アラフィフ妻が夫に先立たれ「ボツイチ」になったら、老後の生活は大丈夫?

老後2,000万円問題が取り上げられ、老後の生活に不安を抱いたアラフィフ世代も多かったことと思います。老後の生活設計をイメージするにあたって、夫婦のどちらかが亡くなった時のことを考えたことはありますか?


10人に1人は65歳で夫と死別する可能性がある

離婚した人の総称「バツイチ」と呼ぶことがあるのはご存じかと思います。これになぞらえたのかはわかりませんが、「ボツイチ」とは配偶者と死別した人のことを指します。国立社会保障・人口問題研究所の統計によると、妻が65歳の時に夫と死別する割合は2015年では約10% です。

寿命が伸び続ける中、ひと昔前より死別割合は低くなっています。というものの人生100年と考えた時に、妻の10人に1人は65歳以降を1人で暮らしていくことになるのです。仮に90歳までとすると25年間です。1人で暮らしていく精神的な不安はもちろんのことですが、家計についても想定しておく必要があるのではないでしょうか。

ボツイチで受け取る年金はどう変わる?

厚生労働省の「国民生活基礎調査の概況」(2018年)によると、65歳以上の1世帯当たりの所得に公的年金・恩給が占める割合は61.1%です 。つまり、多くの世帯では公的年金が収入の柱となっていることがわかります。

なお、2019年度の平均水準としている夫婦2人の年金受給額は月額22万1,504円 になります。 この受給額は夫が平均的収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)42.8万円)で40年間就業し、妻がその期間すべて専業主婦であった世帯が年金を受け取り始める場合の給付水準です。内訳は以下の通りです。

夫婦の年金受給額 月額22万1,504円の内訳

夫:老齢基礎年金 6万5,008円 + 老齢厚生年金9万1,488円
妻:老齢基礎年金 6万5,008円

万が一、夫に先立たれた場合に妻が受け取る年金受給額はどうなるのでしょうか?妻は自分自身の老齢基礎年金と遺族厚生年金を受け取ることになります。遺族厚生年金の額は夫の老齢厚生年金の75%ですから合計で13万3,624円です。

また、40歳以上65歳未満で子どもがいないなどの支払要件に該当する妻は、40~65歳になるまで、遺族厚生年金に年間58万5100円が加算される「中高齢寡婦加算」もあることを付け加えておきます。

妻の年金受給額 月額13万3,624円の内訳

老齢基礎年金 6万5,008円 + 遺族厚生年金 6万8,616円

では、月額13万3,624円で妻ひとりが暮らしていけるのでしょうか?総務省・家計調査年報(家計収支編)2018年によると、60歳以上の単身無職世帯の平均支出は14万9,603円 でした。ひと月当たりの不足額は1万5,979円、65歳から90歳までの不足額合計は479万3,700円になります。

公的年金だけで生活していくことは厳しいものの、夫が会社員であれば退職金があるでしょう。在職中にもしもの時には会社の規定により死亡退職金や弔慰金、企業年金の死亡一時金などの支給があることもあります。これらについてはいちど調べておくとよいでしょう。

年金受給額を増やすにはパートで社会保険加入を

アラフィフ世代の場合、会社員夫とパート妻という夫婦も多いかと思います。特に50代になった妻の場合、今さら扶養を外れて働くつもりはないかもしれません。しかし、前述のケースを見てもボツイチの年金受給額では少し心許ないと感じられる人もいるのではないでしょうか?その際、年金受給額を増やす方法は2つあります。

①扶養を外れて社会保険に加入、老齢厚生年金を増やす

一つ目は扶養を外れて社会保険に加入、老齢厚生年金の受給額を増やすことです。たとえば50歳から60歳までの10年間、パートの年収150万円で働いた場合を見てみましょう。

50歳から60歳まで納める厚生年金保険料:1万1,529円×12ヶ月×10年=138万3,480円
65歳から受給する老齢厚生年金:150万円×0.55%×10年=8万2,500円(月額6,875円)

社会保険に加入しなかった場合と比べて毎月の不足額は1万5,979円から9,104円へと改善します。不足自体に変わりはないものの、働く年数を増やして、年収も上がればその分、老齢厚生年金保険料も増額します。以下の公式を参考に、自分の場合をシミュレーションしてみましょう。

老齢厚生年金の受給見込額 = 年収 × 0.55% × 勤務年数

扶養を外れて社会保険料を納めることに抵抗のある人も多いかと思います。家計全体からみて、手取り収入が目減りすることになってしまうため、どうしても損をする気持ちになるかもしれません。長い目で考えて自分にとってのメリットを考えてみてはいかがでしょうか。

②老齢基礎年金を繰り下げ受給する

老齢基礎年金は65歳から受給できますが、支給の繰下げを申し出ると最長70歳まで月単位で年金額の増額が行われることになります。ひと月ごとに0.7%の増額で、その増額率は一生変わりません。

たとえば70歳から受給すると42%増額となるので110万7,742円になります。もしも65歳から70歳まで5年分の老齢基礎年金受給額390万500円を貯蓄で賄うことができれば毎月の不足は繰り下げ受給することで改善します(2019年の老齢基礎年金を元に計算)。その場合、老齢基礎年金は月額9万2,311円に増額し、元来の6万5,008円から2万7,303円増えるので赤字は無くなります。

ただし、寿命によっては老齢基礎年金の受給総額が少なくなる可能性もあります。老齢基礎年金はそもそも長生きリスクをカバーする公的年金と考えることができれば選択の一つとして考えてもよいのではないでしょうか?

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