IT人材 長崎に集める 富士フイルムHD 古森重隆会長 課題は育成 大学連携に期待

「九州のIT人材を長崎に集め、事業化を加速したい」と語る古森会長=長崎市茂里町、長崎新聞社

 富士フイルムホールディングス(HD)会長・最高経営責任者(CEO)の古森重隆氏(80)は長崎新聞のインタビューに応じ、安倍晋三首相の経済政策を評価した上で「人材育成」などを課題に挙げた。長崎市に開設した人工知能(AI)技術の研究開発拠点については「九州のIT人材を集め、事業化を加速したい」と述べ、本県の大学や企業との連携に期待を寄せた。

 -安倍晋三首相とは公私ともに親しい。11月で通算歴代最長となる安倍政権の経済政策の評価は。
 平成の低成長時代に大規模な金融緩和を断行し、景気を回復させた。「借金が増えた」との批判もあるが、安全な国債を買いたい国民とウィンウィン(相互利益)の関係が成立している。国内を安定させ、経済を発展させたのは高く評価されていい。

 -解決すべき課題は。
 特に三つある。まず少子高齢化。思い切った手を打たなければ国は衰退する。わが社は出産祝い金を第3子以降は増額し100万円を支給している。次に地球温暖化。海水温が上昇し水蒸気が増え、さらに強力な風雨が日本を襲いかねない。これまで以上に治水など国土強靱(きょうじん)化を進めるべきだろう。三つ目は人材育成、特にAIやIT分野だ。今後、自動車などあらゆるものに実装されていく。

 -東京・丸の内に続くAI技術の研究開発拠点として「ブレインズ九州」を長崎市に開設した。老朽化した橋などの社会インフラ構造物の点検や診断を効率化する技術の提供を目指す。
 長崎県には橋梁(きょうりょう)など社会インフラの維持管理に関するデータが豊富にある。それとわが社のAI技術を組み合わせる。その実装を担う会社やグループも集まり始めた。九州のIT人材を長崎に集め、事業化を加速したい。在京で九州に帰りたい人の受け皿にもなる。
 丸の内では東京大や理化学研究所(理研)とコラボしている。長崎でも長崎大と感染症対策などで連携を模索中だ。再生医療を一緒に研究開発することも考えられる。

 -富士フイルムはヘルスケアなどへの大胆な構造転換で成長した。基幹産業の造船業が振るわない本県の方向性は。
 対馬の浅茅(あそう)湾や雲仙温泉など観光資源はまだ可能性を秘めている。養殖業も期待できる。もともと長崎の魚はミネラル豊富で味が濃く、おいしい。山と海が近く環境がいい。養殖魚の給餌や排せつ物除去、温度管理などハイテク化ならわが社も手伝えるかもしれない。

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