怖いだけじゃない! ホラー映画には、人生をサバイブするコツが描かれてるってホント?

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ホラー映画に興味がありながらも、「怖い」というハードルで第一歩を踏み出せないでいる人って多いと思うんですよね…。かくいうPINTSCOPE編集部のメンバーも、そのうちの一人。ホラー映画を食わず嫌いしていました。

しかし、「ホラー映画のない人生なんてムリ!」というお二方にホラー映画愛を伺ったところ(「ホラー映画のない人生なんてムリ!好奇心を刺激する唯一無二の存在」)、「なるほど…そんな面白さがあるのか」と新しい扉が開き、ホラー映画に目覚めたのです! この面白さをもっと多くの人に広めたい!ということで、ホラー映画特集第2弾を企画しました!!

また、2019年は『チャイルド・プレイ』や『アナベル 死霊博物館』、『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』など名作ホラーの続編やシリーズ、そして『ハッピー・デス・デイ』や『サマー・オブ・84』など特に若い層にヒットした作品など、話題のホラー映画がたくさん公開。この流れに便乗しない手はありません。

そこで、今回は音楽・俳優・映画業界から、ホラー映画が大好きなロックバンド「Base Ball Bear」の小出祐介さん、ホラー作品に多数出演する俳優の中原翔子さん、「東京国際ファンタスティック映画祭ナイト」プロデューサーの大場渉太さんのお三方にお集まり頂きました! ユニークすぎるお三方!! …こりゃ、ホラー映画の魅力広がりまくりでしょ…!?

それでは、貴方をまだ見ぬホラー映画の世界へお連れいたしましょう〜。

まずはとにかく『ゾンビ』を観ろ!

― 今回は、色んな角度からホラー映画を語って頂くべく、様々な年齢・立場にある皆様にお集まり頂きました。…大変失礼ですが、一見では共通点を見出せないお三方が並ぶと、背景もあいまってホラー映画の一幕のようですね…。

普通の表情がよりホラー感を際立たせてしまう…。

小出: それにしても、すごい部屋ですねー。こんな場所があるんですか。

― 最近は、コスプレ撮影で使われる方も多いらしく都内にたくさんこういうスポットがあるそうです。

中原: 私も禍々しいセットや、よからぬ噂がある廃病院とか、いろんな場所で撮影したことを思い出しますね。

― 中原さんは、役者として多くのホラー作品に出演されていますよね。

中原: 業界では「地獄のしょこたん」と呼ばれています(笑)。それぐらい、一時期ホラー作品に多く出演していました。ちなみに初めてのホラー作品出演は、つのだじろうさん原作の『恐怖新聞』(1996)で、ろくろ首に追われて車に轢かれてしまい、運ばれた病院で発狂してしまう学校の先生役でした。ほかに、ゾンビや妖怪役も演じていますね。

大場: 結構、ひどい役を色々やってるよね(笑)。

― 大場さんは様々な映画祭の運営に携わり、業界で知らない人はいないと言われている映画宣伝プロデューサーです。そして、大場さんがプロデューサーを務める伝説の映画祭「東京国際ファンタスティック映画祭(以下、東京ファンタ)」が、今年の東京国際映画祭で14年振りに復活を遂げるそうですね!

大場: いやー、チケット売れるかなーと今から心配してるんですけどねー。(※ちなみにチケットは即日完売したそうです!)

― 編集部の皆も『ミッドサマー』(2019)が観れると興奮しています! 大場さんは、前回ホラー映画対談をした際に出演頂いた大久保さんにご紹介頂きました。大久保さんを含めたホラー映画ファンにとって、「東京ファンタ」は特別な場所だったようですね。

大場: 僕も最初は観客として参加していました。第1回のオープニング作品として上映された『フェノミナ』(1985)を観に行ったんです。「東京ファンタ」と出会えなかったら、今の僕はないでしょうね。

― 小出さんも、ミュージシャン仲間と映画について語り合う場をつくられていますよね。現在は、その模様を「みんなの映画部」としてWEB上で掲載されています。中でも特に、ホラー映画を取り上げた際の小出さんの情熱がすごいと伺ったのですが、ホラー映画を好きになったきっかけは何だったんですか?

