「応援でNPBは"メジャーリーグ"」侍2試合でカナダを1人応援した話題の男性の正体は…

「加國狂楓會」(かこくきょうふうかい)のテッド・スミスさん【写真:編集部】

赤いハッピ姿で1人で応援、左手でドラムを叩き、右手でラッパを吹く妙技を披露

 11月2日(日本時間3日)開幕の「第2回 WBSC プレミア12」(テレビ朝日系列で放送)に出場する野球日本代表「侍ジャパン」は10月31日と11月1日の2日間、沖縄セルラースタジアム那覇で「ENEOS 侍ジャパンシリーズ」カナダ戦に臨み、1勝1敗で終えた。そのスタンドでひときわ目立つ存在だったのが、SNSを中心に話題となっているカナダ応援団「加國狂楓會」(かこくきょうふうかい)のテッド・スミスさんだ。

 左翼スタンドに現れたスミスさんは、赤いハッピ姿で1人で応援を開始。左手でドラムを叩き、右手でラッパを吹くという妙技を披露していた。なぜ彼はたった1人で日本式の応援をしていたのだろうか?

 実はこのスミスさん、レギュラーシーズンでは西武の応援団として活躍している。「好きな選手は栗山巧選手」と京セラドーム大阪を中心に年間70試合ほどスタンドで活躍しているが、応援団を始めたのは日本が初めてではないという。

 カナダ・アルバータ州出身のスミスさんは、元々野球にあまり関心がなかったという。しかし応援には昔から興味があったようで「大学では欧米式の応援団であるマーチングバンドを結成していた」と話す。そして、東京に留学中の2006年、テレビで流れる野球中継で映ったスタンドの光景に興味を惹かれ、東京ドームで行われた巨人対阪神を観戦。応援団の熱のこもった声援に、「一瞬でハマった」。日本式応援団との運命の出会いだった。

韓国で“プロ応援団”を経験、西武応援団にスカウトされて日本へ移住

 その後、韓国野球リーグKBOのキウム・ヒーローズで応援団に所属したスミスさん。「韓国野球は球団から応援団に給料が支払われる。それとモデルの仕事もしていた」と、芸能と“プロ応援団”の二足の草鞋を履いた。

 そして2015年、再び運命の出会いが訪れる。西武戦の観戦に訪れたスミスさんは、なんとスタンドで応援団に“スカウト”されたのだ。「日本は給料が出ないですが、応援団の世界ではNPBは“メジャーリーグ”のような場所。やってみたいと思った」と応援団をきっかけに日本に移住。現在は西宮市に住み、コンサルティング業と応援団を“兼業”している。

 カナダの応援団を始めたのも、2015年の「第27回 WBSC U-18 ワールドカップ」から。「自分はカナダ人ですから、母国をこうやって応援したいと思った」といい、1人で設立。応援団の規制が緩い韓国や台湾では助っ人を頼むこともあるというが、現在は主に1人で活動している。「ドラムとラッパを1人でやるのはとても大変」と苦労も多いようだが、「今回はコンサルの仕事が忙しくて全曲覚えられなかった。韓国(オープニングラウンド)、東京(スーパーラウンド)も応援に行くので、東京までには全曲覚える」と意欲をみなぎらせている。

 今回のカナダ代表では巨人でも活躍したスコット・マシソン投手と第1戦で登板したスコット・リッチモンド投手がイチ押しだという。「プレミア12」では侍ジャパンだけでなく、グループCで戦うカナダ代表とそのスタンドにも注目だ。(臼井杏奈 / Anna Usui)

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