2019年を象徴するトップグループの“強さ”が際だった最終戦もてぎ《GT300決勝あと読み》

 終わってみれば、“本命”がしっかりと4位でフィニッシュ。ARTA NSX GT3がしっかりと8ポイントを加算し、高木真一/福住仁嶺組がチャンピオンを獲得。2019年のGT300クラスは幕を閉じることになった。

 フィニッシュ直前には、昨年に続きタイヤ無交換作戦を成功させたLEON PYRAMID AMGがまさかのガス欠によるスローダウンとなってしまったが、チャンピオン獲得に向けて圧倒的なペースで予選の遅れを取り戻してきたK-tunes RC F GT3の速さと言い、ブリヂストン装着車、そして優勝を飾ったGAINER TANAX GT-Rのダンロップの強さ、そしてARTA NSX GT3の苦境でも着実に結果を残す強さが目立つレースとなった。

 もともとこのコースは、ブリヂストンが強い特性がある。変則的な2レース開催となった2016年の第3戦をのぞき、このもてぎでは毎年のようにブリヂストン装着車が表彰台を得ている。またダンロップも同様で、GAINERは上位争いの常連と言えた。

 今季のチャンピオン争いは、最終戦前には4台に可能性があったものの、予選の時点でグッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也)、リアライズ 日産自動車大学校 GT-R(平峰一貴/サッシャ・フェネストラズ)のタイトルの可能性が消滅。ARTA NSX GT3とK-tunes RC F GT3のバトルになっていた。しかも、K-tunes RC F GT3は予選Q1で新田守男がまさかのスピン。限りなくタイトルが遠ざかるなかで、印象的な追い上げをみせてくれた。

「テストのときからクルマの調子はよかったけれど、うちのクルマはもともと、今年リヤグリップが薄い傾向があって、ピークグリップを過ぎるとリヤのパフォーマンスが突然落ちる。その症状が今回のもてぎに来てから顕著になっていた」と新田はスピンの原因を語った。

 ウォームアップでもその症状は出たが、急遽セットを変更。これがブリヂストンのパフォーマンスを引き出し、追い上げにつながった。レース後半では、長年ライバルでもあった福住仁嶺のARTA NSX GT3を追う阪口晴南の走りが印象に残った。

「彼とシリーズ争いをしたことは大きなモチベーションでしたし、楽しかった。またチャンピオンを競いたいですね」と阪口は好ライバルの存在がレースへの意欲につながったと語る。

■1年間ポイントを獲り続ける難しさ

 そして優勝を飾ったGAINER TANAX GT-Rは、この優勝でランキング3位に浮上してシーズンを終えることになった。もともともてぎはメルセデスを使用していた頃から強く、その印象が蘇る。ただ、今季第2戦富士での優勝、そしてこのもてぎでの勝利と2勝を挙げたものの、シーズン中盤戦の得点の低さ、そして第6戦・第7戦での無得点が響いてしまった。

「シーズンを振り返ると、前半戦では早い段階で優勝できたので、今年こそは……という流れでした。ここ数年、GAINERで戦ってきたなかでシーズン中盤がウイークポイントなので、そこをなんとかしのぐことができれば、チャンピオン争いを優位に繰り広げられたと思うんですが」と平中克幸も振り返っている。

 彼らの戦い、そしてブリヂストン勢の強さを考えると、今後もシーズン最終戦の舞台がツインリンクもてぎである限り、ヨコハマ勢(ダンロップも同様だが)はなんとしてもシーズン最終戦の前までに、充分なマージンを築かなければならないことになる。

 今季シーズン序盤でのBS、DL勢の強さを考えると、今の特性のまま進むことになった場合、さらに苦境に立たされてしまう可能性もある。やはり課題は、気温が低い時季のポテンシャルアップだろう。

 今季はGT300でもタイヤウォーズ、さらにその“差”が際立つシーズンとなったが、シーズンの戦い方すらも考えさせられる最終戦となったことは非常に印象深いものだった。

 そして、これらの戦いを制し、自身3回目となるチャンピオンを獲得した高木、そしてGT300初参戦ながらきっちりと自らの仕事をこなしてきた福住仁嶺のふたりは、まさにチャンピオンに値する一年となっただろう。今季の取りこぼしはなんとゼロ。実は第7戦SUGOの際に高木に取材をした際に、「今年もダメだったらどうしよう」という趣旨のセリフを聞いていたが、それほど今年に賭ける思いは強かったに違いない。

 昨年はARTA BMW M6 GT3で優位に立ちながらも、まさかの展開で取りこぼしたタイトル。ARTAの戦い方は、まさに“手堅く”といったレースで、K-tunes RC F GT3の四輪交換を見て、左側二輪交換の作戦を変更。しっかりと走りきることを重視。終盤、ピックアップにも悩まされたが、それでもK-tunes RC F GT3とのバトルでは無理をせず、4位につなげた。

「1戦も落とさずに、ポイントを少しずつ確実に獲れたことがよかった」と高木はレース後、涙をみせた。

 GT300は、異なるクルマとタイヤ、そしてチームというすべての機能が1年間うまく動いてこそチャンピオンが獲れるレース。今年はそれを改めて示した最終戦となった。

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