佐世保高専 経営者を准教授に 国の制度活用 国立高専初

「学生が本来持っている『やる気スイッチ』を押し続けたい」と語る入江さん=佐世保市、佐世保高専

 佐世保市沖新町の佐世保工業高等専門学校(佐世保高専、東田賢二校長)は、国の「クロスアポイントメント制度」を活用し、システム開発会社を経営する入江英也さん(46)を、本年度から教員として採用した。国立高等専門学校機構によると、全国51校の国立高専では初めて。経営者目線での指導を取り入れ、学生の視野を広げる狙いがある。

 入江さんは電子制御工学科の准教授として勤務。講義を受け持つほか、卒業論文の指導も務める。経営するユウシステム(福岡市)は、海外でネットワーク構築のサービスを手掛け、中国やタイ、フィリピンにも拠点を持つ。
 10月、学生の起業家精神や課題解決能力を引き出すための「EDGEキャリアセンター」の設立に携わった。副センター長として活動の中核を担う。地元企業と連携し地域の課題に向き合いつつ、海外留学などを通し国際社会で活躍できる人材育成を目指している。
 このほか、国内外での自身の経験も学生に伝える。9月には中国への海外研修に学生4人を引率。ビジネスプランコンテストなどへの参加も支援する。
 クロスアポイントメントは、大学や公的研究機関、企業など二つ以上に雇用され、研究・開発、教育に従事することを可能にする制度。熊本電波高専(現熊本高専)出身の入江さんに佐世保高専が採用を働き掛けて実現した。
 採用には、東田校長の強い思いがあった。
 「佐世保高専から、もっと社長を輩出しませんか」。2年前、東田校長はある地元経営者から、こう言われた。学生には自ら考えて行動に移せる力を身に付けてほしいと感じていた。ただ、当時はまだその手だてがなかった。昨年、入江さんに出会い、その方向性を「実行に移せる人材」と直感した。
 就任して半年でセンターを立ち上げ、経営者のスピード感覚は学校にも刺激を与えた。東田校長は「皆が起業家を目指さなくてもいいが、自立して物事を考え、実行する力はどの分野でも必要。実践的な教育を進める高専の強みをさらに伸ばしてもらいたい」と期待を寄せる。
 入江さんは「勉強だけでは社会との関わりが少なくなりがち。学生たちが本来持っている『やる気スイッチ』を押し続けてあげるのが私の役割」と語った。

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