ホリエモン、DaiGoらがベタ褒め 青汁王子や清原和博氏を取り込むN国党の一番の問題点|畠山理仁

画像は『NHKから国民を守る党』の公式サイトより

「N国、ヤバい!」

今年7月の参院選で1議席を獲得して以来、「NHKから国民を守る党(N国)」の動向に注目が集まっている。そんな中、世間でよく聞かれるようになったのが冒頭の一言だ。

「ヤバい」に込められた意味は2つある。一つはホリエモンこと堀江貴文氏のように、N国の選挙戦略をプラスに評価する声。もう一つは、常識では予測不可能な言動に呆れ果て、強いマイナス感情を抱く人たちの声だ。

2013年の結党以来、N国が取ってきた選挙戦略は「悪名は無名に勝る」だ。従来の常識や道徳、倫理観を飛び越え、党勢拡大のためには火中の栗も拾う(例:丸山穂高衆院議員の入党)。炎上してでも党の名前を売り、存在を知ってもらうことがN国の生存戦略だ(例:マツコ・デラックス氏に対する抗議)。

N国が狙うのは、世の中に一定数存在する「反NHK票」の掘り起こしだ。党として掲げる政策は「NHKのスクランブル放送化」だけで、それ以外は一切自由。所属議員や支持者の言動を縛らない。内輪もめが起きても放置する。スクランブル放送に賛成ならば、左派でも右派でも取り込む。結果的にこの拡大戦略が奏功し、党には立候補希望者が殺到した。そうした人材を次から次へと選挙に挑戦させ、地方議員は31人にまで拡大した。もはやN国が簡単に政界から消えることはないだろう。

一般に「N国は選挙に強い」と思われているが、実は負けも多い。とにかく各地の選挙に出て党の知名度を上げることが最優先だから、勝ち目のない選挙にも挑戦する。当選者が多いのは、挑戦する選挙の数が多いからだ。

実際、N国は首長選挙や定数1の小選挙区では勝ったことがない。N国が勝てるのは、一つの選挙区につき複数名を選出する大選挙区での地方議会議員選挙や、国政選挙での比例代表に限られている。こうした選挙では、有効投票数の約2.5%が当選ラインだからだ。

そんなN国の次の一手は、「選挙と政治の分離」だという。「選挙区での当選は無理」と明言しながらも、知名度の高い候補を立てることで党の得票の底上げをし、比例での議席獲得を狙っている。それと同時に、国政選挙と地方選挙を連動させて候補者を選定する。つまり、国政選挙は地方選挙のための売名だ。

たとえ300万円の供託金を払っても、最高のロケ地(敵の本丸・NHK)でプロモーションビデオ(政見放送)を撮れる。しかも、一定の得票があれば供託金が戻る可能性がある。だから「選挙で売名するほうが圧倒的に安い」とN国の立花孝志党首は胸を張る。

今、N国は次期総選挙に向けて、ホリエモン、元青汁王子の三崎優太氏、元プロ野球選手の清原和博氏などに出馬の打診をしているという。常識では交渉中に相手の名前を出さないが、N国はあえて出す。交渉が決裂しても、名前を挙げるだけで宣伝になるからだ。

ここで有権者が知っておくべきなのは、次に挙げる立花氏の主張だろう。

「選挙の得意な人は選挙だけでいい。当選したら辞めていい。政策は別の人がすればいい」

つまり、いくら有権者が「ホリエモンを政治家に」と望んで投票しても、堀江氏が政治家として活動しない可能性がある。まるで替え玉選挙だが、立花氏は平然と言う。「それも説明して選挙をする。嘘は言いません」。有権者がN国を毛嫌いして黙殺していると、大事な話を聞き逃す可能性があるから要注意だ。

日頃から「嘘は言わない」と豪語する立花氏に、「スクランブル放送化の実現にはどれくらいの時間がかかるのか」と質問すると、立花氏は正直にこう答えた。

「5年から10年はかかるのかな」

有権者はそこまで待てるだろうか。(文◎畠山理仁)

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