ラグビーW杯~南アフリカ出身選手が日本代表で戦う理由

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【ラグビーW杯2019日本大会】練習に臨む、リーチ・マイケル、田中史朗ら=2019年9月18日 秩父宮ラグビー場 写真提供:産経新聞社

日本代表の快進撃で、日本中が沸き上がったラグビーワールドカップも、いよいよ大詰め。11月2日には、決勝戦「イングランド 対 南アフリカ」が行われます。初のベスト8入りを果たした日本代表は、準々決勝で南アフリカに敗れましたが、今回の日本代表のなかには南アフリカ出身の選手がいました。

4年前(2015年)、このコーナーで最初に取り上げた松島幸太朗選手もその1人ですが、彼らはなぜ南アフリカ代表ではなく日本代表の道を選び、どんな思いで母国と戦ったのでしょうか?

キャプテンのリーチ マイケル選手をはじめ、外国出身の選手が多数、名を連ねたラグビー日本代表。サッカーの場合、日本代表になるには日本国籍が必要ですが、ラグビーは日本に一定期間継続して住み、母国の代表として試合に出たことがなければ、生まれた国や国籍を問わず日本代表になれるのです。

ラグビーワールドカップ 2019(2019年9月20日撮影)(松島幸太朗(ラグビー選手)-Wikipediaより)

今回のワールドカップでも、南アフリカ生まれの選手が日本代表として出場しました。1人は、自慢の俊足でトライを重ね「フェラーリ」と呼ばれた、松島幸太朗選手です。

父親がジンバブエ人で、母親が日本人の松島選手は、6歳のとき南アフリカから日本に移住。神奈川の桐蔭学園を全国高校ラグビー優勝に導き、名門大学から勧誘が殺到しましたが、松島選手は「海外で通用する選手になりたい」と誘いを蹴り、海外行きを決断。行き先は母国・南アフリカでした。

「日本人が多いニュージーランドより、ほとんどいない南アフリカで苦労した方が、将来、絶対お前のためになる」。高校の恩師・藤原監督の助言に従い、1人で生まれ故郷に帰った松島選手。その選択は正しく、厳しい環境でたくましく成長し、20歳以下の南アフリカ代表候補に選ばれましたが、「やっぱり自分は、桜のジャージを着てワールドカップに出たい!」と、代表入りを辞退。

【ラグビーW杯2019日本大会 日本代表対アイルランド代表】後半 試合に勝利し、歓喜する日本代表フィフティーン=2019年9月28日、静岡スタジアム  写真提供:産経新聞社

2013年、松島選手は日本代表に選ばれ、前回のワールドカップでは母国・南アフリカを破る歴史的勝利に貢献しました。松島選手が試合前に「優勝候補だからといってビビることはないよ。オレと一緒にやってた連中だぜ!」とチームメイトたちにハッパをかけ、相手選手の細かい情報を伝えたことも勝因になりました。

今大会、1次リーグ大会トップタイとなる5つのトライを決め、南アフリカ戦でも攻撃・守備の両面で存在感を示した松島選手。その活躍ぶりは、母国・南アフリカでも絶賛されました。

「今回の戦いは財産であり、誇りでもある。この壁を突破するための自信を付けたい」

母国との激闘で、また1つ階段を上った松島選手は今後、ヨーロッパ挑戦を視野に入れています。

ラグビーワールドカップ2019(2019年9月20日撮影)(ピーター・ラピース・ラブスカフニ-Wikipediaより)

もう1人、「ラピース」の愛称で知られるピーター・ラブスカフニ選手も、南アフリカ出身です。前回のワールドカップで南アフリカを破った日本代表を観て、その勇敢な戦いぶりに感動し、2016年に来日。クボタに入団します。

南アフリカでは代表に呼ばれながら、試合出場の機会が巡って来なかったラピース選手でしたが、ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチは、つねにチームプレーに徹するラピース選手を見て「ワールドカップの秘密兵器になれる!」と、日本代表に招集。

ジョセフ・ヘッドコーチがもう1つ注目したのは、ラピース選手の統率力です。大分での代表合宿中、日本代表は自衛隊の駐屯地を訪れ、過酷なトレーニングを行いました。すべての選手に重さ20キロの装備をかついで、16キロの歩行訓練を命じたジョセフ・ヘッドコーチ。

【ラグビーW杯2019日本大会 日本代表 総括会見】会見に臨むジェイミー・ジョセフHC(手前左)、リーチ・マイケル(手前右)ら日本フィフティーン=2019年10月21日 明治記念館 写真提供:産経新聞社

このとき、音を上げかけた選手に「まず、あそこの信号まで頑張ってみよう!」と声を掛けたり、小柄な選手の荷物を外国人選手が一部持ってあげるよう提案したのは、ラピース選手でした。おかげで全員が完走。代表キャプテンのリーチ選手と両輪となって、チームを引っ張ったラピース選手の存在は、「ONE TEAM」を掲げる日本代表にとって大きな力となりました。

日本代表として戦うにあたり、他の外国出身選手たちと「君が代」の内容について学んだラピース選手。歌詞の「さざれ石の 巖(いわお)となりて」を例に挙げて、チームメイトにこんなゲキを飛ばしました。

「小さな石が集まれば、いつか大きな岩になる。他のチームに比べれば小さな我々も、1つになって、いつか巖(いわお)になろう」

どの国で生まれようと、国籍がどこだろうと、「和」の心を持って団結すれば大きな力を生み出せる……ラグビー日本代表は、あらためてそのことを私たちに教えてくれました。

ラグビーワールドカップ2019(2019年9月20日撮影)(ヴィンピー・ファンデルヴァルト-Wikipediaより)

もう1人の南アフリカ出身選手は、ヴィンピー・ファンデルヴァルト選手です。2013年、NTTドコモ・レッドハリケーンズに入団。日本の文化に感銘を受け、「長く住んで日本代表を目指そう」と決意。夢が叶って、2017年に日本代表入り。今回、ワールドカップで母国と戦うことができました。

南アフリカ戦では高校の先輩でもあり、現在、日本のクボタに所属する世界的プレーヤーのドウェイン・フェルミューレン選手と対戦。フェルミューレン選手は試合後、ヴィンピー選手と肩を組んで記念撮影し、ツイッターに投稿。「彼のことを誇りに思う」と後輩を讃えました。ヴィンピー選手も「準決勝、頑張ってください」と返信。

同じ国に生まれた選手が、違う国の代表としてワールドカップで戦えるラグビー。国籍を超えたところが、この競技の魅力でもあるのです。

八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送 土曜 8:00-10:50

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