だんだん本性が現れて…別れ際に請求書、本当にいる“セコい男”

恋は合意で始まるものの、最後は一方がダメだと思ったらもう終わりなのです。別れに合意は必要ありません。ただ、一方的に言われたほうはそれでは納得できないのでしょう。だから納得できる形をほしがります。とはいえ、別れ際に請求書を突きつけてくる男って、人としてどうなのでしょう。


愛されていると思っていた

ミナミさん(32歳)は、28歳から2年間、3歳年上の男性とつきあっていました。

「彼とはスポーツクラブで知り合ったんです。筋トレをしているうちに顔見知りになって。彼に誘われて、もともと興味があったスカッシュなども始めました。それから食事に行ったり飲みに行ったりと関係が始まりました」

彼は誰もが知っている有名企業に勤めていたそうです。実家が不動産関係の会社を経営しているため、彼自身もすでに自分のマンションを所有していました。

デートのお金は彼が多めに

「彼はけっこうお金に余裕があるように見えました。私も仕事をしているので食事代は割り勘にしたいと言ったのですが、彼はいつも『いいよ。僕が金欠のときはお願い』と払ってくれていた。それでも一緒に映画を観るときなどは、私がチケットを買うようにしたりしていましたが、彼のほうが負担が大きかったと思います」

気にはなっていたものの、「男だから払うということではないんだ。僕はきみが大好きだから払いたいだけ」と言ってくれる彼の言葉に甘えていたそうです。

つきあって1年たったときには、彼女がほしがっていたブランドバッグもプレゼントされました。

「そのときプロポーズもされました。もちろん、イエスと即答。それからは婚約者になったんですが、そのころから微妙に彼の態度が変わっていったんですよね」

外でのデートが減り、彼のマンションで会うことが多くなりました。最初は「きみの手料理が食べたい」と言っていた彼ですが、実際作ると控えめながら味に文句を言うようになります。それでも結婚するのだから、彼の好きな味を覚えなければと彼女はがんばっていました。

だんだん彼の本性が顕れて

時間がたつにつれ、彼のちょっとした言葉がミナミさんの心をざわざわさせるようになっていきました。

「彼の家で洗濯をしたとき、私の干し方が悪くてお気に入りのTシャツの型が崩れたんです。謝っているのに、『女のくせにこんなこともできないの?』とイヤミを言われて。それ以降、彼の文句にはよく、『女のくせに』『女なんだから』という言葉が出てくるようになりました。最初は気にしないようにしていたんですが、やはり気になるんですよね」

しばらくして、彼の実家に挨拶に行くことになったとき、彼から服装やヘアメイクの指定が入りました。

「清楚なワンピースで、髪は軽くカールして。ヒールは5センチくらい。ストッキングの色はナチュラルでって。細かい指定でしたね。まあ、でも親に会うならしかたがないかな、と」

ふだんはカジュアルな服装が多かったミナミさん、清楚なワンピースというのはどういうものかと彼に尋ねました。すると彼が後日、送ってきてくれたのです。

「小花柄のワンピースでした。かわいいというかダサイ(笑)。でも我慢して着ていきましたよ。彼のご両親はにこにこして迎えてくれましたが、いきなり『おとうさまのご職業は?』と聞かれたことにびっくり。うちの父は工場で働く職人です。父は仕事に誇りをもっている。そういうふうに答えたら、ご両親は沈黙。あとから彼は、『気にしないでいいよ。親と結婚するわけじゃないんだから』と言ってくれたけど、やはりひっかかりましたね」

自分だけでなく、親まで値踏みされるのは不快なものです。それでも彼女は彼のことが好きだったから、結婚さえすればあとはうまくいくと思い込んでいました。

「でも式場を決めようと話しているとき、彼が『式の費用はうちが6,ミナミの家が4という割合でいいよね』って。家と家の結婚だと思っているのか、と疑問がわきました。それに彼が考えているような大々的な式を挙げるつもりも私にはなかった。実家にも経済的な余裕はありませんし。すると彼は、『うちの実家から、ミナミの親御さんにお金を貸してもいいけど』とこともなげに言うんです。彼の家、不動産関係もやっているけど貸金業もしているらしいと初めて知りました。だけど結婚相手の親にお金を貸してもいいけどという表現はどうなんだろう。彼への不信感が決定的なものになりましたね」

別れた挙げ句に…

見ないふりをしてきた彼への不信感が明るみに出た瞬間でした。彼女は悩んだあげく、結婚はしないと決めました。彼にそう告げると、意外にも彼は「そうなんだ、わかった」とすぐに了承したのです。

「その1ヶ月後でした。過去2年間の請求書が来たのは。私に奢った飲食代、プレゼント代、あげくドライブに行ったときのガソリン代まで。総額200万円くらいになっていました」

驚くと同時に情けなくなったと彼女は言います。そんな男を選んでしまった自分に対して。

「結局、知り合いの弁護士に相談、弁護士から手紙を送ってもらいました。頭に来るし悲しいしで、裁判も辞さないと思っていたけど、最終的には30万円を私が支払うことに。婚約不履行ということですね。手元にプレゼントされたバッグや指輪は残りましたが、使う気にはなれません」

彼との間には楽しい思い出もありました。彼の言葉をすんなり受け止められれば、結婚して今ごろは専業主婦になっていたかもしれません。それはそれなりに幸せだったかもしれない。ミナミさんはそう思うこともあるそうです。

「ただ、結婚後も女のくせにって言われたら、やはりカチンときますよね。長い年月を彼とともに歩むのは無理だったんだ。そう思うしかないんです」

客観的には彼女の行動は正解だったように思われますが、彼女の口調はどこか未練と後悔に満ちていました。

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