小出: 僕の人生の傍に「ホラー要素」がいつも存在していたんですよね…。最初のきっかけは水木しげるさんです。子供の頃に水木しげるさん原作のアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』(1985〜1988)を観て妖怪に興味がわき、水木しげるさんの画集を見たんですよ。そしたら、アニメの絵柄と違ってすごくおどろおどろしかった。

― 確かに、水木しげるさんの描く妖怪は緻密で、そこに闇がありますよね。

小出: それで当時レンタルビデオショップによく連れて行ってもらっていた僕は、『日本妖怪大図鑑』っていうビデオを見つけるんです。その作品は、イラストと実写映像で構成されていて、子供の僕にとってその映像がとても怖かった。何か「やばいもの」を観ている感覚だったんです。

― 子供の時は、心霊写真やUMA(未確認生物)などに惹かれますよね。その延長線上に“妖怪”があったと。

小出: で、そのレンタルショップのホラー映画の棚に『食人族』(1981)も見つけまして…。

大場: はいはいはい。

中原: いきなり『食人族』!

小出: 子供だった僕は、「見てはいけないもの」として、ものすごく惹かれて。

大場: わかりますよ。

― 『食人族』は、グロテスクで残忍な描写が公開当時話題になった作品ですね。ドキュメンタリー調の演出で、実際に起こった事件だと誤解する人も多かったそうで。まだまだホラー映画初心者の編集部としては、ハードルが高い作品です…。

小出: 子供ですから、題字を見るのも怖かったわけですが「俺は大きくなったら『食人族』を観るぞ!」って、人生の目標にしていました(笑)。

大場: 「大人になるぞ」という、割礼の儀式みたいな。

― これがまだ小学校に上がる前というのが恐ろしいです(笑)。

小出: それから小学生になって「学校の怪談」ブームがあり、マンガ・アニメ『地獄先生ぬ~べ~』に出会い、中学生で映画『リング』(1998)、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999)が公開され、同時期に『ほんとにあった!呪いのビデオ』(1999~)と出会って。

― 『ほんとにあった!呪いのビデオ』は、『決算!忠臣蔵』(2019年11月公開)の中村義洋監督が最初のシリーズの構成・演出に関わり、その後、松江哲明監督など多くの脚本家や映画監督を輩出した作品ですね。

小出: R-15の映画が観れるようになったのをきっかけに、それでまたレンタルビデオ店によく通うようになり、『ゾンビ』(1978)に出会うんです。僕は、この作品を観て「ホラー映画で、こんなに感動する事ってあるのか」ってぐらい心が震えまして。その後に、いよいよ念願の『食人族』を観ると。

― なるほど。マンガやアニメ、テレビなどを含めた“怖いものが観れる”メディアのひとつとして、ホラー映画があったんですね。そして、『ゾンビ』で「感動する体験」をしたと。

大場: 僕は『ゾンビ』公開当時、中学1年生ぐらいだったのですが、テレビや映画館で流れる『ゾンビ』の予告編を観て、「絶対観たくない」と思っていたんです。でも、ホラー映画が好きな母親に連れて行かれて観たんですが、「こんなに素晴らしい人間ドラマが、ホラー映画で観れるのか」と感激して。

― 大場さんは、お母様がホラー映画好きだったんですか?

大場: そうですね、僕がホラー映画を好きになったきっかけは母親です。子どもの頃、夏になるとよくテレビでホラー映画を放映していたんです。

中原: あーそうそう、『オーメン』(1976)とか『エクソシスト』(1973)とかテレビでよく家族で観ましたね。

小出: テレビで、『オーメン』『エクソシスト』を流してたんですか!?

