きっかけはオンラインゲーム、慎重型30代女性が株でプラス15%を稼ぐまで

株式投資を始めようと思っても、まず何からしたらよいかわからない――。どんな著名な投資家も最初は初心者でした。

投資を始めたばかりの人は、どのように失敗をしながら学んでいくのでしょうか。試行錯誤を繰り返しながら自分の投資スタイルを確立しつつある、投資歴1年半のあやさん(女性・30代)のケースを紹介します。


最初の2カ月は勝率100%

――株式投資をはじめたきっかけは何でしょうか?

株式投資は10年以上前から「やってみたい!」と思っていたんです。だけど、まとまった資金がないし、教えてくれる人もいなかったので、なかなか始められませんでした。きっかけができたのは1年半前。趣味のオンラインゲームを通して知り合った個人投資家の男性たちに「興味があるなら教えるからやってみなよ」と背中を押されて、証券会社に口座を開き、100万円を入金しました。

――売買はどのようにして覚えたのですか?

最初はオンラインゲームの仲間だった個人投資家の「師匠」からわからないことを聞いていました。取引のデビューでは自分もサービスを利用しているZOZOを「買うぞ!」と意気込みましたが、前日になって「やっぱりつまんないかな」と迷ってしまい、インターネットで有名な女性トレーダーの推奨銘柄から良さげなのを3つ選んで買いました。師匠に報告すると、「1つはまあまだけど、あとの2つは良くないね」とダメ出しされましたが、3つともめちゃ上がって、「オオッ!」と思いました。最高のデビューでした。

――ビギナーズラックでしたね。

そうなんですよ! 最初の1カ月は勝ち続けていました。取引はデイトレか短期のスイング。仕事が始まる9時半までに、投資家のSNSで話題になっている株に指値で注文を入れて、休憩時間にチェック。上昇していたら売って、マイナスだったら様子見して、利幅を取りに行っていました。儲かるよりも損をするのが怖いので「ここでいいや!」って小さな値幅で利益確定していました。20円から200円の値幅で、2,000円から20,000円プラスになればそれで充分でした。

「月5%利益を出せたらいいな。それくらいならいけるかな」と思っていたのですが、師匠からは「5%8なんてヘッジファンドでも難しいんだから、そんなにうまく行かないよ」と言われました。実際、勝率100%だったのは最初の1~2カ月だけでした。

相場の悪化とともにマイナスに

――ビギナーズラックの後は、どのように売買をしたのですか?

デイトレを経験した後、次はもう少し長く持ってみようと中長期投資も始めてみましたが、全然うまくいかなかったんですよ。わかっていなかったというか。特に好きなジャンルもなく、業績のようなファンダメンタルズにも興味がもてなくて、チャートや出来高といったテクニカル面ばかり見ていましたから。2018年は5月に「セル・イン・メイ」が起きて、夏枯れ相場となり、株価も全体的に下がってきて、私の成績もマイナスに転落しちゃいました。

その頃は下がったらすぐに損切りしていました。マイナスが出ると、どこまで下がるんだろうと怖くなって。損切りすれば、もうそれ以上、損することはないですから。新しい銘柄に乗り換えたり、またデイトレに戻ったり、迷走していました。

## 2018年末の急落を乗り越える

――投資スタイルが定まらなかったのですね。

デビューから半年が経った月に日経平均の先物取引を覚えました。たまたま先物を中心に取引されている投資家さんたちのLINEグループに参加することになったのがきっかけです。それまでは全体の動きを気にしていませんでしたが、先物の値動きを読むようになってからは、日経平均が大きく上昇している日は買わない、というふうに考えて投資するようになり、成績も安定してきました。

昨年末はマーケットが下がると読んで、一時的に資金を引き揚げノーポジションにしました。そのおかげで年末の急落に巻き込まれず、年間で10%くらいのプラスで終えることができました。年末に大損失を出して死んでしまった人をたくさん見てしまって、マーケットの怖さを感じつつも、「やっていけそうかな」と思いました。

――株式取引の勉強や情報収集はどのようにしていますか?

私の場合、始めた頃から色々な投資家の人たちから直接、話を聞くようにしてきました。たまたま入ったSNSのグループは本当にみんないい人たちで、いろいろ教えてくれるし、株も関係なくオフ会をして遊んでいました。フットワークが軽いし、面白いし、頭がいいし「すごいな~」って。投資についてはLINEグループで仲良くしている先輩に相談しています。

――どのようにして仲のいい知り合いをつくるのですか?

基本的に株のコミュニティーアプリで知り合っています。その中で全国の投資家の知り合いがたくさんできました。一人で勉強するよりもいろいろなタイプの投資方法や経験を聞いた方が勉強になります。仲良くなった人にはLINEで相談しています。

――成功している投資家から学ぶことはありましたか?

