社説(11/2):英国のEU離脱/迷走に早く終止符を打とう

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 英国の欧州連合(EU)離脱が暗礁に乗り上げ、いつまでも決まらない状態となっている。

 離脱の意思を表した国民投票から3年半。離脱後の国家運営などを巡って政権と議会が対立し、首相の途中交代という政変を経ても好転していない。

 政権の提案を受け、12月に総選挙を行い、民意を問うと決めたものの、道筋をつけられるかは予断を許さない。

 長引く迷走によって欧州の物品流通、世界経済に影響が出始めている。英国は一日も早く国内をまとめ、混乱収拾に最善を尽くすべきだ。

 EUは先月、英国の要請を受けて離脱の期限を10月31日から最長で来年1月末まで3カ月延期することを決めた。延期を認めるのは3回目となる。

 当初の期限を守れなかったのは、ジョンソン首相とEUとの間で合意した協定案を英議会が問題視し、採決を先送りしたことによる。

 新協定案の最大のみそは、北アイルランドの国境問題だった。地続きのアイルランドと英領北アイルランドとの間で、通関手続きが必要になる問題を棚上げし、物理的な税関を置かない一方で、EUルールを英領に特別適用することにした。

 ジョンソン氏は譲歩し過ぎだとして、最大野党の労働党党首は「これまでの離脱案よりひどい」と反対するなど、10月末の離脱は遠のいた。

 与党・保守党は、下院で過半数を割る少数政権となっている。ジョンソン氏は捨て身の戦術を取り、12月12日の総選挙実施を提案した。

 選挙で勝った方が責任を持って難題に当たるべきだと主張したところ、議会で承認され、年内総選挙へと進んでいる。

 「離脱か残留か」と各党は打開策を訴えて賛否を問うとみられる。しかし、与党、野党ともに党内は一枚岩でなく、複雑な要因を引きずる構図はしばらく続くだろう。市民や経済界の懸念する「合意なき離脱」を回避できるか、真価が問われる。

 英国に進出している日本企業などは、流動する展開に戸惑いを隠せない。

 欧州向け自動車を生産する日本のメーカーは、工場の操業を一時休止して様子を見るなどの対応を取っている。ホンダは2月、競争激化による販売不振を理由に主力工場の閉鎖を発表した。

 国連貿易開発会議によると、「合意なき離脱」となった場合、英国からEUへの輸出は年間160億ドル(約1兆7000億円)減るとの試算もある。

 米中貿易摩擦、自国第一主義の広がりが暗い影を落とす中、世界の市場取引を不安定にする事態は避けたい。

 英国に与えられた猶予期間は数カ月しかない。早期に着地点を見いだせるかにかかっている。