大場: そうそう当時はね、首が切られて「ギャー!」っていうシーンを流してました。寝てると「渉太! 始まる!!」って母親に起こされるんです。『血のエクソシズム/ドラキュラの復活』(1970)などを、テレビの前で正座して観させられまして…。それが毎年恒例で…僕は『ピーター・パン』(1953)が観たいのに…。

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― 『血のエクソシズム/ドラキュラの復活』は、フランケンシュタインやドラキュラシリーズを生み出したイギリスの映画制作会社ハマーフィルム・プロダクション製作の映画ですね。グロテスクな描写が結構あるので、子供にとっては酷ですよね…。

中原: お母様の英才教育!

小出: 恒例行事とは…(笑)。

大場: 観終わった後は一人でトイレに行けなくなるし、一人で寝るのも嫌になるし…。でも、毎年のことだから克服しようと思って「いやいや、これは所詮つくり物だから」という視点で観始めたら、逆に何だかホラー映画が愛おしくなってきて(笑)。

お化け屋敷と同じですよね。こんな驚かせ方があるんだとか、次はどうやって驚かせてくれるのかなとか、だんだんホラー映画って面白いなって思い始めたんです。そういった感じで、当時は映画館に家族で行っても、ライオンが人を食べる描写のある『グレートハンティング』(1975)とか、世界の残酷な風俗を描いた『世界残酷物語』(1962)とかを観せられて、しまいには『ゾンビ』を…。

― お母様の影響で、映画館で『ゾンビ』まで観るハメに…。でも、そこで感激したと。

小出: 『ゾンビ』はひとつの基準になると思いますね。そのぐらいドラマが、ホラー要素よりも込められた作品なんです。ゴア描写が苦手な僕でも楽しめたので。

― ゴア描写って何ですか?

中原・小出: 残酷描写のことです!

― …勉強になります。

大場: 『ゾンビ』は、閉鎖された空間で登場人物たちが生き残るために、どういう選択をするのかという人間模様が見れる。

小出: そう! だから『ゾンビ』を観て「面白い!」とか、「ホラーにもドラマがあるんだ」ということに気がつけたら、他のホラー映画も楽しめると思います。

大場: 中原さんも観てるでしょ?

中原: もちろん観てます、ゾンビの役もやるので。「今回は、どのゾンビですか? あ、動きがゆっくりめの、あのゾンビですね〜」と対応しています(笑)。

ホラー映画は、パーティームービー!

一緒に楽しめる仲間がいると、より楽しめる!!

― 中原さんは、ゾンビや妖怪を演じているということですが、演じ手だからわかるホラー映画を楽しむポイントなどありますか?

中原: 実は私、ホラー映画を観るのがあまり得意ではないんですよ…。

― えっ!? 怖いんですか!

中原: 自分が出演している作品は安心して観られるんですが、それ以外は知り合いが携わっていたとしても怖い。だから、初めてホラー作品に出演すると決まった時は、大丈夫かな?と迷いました。でも、いざ出演してみると、現場は怖いどころか明るくて爽快で(笑)。「血糊○ℓいきまーす!」みたいな。

やっぱり仕掛けが多かったり、カット数が多かったりするので、テンションあげて撮影を進めないと時間内に終わらないんですよね。

大場: それはあるだろうね。ホラー映画は特に限られた予算のことが多いから、短いスケジュールで撮影しないといけないし。

― そういう意味でも、ホラー映画は作り手のアイデアが試される場所となってるんですね。

中原: そう、私が怖がっている場合じゃない(笑)。『まだらの少女』(『楳図かずお 恐怖劇場』〈2005〉収録)で蛇女を演じたことがあるんですが、蛇なので衣装がズルズルっと床を引きずるように丈が長くて、足元を縫って塞いでいるから動けないんですよ。だから、とぐろを巻いて待ち時間に寝てたら、スタッフに「あの中原さんが一番怖かった」って言われました(笑)。

― でも、怖いものは怖いと(笑)。

中原: だから、観始めてから「あ! これホラー映画だったんだ!」って気づいて後悔することが多いんですよね。映画は前情報を入れないで観るので。しかも途中で止められないタイプだから、その時は覚悟を決めて最後まで観ます(笑)。

