米アカデミー賞にノミネートされた『エル ELLE』も怖かったが、ゴダールやシャブロル作品で名を成したフランスの名女優イザベル・ユペールが、近年ますます“怪優”化しているように思える。タイトルロールを演じる本作でも、クロエ・グレース・モレッツ扮するいたいけなヒロインばかりか、我々観客をも恐怖の底へと突き落とす!
拾った鞄を届けたことで、都会で孤独に暮らす未亡人・グレタと親しくなったフランシス。だが、グレタの異常さに気づいた彼女が避けるようになると、ストーカー化したグレタが暴走を始める…。
監督は、『クライング・ゲーム』やバンパイア映画の佳作『ビザンチウム』のニール・ジョーダン。今回も得意とする予測不能の展開と容赦ないエグさは健在で、彼は『クライング~』で脚本オスカーを得ているせいか「ストーリーテラー」という評価をされがちだが、例えば小道具のメトロノームやショパンの曲の使い方など細部の演出もうまい。それがユペールの怪演と相まって、我々の背筋を凍り付かせるのだ。
だから、本作は古典的な佇まいを持つ一級のスリラーだが、クロエとユペールの関係はまるで、ホラークイーンとホラーアイコンのよう。否、ユペール様の前では、ジェイソンもフレディもレザーフェイスだって縮み上がるに違いない! ★★★★★(外山真也)
監督:ニール・ジョーダン
出演:イザベル・ユペール、クロエ・グレース・モレッツ、マイカ・モンロー
11月8日(金)から全国公開