社説[五輪マラソン札幌へ]真夏の開催見直す時だ

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 2020年の東京五輪のマラソンと競歩のコースを札幌市に変更することが決まった。予想される猛暑を避けるためで、選手の健康や安全を考えればやむを得ない。

 東京都、国際オリンピック委員会(IOC)、東京五輪・パラリンピック組織委員会、政府の4者協議で決着した。東京都の小池百合子知事は「同意できないが、IOCの決定を妨げることはしない。合意なき決定だ」と強く反発している。

 日本陸上競技連盟の麻場一徳強化委員長は5日の会見で、「あってはならない決定。この時期に覆ることは極めて遺憾。IOCがいうアスリートファースト(選手第一)は本当のアスリートファーストではない」と強い不満を表明した。

 IOCの方針変更は、9月に中東ドーハで開かれた陸上の世界選手権が引き金になった。暑さ対策で異例の深夜に実施したにもかかわらず、30度を超える過酷な環境で男女のマラソンで棄権が相次いだ。競歩も多くの選手がゴールできなかった。同じ酷暑の時季に開催する東京五輪への不安が高まっていた。

 マラソンは「五輪の華」といわれる。東京都は現在進めている遮熱性舗装を含むマラソンコースの整備などで、既に約三百数十億円の税金を投入している。しかし、IOCは開催地の変更は発表直前まで、東京都には通知していなかった。強引かつ不誠実な対応だ。

 頭越しの決定で、蚊帳の外に置かれた東京都が憤るのは当然で、禍根を残した。IOCは反省し、信頼関係の修復に努めるべきだ。

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 IOCや組織委などの4者協議で、札幌開催で新たに生じる費用は、東京都に負担させないことになった。今後の調整にIOCのジョン・コーツ調整委員長は「どうなるか分からない」と態度を明確にしなかった。費用負担の在り方も今後の焦点になる。

 急転直下決まった札幌開催も課題が山積する。組織委は札幌市中心部の大通公園発着の北海道マラソンをベースに検討する。早急にコースやスタート時間を確定し、整備を含めた開催計画をまとめる必要がある。

 警備態勢の整備に加え、選手ら関係者の宿泊先の調整やボランティアの確保など運営面の準備も急がれる。

 組織委は全力を挙げて、札幌市を支えなければいけない。東京都の全面的に協力する姿勢を示してほしい。

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 小池氏は「7~8月の実施では北半球のどの都市も(暑さで)過酷な状況になる」と現在の五輪のあり方に疑問を投げ掛けた。

 夏季五輪を真夏に行う背景には巨額の放送権料を支払う米テレビ局の意向もある。この時季は五輪以外に世界的なスポーツイベントが少なく、欧米の人気スポーツと重なる秋のシーズンを避けるという事情がある。

 マラソンの札幌への変更は、真夏の夏季大会開催の限界をIOC自らが認めたようなものだ。「アスリートファースト」の原点で開催時期を見直すべきだ。