『かいじゅうたちのいるところ』センダックの代表作を新訳で刊行! 80年代の絵本が、現代人に問いかける「新しすぎる」メッセージ。

20世紀を代表する絵本作家モーリス・センダックによる本書(原題 "Outside Over There")は、 1983年に福音館書店から『まどのそとのそのまたむこう』(わきあきこ 訳)として刊行されていた。 その後、 長く品切重版未定(2002年に限定復刊され、 再び品切れ)となっていたが、 このたび、 詩人・翻訳家のアーサー・ビナードの新訳で、 『父さんがかえる日まで』として偕成社から刊行することになった。

本書は、 『かいじゅうたちのいるところ』(コルデコット賞受賞/1975年 冨山房刊)『まよなかのだいどころ』(1982年 冨山房刊)とともに、 作者自身が自らの3部作とよび、 全米図書賞を受賞したモーリス・センダックの代表作の1つだ。

Outside Over Thereの原書が刊行されたのは、 ビナード氏が中学生の頃。 センダック好きだったため、 繰り返し読みながらも、 本にこめられた意味については当時あまり意識していなかった。 しかし、 今回数年にわたり翻訳に取り組むなかで、 この絵本にこめられた、 当時では「新しすぎる」メッセージに気づいたそうだ・

「現代人のぼくらは、 一見つながっているように見えて、 実は向き合っていないという問題。 夫婦でも親子でも、 形の上では関係が成立しているが、 本気で相手を思って心を込めて見つめ合うということを今、 ぼくらはしていないのではないか––––物語を通してセンダックが問いかけてくるのだ。 」(2019年10月「月刊 絵手紙」より)

「赤ん坊の妹の面倒をみなければならない」主人公のアイダが、 怪物のゴブリンたちに妹をさらわれたことにより、 はじまる冒険。 この冒険をとおしてアイダが見つけたものはなんだったのだろうか。センダックからのメッセージをより味わえるビナード氏ならではの訳で、 新しくなった"Outside Over There"『父さんがかえる日まで』を楽しもう。

船乗りの父さんが航海に出たあと、 母さんはその帰りを待ちわびるだけで、 どこかうわのそらです。 かわりに、 姉さんのアイダが、 ちいさな妹の子守りをしなければなりません。 ところが、 よそ見をしていたすきに、 妹がゴブリンにさらわれてしまいました! あとにのこされていたのは、 氷でできた、 そっくりさんです。

妹がとりかえられたことに気づき、 怒ったアイダ。 母さんのレインコートをきて、 ホルンをポケットに入れ、 妹の救出に向かいます。 ところが、 窓を出るとき、 うっかり後ろ向きに出たために、 “ふわふわふわのうわのそら”をさまようことになってしまったのです。

はたしてアイダは妹を、 ゴブリンから取り返せるのでしょうか?

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