中国人はイヌ派?ネコ派?年率2割成長の「ペット市場」で有望な投資先

世界的にペット関連市場が拡大する中、中国でも都市部を中心にペットを飼う世帯が増加しています。昔の中国でペットを飼うのは子供が巣立った年輩世代が多かったですが、最近では1980~1990年代以降に生まれた若い世代が中国のペットブームを支えています。

その背景には、生活水準が向上する一方で生活や仕事のストレスが大きくペットが癒しや喜びを与えてくれる存在になっていることに加えて、一人っ子政策や核家族化などに伴い“家族の一員”としてペットを迎え入れる傾向が強まったことなどが挙げられます。

こうした流れを受け、中国のペットブームはさまざまな分野で新たなビジネスチャンスを生み出しています。そうなると気になるのが、有望な投資先です。いったいどんな関連銘柄が存在しているのでしょうか。


市場規模は3兆円を突破

ペットブームを背景に、最近中国のペット関連市場は急成長を遂げています。

中国都市部のペット関連の市場規模(2019年)は前年比18.5%増の2,024億元(約3.1兆円)に拡大する見込み。うち、イヌ関連の市場規模は同17.8%増の1,244億元、ネコ関連が同19.6%増の780億元と、どちらも2ケタ増ですが、最近は「ネコ派」の伸びが大きい状況です。

こうした高成長により、中国のペット関連の市場規模は日本を抜き、米国に次いで世界2位になりました。ただ、中国のペット飼育世帯の割合は2割未満で、米国の約7割、日本の3割以上と比べてもまだ低いことから、中国のペット関連市場の発展余地はまだ大きいといえます。

中国の調査会社によると、ペット関連消費の中で最も支出に占める割合が高いのは、約6割を占める「食品」。次に多いのは「健康・医療分野」になるといいます。

“家族化”で中国企業が合従連衡

ペットの“家族化”を背景に、1匹・頭に費やす平均支出額も2019年は前年比10.9%増の5,561元(約8.5万円)に増加。そのうち、イヌ関連が同9.0%増の6,082元、ネコ関連が同10.3%増の4,755元に拡大する見込みです。

また、ペット関連商品はこれまで店舗販売の割合が高かったのですが、最近ではネット通販の比率が向上。実際、中国のネット通販各社のサイトを見ても、ペット関連製品の品ぞろえは充実しています。

こうした中で、深圳市場に上場しているペット食品メーカー大手「チャイナ・ペットフーズ」(証券番号:002891)は、米国上場の中国ネット通販大手のJDドットコム(ティッカー:JD)と2019年4月に戦略的提携に合意したことを明らかにしています。

加えて、ペット世話代行サービスを手掛ける中国の新興企業「愛沃派(iwalkpet)」は今後、これまで蓄積したユーザーの利用データなどを基に、動物病院との提携、ワクチン接種や寄生虫駆除などの訪問医療サービス分野にも事業拡大を計画しています。

中国市場に外資企業も虎視眈々

中国ではペット市場が急拡大し、高級ドックフードや動物用医薬品などのニーズが高まっていることから、欧米や日本の関連企業の中国進出はこれからますます加速するとみています。

日本企業でペットフードや関連商品を手掛ける「ドギーマンハヤシ」は、中国の上海市や山東省・青島市などに拠点を置き、すでに製品を販売。また大日本住友製薬も、動物用医薬品を手掛ける子会社を通じて、将来的には中国で動物用医薬品を売り出す計画を明らかにしています。

さらに、世界最大の動物用医薬品メーカーのゾエティス(ZTS)などの米国企業も、発展余地の大きい中国ペット関連市場への進出を強化するとみています。

<文:市場情報部 佐藤一樹>

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