長崎県課長「災害は追い風」 石木ダム反対派抗議、発言撤回

抗議文を読み上げる炭谷町議(中央)=県庁

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、県河川課の浦瀬俊郎課長は5日、先月下旬にあった推進派の会合で「去年、今年と大きな災害が起きている。追い風だと思っている」と発言したことを明らかにした上で、「不適切だった」として撤回した。
 県などによると10月30日、同町内で開かれた推進派議員らによる意見交換会で、治水の必要性について理解を深めるべきだという出席議員の意見に対し発言したという。会合は冒頭を除き非公開だった。
 「石木ダム建設に反対する川棚町民の会」(代表・炭谷猛同町議)など計6団体は5日午前、連名で中村法道知事宛ての抗議文を提出。「(発言は)災害を自らに有利な状況と捉え、全国の被災者を愚弄(ぐろう)する」と指摘し、謝罪会見を開きダム建設推進を前提とした姿勢を改めることを求めた。
 県庁で抗議した6団体の代表者や「石木ダム強制収用を許さない議員連盟」の所属議員ら計約40人からは「知事がこんな発言を許していれば命取りになる」「ダム建設ありきだからこんな発言が出た。河川行政のゆがみを正してほしい」などの意見が飛んだ。出張中の中村知事に代わり対応した県秘書課の伊達良弘課長は、知事に抗議内容をできるだけ早く報告すると応じた。
 抗議行動の後、同日午後に県庁で会見した浦瀬課長は、県内外で災害が発生し防災や治水に関心が寄せられていることから、より議論が深まって必要性も理解されるのではないかという趣旨だったと釈明。「災害が発生してよかったとは思っていない。被災者には申し訳ない」と述べた。

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