圧倒的な強さで弱みを見せなかったハミルトンが心中を吐露「調子が悪いときでも常に自分を励ましていた」

 今や6度もF1世界チャンピオンとなったドライバーには、不安など感じることはほとんどないと思うだろう。しかしルイス・ハミルトンは、私生活において、“内なる敵”と戦っているのだと明かした。

「毎年、目的地に到達するには違った感情のジェットコースターに乗ることになる」とハミルトンはアメリカGPで2位になり、6度目のF1世界タイトルを獲得した後に語った。「僕たちはひとりひとり、誰もが人生で何かと戦っているんだ。それが大きかろうが小さかろうがね」

「僕は外見からは常に立派に見えているかもしれないけれど、実はそうではないんだ。僕も多くのあらゆる物事や内なる敵と戦っている。そうして確実に人間として成長しようとしているんだ。昨日は僕にとって試練の日だったけど、今日は思うようなレースができたと思うよ。レースにとても満足している」

 ハミルトンの言う“昨日”とは土曜日の予選のことで、チームメイトのバルテリ・ボッタスがポールポジションを獲得したいっぽうで自身は5番グリッドになったことだ。しかし翌日のレースでは状況が好転した。

 今シーズンこれほどまでの成功を収めたハミルトンが、内なる敵と戦っているというのはおかしな話に聞こえる。彼はそのことについてどう説明するだろう?

「毎日鏡を見ると、調子の良い日でも悪い日でも、理由はどうであれ常に暗い側面が自分を引きずり降ろそうとしてくるんだ。だからいつも目を覚ましていなければならない」

「僕は鏡を見ると、自分の気持ちを上げるようにしている。『よし、僕ならできる。僕は素晴らしい。進んでいけばうまくいって自分はタイムを出せる。正しい手順を踏んで自分を信じ続ければ、このレースに勝てる。他の誰も自分のためにそうはしてくれないのだから』とね」

「だから、つまり常に自分を励ますんだ。今年ニキ(ラウダ)を失って、これほど衝撃を受けるとは思っても見なかった。本当に動揺したし、今日も彼のことを本当に懐かしく思っている。彼のことをどれだけ尊敬していたか気づいていなかったんだ。僕たちにとって厳しい出来事だったけど、最終的に重要な点となった」

「それに僕たちは若手をスパ・フランコルシャンで失った。(ベルギーGPの週末にFIA-F2の事故でアントワーヌ・ユベールが亡くなった)テレビで見たよ。事故の様子をね。あのようなことが起きると、心の中に多くの疑問が湧いてしまう。そしてそうした考えと戦うんだ。そしてオーケー、もうやめるべきだ、と考えるタイミングが来るかもしれない。もしくは前に進むべきだとね。この後にも人生には多くのものがあるのだから」

「今も自分の家族との時間を取りたいし、いつかは自分の家族を持ちたい。そうしてまったく違うこともやりたい。でも今の僕にはやるべきことがある。自分がやっていることを本当に愛しているし、そういう意味で僕を止められるものはそう多くないと思うよ」

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