【熊本城のいま】崩落石垣 研修で“復元”

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研修で、解体した百間石垣の一部を使って積み直す石工ら。中央の長い板が石垣の勾配の目安となる「丁張り板」=熊本市中央区

 熊本城の石材を使った実践的な石工の研修が10月20~22日、二の丸広場北側の催し広場などで行われた。全国から集まった石工や造園業者ら約50人が、熊本地震前の写真などを基に、地震で崩落した百間石垣の一部を“復元”。文化財である石の扱い方や長期間にわたる作業の苦労を体験した。

 文化財石垣保存技術協議会(事務局・姫路市)と熊本市の主催で、熊本城での研修は昨年に続き2度目。若い石工らにとって、実際に積んであった石垣の石を使う機会はほとんどなく、「今の熊本城だからこそできる貴重な研修」(同協議会)という。

 30~40代の参加者が3班に分かれ、石積みや石割り、石割り道具の作り方について、熟練の石工から指導を受けた。

 石積み作業では、石垣の元の勾配の目安となる「丁張[ちょうは]り板」を立てなければならない。広場に保管されている百間石垣の石を使った研修作業でも、石垣の勾配通りに丁張り板を斜めに2本設置し、板と板の間に赤い糸を張って、石垣の正面を合わせながら4~5段分積み直した。裏側には本物の石垣のようにぐり石を詰めた。

 昨年に続き参加した熊本市の造園業坂井志丞[もとつぐ]さん(30)は「石と石のどの部分を合わせるかなど、微妙で難しいところを教わった。見えないが裏側のぐり石がいかに大切か、文化財である石を傷付けないバールの使い方など勉強になった」と満足げだった。「熊本の人間で一歩ずつ、熊本城を直していくんだという気持ちになりました」

 熊本城の特別公開や二の丸広場を訪れた多くの観光客や市民らが、珍しそうに研修の様子を見守った。昔ながらの道具を用いて巨大な石を割る様子を見て、拍手が沸き起こり「いいものを見せてもらった」「あんな石が割れるのか。すごい」と声が上がった。

 「一般の方に研修を見てもらうことで、石垣修理は時間がかかることを知ってもらえたのでは」と協議会の松本勝蔣[かつまさ]会長(77)=佐賀県唐津市。「石工だけでなく、文化財修理のコンサルタントや役所の職員らも一緒に研修に参加し、実際の現場さながらだった。熊本で最高の研修ができた」と話した。

 催し広場ではフェンス越しに、積み直した石垣を見ることができる。(飛松佐和子)

(2019年11月1日付 熊本日日新聞朝刊掲載)