原爆テーマの布絵本を寄贈 追悼祈念館へ北部ゆりの会 「触りながら考えて」

布でできた絵本を紹介する坂井さん(左)ら=長崎市、国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館

 布の絵本を手作りしている長崎市の女性グループ「北部ゆりの会」が10月31日、同市平野町の国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館に長崎原爆をテーマにした絵本「あの夏の日を忘れない 長崎の原爆」を寄贈した。絵本は祈念館の交流ラウンジで公開し、誰でも自由に読むことができる。
 絵本は縦30センチ、横40センチで全28ページ。厚手の木綿の生地に糸や布を縫い付けたり、写真をプリントしたりしてきのこ雲や救護列車、平和祈念像などを表現。文章はすべて英訳を添えた。被爆者の故松添博さんが制作した絵本「ふりそでの少女」からも本人の許可を得て引用しており、振り袖姿の二人の少女が荼毘(だび)に付される絵などを描いた。
 同会の前代表、坂井淑子さん(81)によると、2011年の東京電力福島第1原発の事故をきっかけに、「原爆も原発も放射線に対する恐ろしさは同じ」と感じたことが原爆をテーマにしたきっかけ。11人の会員で手分けし、増ページを重ねながら15年に完成。平和関連のイベントで展示するなどして活用してきた。
 同日は会のメンバーが祈念館を訪ね、黒川智夫館長に絵本を贈呈。黒川館長は「子どもや海外からの来館者にも被爆の実相を伝えることができる絵本で、寄贈はありがたい」と謝辞を述べた。
 坂井さんは「多くの人に見てもらえる場所に置きたいと思っていたので、やっと本が『生きる場所』が見つかってうれしい。触ってもらいながら原爆について考えてほしい」と話している。

© 株式会社長崎新聞社