首里城火災

 早朝、ふと目覚めてテレビをつけて衝撃を受けた。那覇市の首里城から火の手が上がり、まだ暗い沖縄の空を真っ赤に染めていた▲周囲が明るくなるにつれて、現場の様子がはっきり映し出される。正殿をはじめ主要な建物が焼け落ちた、あまりに無残な光景。今年4月にパリで起きた世界遺産ノートルダム寺院の火災が頭をよぎった▲首里城は15~19世紀の沖縄を統治した琉球王国の王城。先の大戦末期の沖縄戦で焼失したが、1992年の沖縄の本土復帰20年を記念し正殿などを復元した首里城公園が開園した▲独特の建築様式は文化的、歴史的価値が高く評価され、日本本土とは異なる歴史から成り立つ沖縄の象徴として親しまれてきた。2000年には首里城跡を含む「琉球王国のグスクおよび関連遺産群」が世界遺産に登録された▲炎は正殿付近からあっという間に燃え広がり、建物をのみ込んだという。その様子を見詰める人々の悲痛な表情に、県民の心のよりどころといわれる首里城の存在の大きさを思う。早期の再建を願わずにおれない▲きょうから文化財保護強調週間である。このタイミングには皮肉も感じるが、文化資産を守る意識を高める契機としたい。防火対策を徹底的に点検し、これ以上貴重な財産が失われることがないようにしなければならない。(久)

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