「実質値上げ」の声にどう反論?コカ・コーラが新サイズボトル投入

「350ミリリットルで税別120円では、実質的に値上げではないのか」「希望小売価格と実勢価格との乖離を是正することを狙ったものではないのか」

日本コカ・コーラなどが10月31日に開催した、「コカ・コーラ」の新容器サイズの戦略発表会。質疑応答の場では、報道陣から鋭い質問が飛びました。

冒頭の質問は、同社が2020年1月から2サイズの新しいペットボトルを導入することに関するもの。炭酸飲料の代名詞は、いったいどのような変化を遂げようとしているのか。そして、その背景にはどんな狙いがあるのか。発表会の内容をひも解いてみます。


350ミリボトルだと2割強の値上げに?

日本コカ・コーラなどが来年1月13日から導入を始めるのは、350ミリリットルと700ミリリットルという2サイズの新ペットボトルです。このうち、700ミリは世界で初めて導入するサイズだといいます。

メーカー希望小売価格は350ミリが120円(税別、以下同)、700ミリが195円。まずは、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県のスーパー、ドラッグストア、ディスカウントストア約8,500店舗で先行して投入する方針です。

こうした販売戦略に対し、発表会では報道陣から冒頭のような質問が出てきました。

特に後者の「希望小売価格と実勢価格との乖離是正」については、投入対象店舗が強く関係しています。今回発表された新ボトルが投入されるスーパー、ドラッグストア、ディスカウントストアは、いずれも希望小売価格と店頭価格との乖離が大きい販路だからです。

こうした販路のデータを集計しているTrue Dataの調べでは、2019年7~9月のコカ・コーラ500ミリボトルの平均価格は82円。これはクーポン割引なども含めた価格になるため、必ずしも店頭価格とは一致しないものの、それでも希望小売価格とは大きな開きがあることが想像されます。この差を狭めることができると、収益改善効果は小さくなさそうです。

また、前者の「実質値上げ」についても、現行の500ミリが140円なのに対し、新ボトルでは350ミリで120円。容器の原価を考慮しないとすると、1ミリ当たりの価格は500ミリが0.28円なのに対し、350ミリでは0.34円。2割強の値上がりととれなくもありません。

背景に少子高齢化による飲用習慣の変化

これらの質問に対して、コカ・コーラ ボトラーズジャパンの佐藤一仁・東京営業本部長は「今回の目的は、お客様の飲み方に合ったパッケージを提供すること。価格の是正は考えていません」「店頭価格は500ミリよりも350ミリのほうが低く設定されることが想定できるので、実質的な値上げとは考えていません」と反論しました。

日本コカ・コーラの和佐高志チーフ・マーケティング・オフィサーによると、今回の新サイズ投入の背景には、日本の世帯構造の変化に伴う炭酸飲料の飲用習慣の変化があるといいます。

国内では、少子高齢化の一方で、1人世帯や2人世帯の数は増加しています。他方、ペットボトルのコカ・コーラはこれまで500ミリが中核商品で、外出先で自分が飲むためにコンビニや自動販売機で購入する時も、自宅で1人で飲んだり2人でシェアするために購入するのも500ミリ、という状況になっています。

外回りや動いている最中であれば1人で500ミリを飲み干せますが、日本コカ・コーラなどの調べでは、屋外で即時に消費するのに比べて、自宅で飲む時の飲用量は20%ほど少なくなるといいます。このため、500ミリでは1人だと飲み切れず、逆に2人だと物足りないという事態が想定されたそうです。

「自宅に持ち帰っていただいても最大限に楽しめる容器サイズをお届けすることで、新たな需要を掘り起こしていきたい。飲料市場を成長させるチャンスだと考えています」(和佐CMO)

売上高が1.3倍に拡大と試算

炭酸飲料は、冷え方などによっておいしさが変わるもの。そのため、容量が重要で、飲み方や飲む人数によって最適な容量が変わるといいます。

そこで、500ミリでは多い人には飲み切りサイズの350ミリ、500ミリでは足りないペアには2人飲みサイズの700ミリを手に取ってもらうことを想定。日本コカ・コーラでは、今回の施策によって、売上高が従来の1.3倍に拡大すると試算しています。

自信の根拠は、新パッケージを並べた飲料売り場で実施したサンプルユーザー対象の買い物シミュレーションです。インタビューなどから、「新たな容器サイズにニーズがあると確信した」と、佐藤本部長は胸を張ります。

他方、「新たなサイズが登場したことと、その魅力を、わかりやすく伝えることが重要だとわかった」(同)ことも事実。そのため、パッケージごとに飲用シーンをイメージしてもらいやすい広告を配置するほか、販売店に新サイズ専用の什器を用意したり、効果的な販売方法を販売店と一緒に検討していく方針です。

順次500ミリは新サイズに置き換え

東京を中心とした1都3県を先行販売の対象地域に選んだのは、単身者が多く、徒歩や自転車で買い物する人が多かったからだそうです。「まずはコカ・コーラブランドで先行導入して、動向を見ながら、エリアやブランドを拡大することも視野にいれています」(和佐CMO)。

今回導入する3つの販路では順次、既存の500ミリを350ミリと700ミリに置き換えていく計画です。ただし、「現段階では、このパッケージが一番良いと、得意先に説明していくのが基本方針」(佐藤本部長)。その完了時期は現時点では未定だといいます。

消費者は今回の新ボトル投入を、ニーズの変化に的確に対応したサイズ変更ととらえるのか、それとも単なる値上げと判断するのか。その答えが出るまでに、それほどの時間はかからないかもしれません。

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