『適材適所』とは笑わせる 謝ったら済む話ではない安倍政権2大臣の卑劣な失言 さあ、どうケツを拭く!

その信念とは?(画像は河野太郎公式サイトより)

これも、長期政権からくる弛みなのだろうか。萩生田光一文部科学大臣と河野太郎防衛大臣の「失言」を巡って起きた騒動は、萩生田大臣が「受験生に不安を与えかねない説明不足の発言であった」、河野大臣が「不快な思いをされた方におわびを申し上げたい」とそれぞれ謝罪、騒動の鎮静を図っている。

正直なところ、この騒動で実害を被ったひとりは安倍総理、とも言えるのでないか。10月29日の毎日新聞によれば、総理官邸で連立相手の公明党・山口那津男代表に、「閣僚の発言でいろいろ心配をおかけして申し訳ない」「これからも引き締めて、真摯に取り組んでいく」とこれまた陳謝したという。

ただでさえ、週刊文春に“スキャンダル”を報じられた菅原一秀前経済産業大臣の辞任で、野党は手ぐすね引いていたところに、萩生田発言、河野発言と連発。これによって再開した国会も、これらに対する質問で紛糾・空転するのはまず間違いない。

本来なら、今国会では安倍総理の“悲願”である改憲を巡る議論。または、日本国民の利益に直結する日米貿易交渉などが議題にあがっていたはずだ。しかし、蓋を開けてみれば側近と後継候補のオウンゴールで大停滞。斯くして総理の悲願も一歩後退、二歩後退となりそうな雲行きだ。

このようにいうと、政権与党支持者からは「野党の揚げ足取りだ」との声もあがりそうだが、一義的には軽率な発言をした両大臣の責任である。特に自他ともに認める“安倍側近”の萩生田大臣の発言は看過できるものではなく、文部科学大臣としての資質を問われるのは当然だろう。

改めて発言を振り返ってみたい。

まず先に河野大臣の発言だが、報道されているように自身の政治パーティーで、甚大な被害をもたらした台風を引き合いにだして、「私は雨男と言われました」「私が防衛大臣になってから台風が三つ」と言ったことが被害者に対して不謹慎である、との意見がでた。もっとも、「その度に、災害派遣、自衛隊は出てくれています」と述べ、所轄である自衛隊の意義を強調したものであることは文脈でわかる。

安倍政権と対立する朝日新聞系列である『報道ステーション』が速報で報じた経緯などもあり、百歩譲って“揚げ足取り”というのも穿った見方と言えなくもないが、それを差し引いても軽率な物言いであったことは否めない。次期総理候補のひとりとも言われる人物にしては、やはりお粗末である、と言えよう。

そして、この河野発言と比べ物にならないのは、萩生田発言である。報道等で周知されているよう、10月24日、BSフジの番組において英語民間検定試験について述べた言葉が大問題となった。番組内で、高額な受験料や都市部に偏った受験会場など公費がかかわる部分に、地域格差や経済格差で不公平が出てくるという懸念について、「自分の身の丈にあわせて頑張ってもらえれば」と述べたのである。

寅さんではないが、「それを言ったらお終いよ」と言いたくなる。そもそも憲法で保障された教育機会の平等性を否定するかのような発言を、文部科学大臣がするということは、これを無視(軽視)しているのか、あるいは無知なのかどちらかと言わざるをない。少なくとも、そのような認識の人物が大臣という地位にいてはいけないだろう。

つまり、河野発言は軽率だが陳謝すれば済む話だが、萩生田発言は謝ったからと言って済む話ではない。なぜならそれは担当大臣としての適正の問題だからだ。ましてや、組閣の度に安倍総理がいう「適材適所」からは程遠い。

しかし、このような発言を聞くにつけ、萩生田大臣個人がというより、自民党自体に「(野党がだらしないので)何を言っても大丈夫」という弛み・驕りを感じる。考えようによっては、盤石に見える安倍政権の内側では、目に見えないヒビが入り始めているのか。(文◎内藤仁)

© TABLO