成功している投資家さんから学んだのは、ひとつはタイミングですね。いつ投資家から引退してもいいくらい資産のあるRさん。普段はガツガツ買っていませんが、昨年末に急落したときのように、ほとんどの人が怖くて手が出せないときに割安になった株をここぞとばかりに買って大きく利益を上げていました。成功している人の共通点は、注目している優良株が値下がりしたタイミングで買ったり、買い増したりして、何倍にも上昇したときにしっかりと売っています。

もう一つはファンダメンタルを重視していることです。私が知る中で、いちばん資産のある投資家さんのAさんはファンダメンタルズや成長性を徹底的に調べていました。何百銘柄も保有しているのに売上や利益の月次情報をしっかりチェック。株主総会の季節には1日に総会を何社もはしごして、経営者の話に耳を傾け、投資家グループのLINEに積極的に意見や情報を上げていました。上昇すると自信をもって買っているので、日経平均が大きく下げているような相場でもあせっていません。

――「師匠」の成績は?

師匠は、2018年は全然ダメでした。ハイリスクハイリターンの成長株が好きですが、業績や出来高が伴っていないので、突然、急落することもあります。それでも思い入れがあるので、損切りができずに負けてしまっていました。

周囲には市場から退場する人も

――新興株には浮き沈みが激しいですからね。

Sさんという女性は一時期(含み損が)700万円マイナスでした。大化けしそうな成長株にすごく詳しくて、私にとっては謎の銘柄をたくさん買っていますが、師匠と同じで思い入れが強くて損切りができないんですよ。塩漬けには耐えられるけど、少し利益が出たら売ってしまっています。

――テンガバーを目指すはずが売ってしまうのはもったいないですね。

利益を出し続けるのは難しいですね。最悪のケースだと、株を持っている会社の決算が悪くて1日400万円損したり、先物をしている人がトランプ砲に直撃されて5分で300万円を損したり、「しばらく相場から退場する」と姿を消す人もいました。

行き着いた投資スタイル

――天国と地獄で大きく分かれていますが、先輩たちの成功・失敗から導かれた投資スタイルは?

ファンダメンタルズを重視するようになりました。2019年に入ってからは業績が伸び続けているか、出来高はあるか、知名度はあるか、東証一部かどうかとチェックしてから買うようになりました。

たとえばエコグッズを販売する「トランザクション」。プラスチック製のストローを廃止する飲食店のニュースを見て、いい関連株がないか探しているときにLINEグループの先輩が教えてくれたのがこの銘柄でした。調べると、業績や出来高、知名度、東証一部の条件をクリアしていたので買うことに決めました。

値幅的にはまだ200円程度しか上がっていませんが、エコ化の流れはこれからも変わらないので長期で保有するつもりです。

それまでは割高でも欲しいと思ったときに「買っちゃえ!」と手を出して失敗していましたが、我慢して我慢して安いときに買うように心がけました。工具のネット通販会社「MonotaRO」は「ここが底値かな」という時に買って利益を出せました。

――米中貿易摩擦や世界景気後退でマーケットも不安定になっていますが、今後の投資については、どのように考えていますか?

6月にイベントで出会った有名個人投資家のDAIBOUCHOUさんから「年率15%以上で業績が上昇している、伸びている企業を買いなさい」と教わりました。「NYダウもチャートでは天井。これから何年も下げ相場が続くと不安じゃないですか」と質問したら、「30年下げ続けている相場はない。自分は利益を上げるために安くなった時にこそ買いたくなる。30年続けていたらいずれ利益になるから大丈夫」。その言葉にすごく納得しました。

――なるほど。下落局面でも保有を続けられるようになったのですね。

以前はすぐに損切りしていましたけど、今は下がっていても株も持ち続けられるようになりました。今、一番下がっているのは宅配ポータルサイト運営の「夢の街創造委員会」。2018年の株主総会に出席した投資家Aさんから「2019年は大きな設備投資のために減益になるけど、2020年には業績が回復すると会社が説明していたよ」という話を聞いて買いました。実際に今年の決算は減益だったので、今は含み損を抱えていますが、将来上昇すると確信していれば、怖くはありません。

下がったところでは、押し目買いをしようと思っています。もし業績の伸びが止まったら、そこが売りのタイミングですね。

――1年半でものすごく上達しましたね。

オプション取引、経済危機に強い金も売買できるようになりたいと思っています。とにかく、いろいろな取引を覚えて試してみたいです。貯金も増えてきたので、投資額を200万円に増やすつもりです。DAIBOCHOさんも「死に金はもったいない」と話していたので、貯金するなら投資に回した方がいいかなって。今のところ、通算で15%くらいの利益が上がっています。タネ銭を増やした分、利益も増えると見込んでいます。

上げているときも下げているときも堅実に利益を出せるのがいちばん理想です。「損をしない」「損をしても少し」のスタンスで「ずっと生き残っていけたらいいな~」と思っています。

(取材協力・株式会社スマートプラス)

※本記事は取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。投資に関する最終決定はご自身の判断でなさるようお願いいたします。

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