県内に安堵と戸惑い 英語民間試験見送り

郵送予定だった英語民間検定試験の「共通ID」発行申込書。県立高の教頭は突然の延期発表に憤りをあらわにした=1日午前(画像の一部を加工しています)

 「延期になって安心した」「決断するのが遅い」。大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入が見送られた1日、県内の高校生や保護者、教諭らの間には安堵(あんど)感が広がる一方、国の対応に怒りや戸惑いの声が聞かれた。
 民間試験の活用は、現在の高校2年生が最初の対象予定だった。高千穂町・高千穂高の杉田渓翔(けいしょう)さん(17)は「受験地や費用など詳細が分からず不安だった。延期になってほっとした」。一方、国に振り回されたと考える高校生も。「忙しい合間を縫って試験対策をしてきたのに」と話すのは串間市・福島高の女子生徒(17)。「仕組みを変えるならきちんと詳細を決めてからにしてほしかった」と嘆いた。
 民間試験に疑念を持っていた保護者も。県央部の高校に通う2年男子の母親(49)は「やっぱり」と受け止めた。国が新たな制度導入のめどを2024年度としたことに触れ、「それだけ準備に時間がかかることをしようとしていたのか」とあきれる。
 教育関係者からは怒りや困惑の声が上がった。県立高の男性教頭は「なぜこのタイミングなのか」と憤る。民間試験の成績を管理する「共通ID」の発行申込書は生徒からの回収を終え、郵送するだけだった。「生徒のことを思えば良かったと思う部分もあるが、もっと早く決断できたのではないか」
 別の県立高で英語を教える女性教諭は「正式な通知は学校になく、今日の会見だけでは生徒や保護者に十分な説明はできない」と困惑。宮崎市の学習塾「栄進進学教室」で高校部を担当する、桑俣美樹講師は「不公平にならないか、誰のために実施するのか、高校や大学側の意見も聞きながら根本から議論してほしい」と求める。
 県は教職員の不安を払拭(ふっしょく)しようと、これまで文部科学省や大学入試センターの担当者を招いた説明会を開くなどしてきた。導入延期について、県教委高校教育課の山下亮介指導主事は「受験生のことを考えれば、やむを得ない判断ではないか」と理解を示した上で、「新しい制度では地方に配慮した対応をお願いしたい」と話した。

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