アダム&ジ・アンツは時代の徒花だったのか? 稀代の貴公子に再評価を! 1981年 11月2日 アダム&ジ・アンツのサードアルバム「プリンス・チャーミング」がUKでリリースされた日

熱しやすく冷めやすい。10代の女子はそんなもの。「こんなに素敵な人がこの世にいるなんて!」ってくらい夢中だったのに、あっという間に熱が冷める。私にも、そんなミュージシャンが数多くいる。なかでも、急速に熱くなって、急速に冷めたのがアダム&ジ・アンツだ。

ジャングルビートというのだろうか。ドンドコドコお腹に響く、強烈なパーカッション。合間に入るラップや掛け声。アフリカのような、日本の祭のような音が新鮮だった。展開が予想できない、なんて変わった曲ばかりなんだろ。

さらに、私の心をとらえたのが、ボーカルのアダム・アントのあだっぽさ。戦いに挑む部族のようなメイクに、海賊ファッション。なんだかよくわからないけどカッコいい!もちろん、1981年秋の初来日公演には、鼻の上に白いラインを入れるメイクで、いそいそと会場に向かった。ミュージシャンのメイクを真似したのは、後にも先にもあのときだけだ。

マルコム・マクラーレンに裏切られた、あのビジュアルは本人が考えたのではなくマルコムやヴィヴィアン・ウエストウッドが仕掛けた… など、さまざまな逸話が聞こえてきたが、そんなことはどうでもよかった。アダムのカッコよさがすべてだった。パイレーツのあとは、プリンスにイメージチェンジ。サードアルバム『プリンス・チャーミング』をリリースし、アダムはまさに稀代の貴公子となった。

だが、まもなくバンドは解散。アダムはソロになり、ジ・アンツ時代とはまったく違う、ポップでキャッチーな「グッディ・トゥー・シューズ」をリリース。ヒットはしたが、ユーモラスになって、危険な魅力はすっかり鳴りを潜めた。なんだ、顔の大きいおもろいオッサンじゃないか、と私の熱は急速に冷めた。

アダムって結局、時代の徒花だったよね。なんて思っていたのだが、30数年ぶりにセカンドアルバム『アダムの王国(Kings of The Wild Frontier)』を聴いてみると、意外とカッコいい。当時の私が夢中だったのも、わからないことはない。80'sブームの中、そろそろアダム&ジ・アンツ再評価、あってもいいんじゃないでしょうか。

※2016年11月8日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 平マリアンヌ

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