気分は変幻自在

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前の会社から含めて20年以上いろんなバンドやミュージシャンにインタビューをしてきたけれども、永らく懇意になった方もいれば一度きりのご縁だった方もいて、なかにはお亡くなりになってもう二度とお会いできない方もいる。

基本的に板の上に立つ方々とは必要以上に仲良くならないことを自分に課している。

大変おこがましいけれども作品を評価する立場なので、自分好みの音楽をその方がやっている場合、新作がいまいちだと本音をぶつけられないからだ。仮にインタビューしても歯切れが悪くなるし、第一こちらは表舞台とは無縁の裏方である。

元来社交性があるほうでもないし、仲良しこよしがやりたくてこの仕事をしているわけでもない。

どれだけ懇意にさせてもらっていても、ある時期から向こうがステップアップして疎遠になることもある。

これはぼくが編集する活字媒体の発行元がライブハウスという音楽の世界のゆりかごであるから、まぁ宿命みたいなものだ。

かつてのフジファブリックのように、気がついたらすっかり手の届かない存在になっていたというのが理想である。

さよならだけが人生だと謳ったのは井伏鱒二であり吉野寿さんであるが、自分も常々そう思っている。だから誰かと疎遠になるのは何も堪えないけど(大切な人の死別以外は)、なかには有難く続くご縁もある。

たとえば次号本誌の表紙巻頭を飾っていただくこのお方、キノコホテルのマリアンヌ東雲女史。

キノコホテルは来年の2月でデビュー10周年だそうで、ということはぼくがロフトプラスワンで行なわれたデビューアルバム発売前夜祭で司会をやってから丸10年経つわけだ。

数回の例外を除いて、キノコホテルの全作品のインタビューを10年間してきたことになる。

時折ネイキッドロフトで行なわれる『スナック東雲』でもバーテンの格好をして司会をやらされるし、なんやかんやとご縁が続いている。

だからと言って普段から頻繁に連絡を取るわけでもないし、支配人のプライベートは一切知らないし知ろうとも思わない。

だいたいバンドマンと仲良くなることをある種のステイタスと勘違いしている同業者はオール・ファックオフである。裏方は表現者との距離感を誰よりも気に留めなければならない。

キノコホテルは今年の6月号で表紙巻頭を飾ったばかりで、ソロとはいえ同じミュージシャンが年に二度も表紙巻頭になるのは異例だ。

だけどこれは自分なりの応援の仕方と幾ばくかの感謝の気持ちである。

もっともっとこの才女の音楽とキャラクターが世に浸透するまで頑張らねばならないと切に感じている。