そういう流れで、2018年にアカデミー賞脚本賞を受賞したからという理由から観たのが『ゲット・アウト』(2017)。起こっていることは怖いんだけど、結構笑ってしまう。「この監督の作品は面白い!」と思って、ジョーダン・ピール監督の新作『US(アス)』(2019)は観に行きました。

小出: ジョーダン・ピール監督はもともとコメディアンなんですよね。

大場: そうそう、「スタンドアップ・コメディ」という一人でステージに立ち、観客に向けてまくし立てるスタイルのお笑い芸ですね。

― 「スタンドアップ・コメディ」は、政治批判や人種についてなど際どいネタが多い芸です。

中原: それが反映されて、映画も際どくて怖いんだけれど笑える。そういう意味で、私のようなホラー映画が苦手な人も楽しめました。

― 怖いんだけど笑えるホラー映画もあるんですね。それは興味がわきます。

大場: そういうことでいうと、僕はホラー映画を観て新しい音楽と出会うという側面がありました。昔のホラー映画は、ヘビメタとかロックが使われている事も多かったので、新しいバンドを発見する場でもあったんです。例えば、『フェノミナ』は音楽にアイアン・メイデン(イングランド出身のヘヴィメタル・バンド。80年代のヘヴィメタル・ブームの一翼を担う)が使われていて、そこからハマって聴き始め、ジャパンツアーを観に行ったりしましたよ。懐かしいなぁ。

小出: 『フェノミナ』からアイアン・メイデンにハマるルートもあるのかー。

― 『フェノミナ』は、昆虫と交信できる能力を持った少女が主人公の映画ですね。

中原: 私も『フェノミナ』だけは必死で観た人です。主役を務めたジェニファー・コネリーが当時、映画雑誌で表紙を飾っていて、あまりに美しくて一目惚れしたんです。でも出演している映画がどうやらホラーだと…。映画館にはどうしても行けず、レンタルされるまで待って「あー怖い、美しい、あー怖い、美しい…」っていう複雑な気持ちで観たことを覚えています(笑)。

― ホラー映画が苦手な人でも、音楽や出演している俳優に注目してみると、違う側面が見えてくるかもしれないですね。

小出: ホラー映画を観る時、「話がどう積み立てられているのかな?」という視点で見ると、また違う側面が見えてくると思うんですよね。

― 「恐怖の正体を知る」という視点ですか。

小出: 『リング』に登場する貞子も、TVから出てくるくだりだけ見ると、大げさすぎてちょっと笑っちゃいそうになりませんか? でも、なぜあれだけ怖く感じるかというと、それまでの細かい演出の積立が成立しているからなんです。

大場: 確かに、そういうところを注目して皆で観るとさらに面白いかもね。

― ホラー映画は友達とワイワイ言い合いながら観ると、より楽しいかもしれませんね!

大場: ジャンル映画って、そういう形で始まったようなものですから。

― お友達とホラー映画について語り合うことってありますか?

小出: 僕が熱くホラー映画をオススメすると、「それはもうホラハラ(ホラー・ハラスメント)だから」って言われるんですよ…。だから、このレベルで話せたら嬉しい(笑)。

― ホラハラ(笑)! ホラー映画について全く知らない状態だと、そう感じてしまう可能性はありますね…。

小出: ホラー映画って、ホラー描写がないものがないからな…。ホラー映画をあまり観たことがない人に僕らみたいなホラーファンが勧めると、逆に「怖すぎ!」って言われて、共感を得られずガッカリすることがあるじゃないですか。

大場: あります、あります。

小出: 僕の感覚は、あんまり受け入れられないのか…と思うこともあるんですが、この前『ヒルコ/妖怪ハンター』(塚本晋也監督、沢田研二主演〈1991〉)をオールナイト上映で観に行ったんです。そしたら、ほぼ満席で。その光景を見て「あ、一人じゃないんだ!」って感じました。この人たちと友達になれるなって。

