川崎の台風被害額300億円 市推計、最多は地下水没の市民ミュージアム

水没した市民ミュージアムの地下部分。右にあるのが、搬入口のシャッター

 川崎市は5日、台風15号と19号による市内の被害額が約300億円に上ると発表した。市全体の被害額を公表するのは初めて。大半が台風19号による被害で、詳細な被害状況が依然として不明なケースもあり、被害額は今後さらに膨らむ可能性がある。

 市が1日現在で把握している被害状況を取りまとめた。被害の内訳は、市市民ミュージアム(中原区)が最も多く、少なくとも72億円に上る。同ミュージアムは台風19号の影響で地下収蔵庫が浸水し、多数の収蔵品が水没。約26万点が保管されていたが、いまだ被害の全容はつかめていない。

 同ミュージアムの被害額72億円のうち、電気・空調設備など施設の設備面の被害が30億円、収蔵品は42億円と試算した。市財政局によると、今回公表した収蔵品の被害額は、動産保険をかけていた約9万点のみを対象に取得時の金額から算出しており、実際の被害額は未知数という。

 次いで住宅が71億円に上った。全て台風19号の被害で、全壊20棟、半壊または一部損壊が1300棟に及んだ。製造業や商店など市内の中小企業の被害額が約58億円(計307件)に上った。土木関係では、多摩川緑地のごみ処理など河川が約46億円、道路が約11億円の被害があり、浸水被害を受けた市とどろきアリーナなど公共施設は少なくとも6億円とした。

 市は、被災者への災害見舞金の支給や道路・水路の補修、災害ごみの撤去など、緊急性の高い対策については予算の流用や、5億円の予備費を使用する財政措置を講じていくという。

 また、6日には福田紀彦市長が首相官邸で菅義偉官房長官と面会し、激甚災害指定に伴う必要予算の確保や、被災者の生活再建の支援などを求めて国に緊急要望書を提出する方針。

© 株式会社神奈川新聞社