飲料メーカー「収益重視」明確化 新ブランド路線縮小で市場規模は横ばい

 飲料市場は既に飽和状態にある。少子高齢、人口減少という背景もあり2000年以降の年平均成長率は横ばい、僅かにマイナスだ。近年、国民の健康意識の向上などを背景に特定保健用食品(トクホ)飲料などが好調だったが、これもすでに成熟期に入っているようだ。

 こうした市場の先細りをにらんで大手メーカーは既に収益性重視の利益ある成長を目指すことを表明している。新規ブランドの開発を基軸にした量的拡大戦略は今後縮小すると見込まれている。

 矢野経済研究所が25日、2018年度の飲料市場に関する調査の結果と19年度の見込み、今後の動向に関してレポートを公表している。

 レポートによれば、2018年度の牛乳・乳飲料を含む飲料市場の規模は、メーカーの出荷金額ベースで5兆1800億円、前年度と比べ101.5%で4年連続のプラス成長となったと推計されている。飲料市場は天候の影響を受けやすい市場であるが、18年度は関東で梅雨明けが6月中と早かったこと、また7月には全国的に記録的な猛暑となり8月以降も高温が続いたことから需要が大きく押し上げられた。

 品目別に見ると熱中症対策との関連からか、炭酸飲料や日本茶、ミネラルウォーター、スポーツ・機能性飲料など止渇飲料が好調だったが、一方で果汁飲料、コーヒー、紅茶、乳系飲料などの嗜好飲料は苦戦した模様だ。

 長期推移を12年度から見ると成長率は98.1%から102.2%で横ばい状態の中で僅かにプラスを示している。

 19年度については、最盛期である7月が前年と一変して関東地方を中心に長梅雨や低温が続いたため低調に推移し、8月は猛暑となり盛り返しを見せたものの市場を押し上げるには至らなかったようだ。さらに10月には消費税率が10%へ引上げられ、飲料については軽減税率が適用されるものの一定程度の消費の冷え込みが予想される。こうした推移から、19年度の市場規模は5兆1250億円、前年度比98.9%に縮小するとレポートは見込んでいる。

 業界の動向については、大手メーカー各社が「収益重視」の方向性を明確に打ち出し基幹ブランドの強化に注力する方針を鮮明にしており、このため新ブランドは生まれにくく、新商品として既存基幹ブランドの派生商品が多くなっている。また、カテゴリーをまたいだ商品展開を行うことで基幹ブランドの多様性を広げていく動きも増えている模様だ。(編集担当:久保田雄城)

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