大場: 別にコミュニケーションを直接とるわけではないんだけど、お互いに「わかる」っていう空気感を共有する感じあるよね。

僕は学生時代、スポーツや勉強もそんなにできない、いわゆる“リア充じゃない”友達たちと、『ゾンビ』を観た後にゾンビごっこをしたり、鑑賞した映画を「こうだったら面白いよね」と妄想を膨らませたりして楽しんでいたんです。その記憶がやはり強く残っていて、そういう人たちが集まっていた「東京ファンタ」という場にすごく魅せられました。そこで感じた「あ、ここには仲間がいる」っていう感覚がすごく印象に残ってて。

小出: 僕も『桐島、部活やめるってよ』(2012)で、スクールカーストの底辺にいる、神木隆之介さんが演じた映画部の前田を見た時、「あ、俺だ」って思いました。

中学生の時、友達がほとんどいなかったのですが、唯一一緒にいてくれた友達がいて、その彼が『ゲット・アウト』や『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017)に出ていた登場人物に似ていて、情がわくこともあります。

大場: ホラー映画を観て、大事な友達を思い出すって素敵ですね。

― 映画祭や上映イベントなど、映画を「好き」という気持ちを共有できる場は貴重ですよね。

大場: そういう一体感が「東京ファンタ」の面白いところだったかなと。

― 元々ファンとして「東京ファンタ」に参加していた大場さんは、のちに運営側に周りますね。映画祭やイベントで上映する映画はどうやって選んでるんですか?

大場: やっぱり…愛情を感じる作品は、製作にお金がかかってるかかってない関係なく、みんなに観てもらいたいなっていうのはありますよね。普段映画を観ていても「今度こういう作品をやったら面白いんだろうな」「こういう特集上映でこの作品やったら面白がってくれるかな」って、ついつい考えちゃいますよね。もう、仕事というか趣味(笑)。だから、無駄に映画館で2、3回観ちゃう。お客さんの反応を知りたくてね。

自宅でホラー映画を楽しむ時の、+ポイント!

― 先ほど中原さんは、「怖くて映画館では観れないけど、自宅では観てみようと思った」とおっしゃっていましたが、ホラー映画はみんなでワイワイと観ることもでき、自宅でも様々に楽しめる映画ですよね。

大場: 僕は自宅でホラー映画やSF映画を観るとき、暗いシーンや黒い表現が多いから、やはり電気は暗くしますね。

小出: 僕はヘッドホンをつけて観ますね。「あ! ここでこんな音が鳴ってるんだ!」「頭の後ろから音が鳴ってる!」とか、BGMでずっと変な低音が入っているとか、音響の面でも新たな発見があったりするんですよね。

大場: 映画館では、そこまで細かくわからないですからね。僕も、もう一度確認したいときは、ヘッドホンや音量を大きくして観ることもありますね。ホラー映画は、音響も本当に凝ってつくり込まれているので。

― それは、自宅鑑賞ならではの楽しみですね!

中原: 私は、役者ということもあって、研究として観る事もあります。仲のいい後輩の女優さんに「お芝居をもっと深く追求したい、どんな脚本のものを観ればいいですか?」って聞かれたら、私はホラー作品を勧めるんです。自分は観るのが怖いくせに(笑)。

― どうしてですか?

