米国で目覚めた日本愛

ロサンゼルスで暮らす人々-vol.811

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Yukiko Sumi

Journalist

Yukiko Sumi

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Japanese from Germany. Journalist with 20 years experience. Language: Japanese, German, English

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チカコ・スズキ / Chikako Suzuki 美術監督

美術監督としてハリウッドで活躍するチカコ・スズキさん。エミー賞ノミネートはFacebookでたくさんのお祝いコメントをもらって知ったという。「まさかという感じだった」と振り返るが、「仕事のオファーが来るときにあれこれ聞かれることはなくなったけれど、生活自体は変わっていない」と話す

自らを「日本かぶれの外国人」と称するのはチカコ・スズキさんだ。美術監督として数多くのTV番組や映画の製作に携わり、2014年には『House of Lies』という作品で美術監督賞部門で日本人として初めてエミー賞を受賞した実績を持つ。

現在はアメリカ国籍だが、日本生まれの日本育ちで在米27年になる。

 

美術監督の仕事を始めたのは「なりゆき」。洋画好きの母親のもとで育ち、自然に映画が好きになった。そのため、外国の文化にはもともと興味があり、英語の勉強をするなら本場に行ったほうが早いと留学を決めた。

留学後はまずブロードキャスティングを専攻。しかし「もっと娯楽性のあるものがやりたい」と舞台美術に専攻を変更した。しかし大学院まで進学すると、周りはコアな演劇ファンばかり。

「ついていけない」と感じ、今まで勉強してきたことを生かして何かできないかと考えたとき、ハリウッドへと目が向いた。

 

卒業後、ロサンゼルスへ移住。美術監督としての道を歩み始めた。「LAはいろいろな人に出会える。毎日違う場所へ行って発見することがあるのはすごいこと。都会だけど自然もあって大好き」と、その選択が正しかったことを確信する。

美術監督の仕事は毎日に変化があり、作業が特定されていないので刺激がある。作品ごとに年代やロケーションは異なるため、リサーチには膨大な時間をかけ、プロジェクトごとに新しく学ぶことがたくさんあり、自分の知識となる。

「自分の何かを表現できるし、チームワークなのでみんなと作り上げる楽しさがある。労働時間が長く体力的にはつらいし、私生活もない。嫌いじゃできない仕事」とアツく語る。 普段は「人見知りの引きこもり」というスズキさんだが、いったん仕事に入ると別人格になるという。

「日本人だから雇われるということはまずない。米国人と対等にやっていけるメンタルと英語力が必要。慎ましやかにしていたら潰される。戦えるメンタルの強さは不可欠」。そのためオンとオフの切り替えを大切にし、プロジェクトが終わると必ず旅をするようにしている。

 

米国籍に変わっても日本への愛は増す一方。日本文化の普及や、日本の映画製作者への窓口を広げるため、日本映画を扱う映画祭『JapanCuts Hollywood』を昨秋立ち上げた

4年前、高野山を旅行したとき「日本に目覚めた」という。子どものころから日本史が大好きだったものの、現代日本には興味がなかったスズキさん。しかし今では「日本のすべてが好き」と話し、剣道や三味線を習い始め、日本へ帰ると必ず旅行するように。いずれは時代劇の美術担当と、プロデュースに回り日米合作映画を作り、日本へ〝逆輸入〟することが目標だ。

「ずっと日本にいたらここまで日本を好きになれなかった」と話すように、日本を愛する気持ちは米国でしっかりと育まれている。