『残された者-北の極地-』 ミケルセンのファン以外にもお勧め

(C) 2018 Arctic The Movie, LLC.

 死と隣り合わせの孤独なサバイバルを描いた映画といえば、トム・ハンクス主演の『キャスト・アウェイ』からロバート・レッドフォードの海洋漂流もの『オール・イズ・ロスト 最後の手紙』、マット・デイモンが火星に取り残されるSF『オデッセイ』まで、秀作は枚挙にいとまがない。本作と同じ極寒系にもリーアム・ニーソン主演の『THE GREY 凍える太陽』がある。そして今回そんな目に遭うのは、“北欧の至宝”マッツ・ミケルセンだ。

 演じるのは、乗っていた小型機が北極に墜落して遭難した男。バックボーンなどの説明が一切ないから、観客は破損した機体や彼の行動など画面から推察するしかない。まさにシンプル・イズ・ベストで、それが我々を彼と同じ過酷な状況下に追い込む。つまり本作は、主人公が感じる恐怖や不安をリアルに共有する体感型の映画なのだ。

 ミケルセンは現在、究極の現実逃避男を演じた14年前の出演作『アダムズ・アップル』が日本公開中で、さらには本作と同じ公開日の『永遠の門 ゴッホの見た未来』にも出演している。奇しくもどちらも聖職者の役なのだが、本作で演じるのも自分一人が生き延びるのも困難な中で重傷を負って動けない女性を最後まで見捨てない、俗とは無縁の人物である。この主人公=ミケルセンの品行方正さが効果的で、我々は、サバイバル能力にも長けた彼に自らを重ねてヒーロー気分まで味わえるのだ。ミケルセンのファン以外にもお勧めしたい。★★★★☆(外山真也)

監督:ジョー・ペナ

出演:マッツ・ミケルセン

11月8日(金)から全国公開

© 一般社団法人共同通信社