中原: 今までの皆さんとのお話で改めて気づいたんですけど、ホラー映画って脚本や構成がしっかりしていないと怖くならないんですよね。もちろん、衣裳とかメイクとか演出効果も重要なんだけれど、やはり完成された世界観がないと、役者はどうすることもできないと思うんです。

中原: だから、映画を知るという意味で、鶴田法男監督・高橋洋脚本『おろち』(2008)や長崎俊一監督・脚本のVシネマ『夜のストレンジャー 恐怖』(1991)、北川篤也監督・高橋洋脚本の『インフェルノ 蹂躙(じゅうりん)』(1997)などを勧めることがあります。

大場: そういう意味では、僕も「ホラー映画が好き・携わりたい・つくりたいなら、これは1回観ておけ!」っていう映画があります。それは、『犬神の悪霊(たたり)』(1977)です。

― 『エクソシスト』や『オーメン』が大ヒットして、世間がオカルトブームだった時期につくられた作品ですね。

大場: そうそう、オカルト映画が流行っていたから、その波に乗るために企画された作品なんだそうです。でも、当時はまだオカルト映画そのものの定義が日本では浸透していなかった。だから、プロデューサーなどの製作陣が悩みに悩んで、やっとの思いでつくったと。その時の悩みや苦労がエネルギーとなって伝わる映画なんです。ラストのシーンとかね、ものすごいですよ、本当に。是非観てほしい。

小出: 僕が、そういう意味でオススメしたいのが鶴田法男監督の『ほんとにあった怖い話』のオリジナルVHS版です。さっき話した「ホラー映画の演出の積み立て」がよくわかると思います。

― 鶴田法男さんは、「Jホラーの父」と呼ばれ、様々な映画監督に影響を与えています。中原さんも先ほど挙げられた『おろち』の監督でもありますね。今年復活した『ほんとにあった怖い話』(フジテレビ)を2時間ドラマとして完成させた方です。

小出: その中に収録されている小中千昭さん脚本の『霊のうごめく家』をぜひ観て欲しいです。細かい描写が一つ一つ丁寧に積み上げられていて、Jホラーのお手本のような1本です。

― 私たちのような、ホラー映画初心者でも観やすい作品ですか?

小出: わかりやすいと思います。あまり予算はかけられていないはずなんですけど、それを乗り越えて工夫とアイデアでつくられているのが素晴らしいので。

大場: ホラー映画は、非日常的なものをどう構築して、身近に見せるかだから、そこが大変だよね。2020年は、鶴田さんから大きな影響を受けた清水崇監督の『犬鳴村』も公開されます。この映画はすごいですよ。清水監督は、僕が勧めた『犬神の悪霊』も観ています!

― 以前PINTSCOPEで取材した、ホラー映画がお好きな三吉彩花さん(「みんなに好かれるなんて無理!大切なのは、誰と一緒にいる自分が好きか。そんな私はホラー映画が大好き〜♪」)が主演を務める作品ですね。2020年は、小説家・乙一さん(安達寛高監督)の『シライサン』なども控えていますし、Jホラーがますます盛り上がるかもしれません!

小出: 先ほど話題になった『US』のジョーダン・ピール監督も、Jホラーの影響を受けていますよね。

大場: 『US』のラストシーンは、園子温監督の“ある映画”からインスパイアされているそうですよ。

― そうなんですか!? そういう楽しみ方も。

中原: 私も観ていて、それは感じました! Jホラーに通ずるものがあるなと。

小出: それなら『へレディタリー/継承』(2017)も大丈夫ですよ!

大場: 『ハッピー・デス・デイ』(2019)も大丈夫。

中原: 本当に? なんかどうしても「マジ感」が消えないんですよね…。

大場: 僕もですよ! 悪魔祓いを見て、「悪魔っているんだ…」って思ってたし。

中原: 今も?

大場: 今もそういうところあるよ! …もしかして、真実を隠すためにホラー映画はつくられているのかもしれないしね…。宇宙人が、いつか来たるべき時のために『未知との遭遇』(1977)をスピルバーグがつくったみたいな…。

小出: そういうのあるかもしれませんね…。

中原: わかった…。「心の準備映画」と思ってホラーを観てみます…。

― そ、そんな上級な楽しみ方も…(汗)

小出: ゾンビが来た時サバイバルするために、『ゾンビ』を観て学ぶと! 船橋のららぽーととか、逃げ込むにはうってつけですよね。

大場: いろんな工具が売っているユニティとかもいいですね…。

(ハロウィンの夜はこうして更けていくのであった…。)