った」の横行

 喜びと興奮で思わず手が滑ってしまいました…と書いても何の言い訳にもなるまい。対馬市出身のプロ棋士、佐々木大地五段(24)の活躍ぶりを紹介した29日付の本欄に勘違いがあった▲末尾近くに「ひのき舞台まであと2勝」と書いたが、棋王戦はベスト4以降、敗者復活戦のある変則トーナメントで挑戦者が決まるため、この部分は筆者の早とちりだった。申し訳ありませんでした▲29日の朝、誤りに気づいて青くなったが、印刷されて、世に出てしまったものは取り返しようがない。自分の指した手や打った石を取り消す「待った」が将棋や囲碁でご法度なのと似ている、と言ったら「反省が足りない」と叱られるだろうか▲政界では相変わらず、そんな「待った」が横行している。「自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」の文部科学相に「私は雨男」の防衛相。発言が物議を醸した途端に、撤回します、謝罪します、不快な思いをされた皆さまにおわびを…▲だが、どんなに慌ててみせても、一度出た言葉は消えないし、心の中のどこにもない言葉は絶対に口から出てこない。批判の広がりは当然▲気になるのは安倍晋三首相の胸中だ。「どうして大臣にしたんだろう」-もし、少しでもそう考えているなら「待った」でも再考でも、どうぞ遠慮なく。(智)

© 株式会社長崎新聞社