世銀、SDGs達成を促進する国別ESGデータプラットフォームを公開

世界銀行は29日、SDGsに沿ったESG(環境・社会・ガバナンス)投資を支援するため、国別のESGデータを掲載した無料オンラインプラットフォーム「ソブリンESGデータポータル」を開設した。データを分析する指標にはSDGsの17目標がすべて含まれており、各国の民間企業から新興国や途上国への投資を促進する狙い。ESG投資を拡大している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の水野弘道理事兼最高投資責任者(CIO)は「GPIFが運用を受託する金融機関の投資判断を高め、質の向上につながる」と話す。

ソブリンESGデータポータルには、世銀に加盟する189カ国のESGに関するデータが、17分類67指標に基づき掲載されている。例えば、環境の項目は「排出・汚染」「自然資本管理」「エネルギーの使用・安全保障」「環境(気候)危機・復元力」「食糧安全保障」の5つに分類され、合わせて27の指標がある。

データは、指標ごとの情報を折れ線グラフで示した「インタラクティブ・データ・エクスプローラー」やさまざまな種類のグラフを使いデータを可視化した「ダッシュボード」などがある。前者で、日本の「CO2排出量」の指標を選ぶと、日本のほかに世界平均、高所得国の平均、東アジア・太平洋地域の平均が折れ線グラフで表示され、比較できるようになっている。

世銀によると、ESG投資の基準の重要性について論じる報告書が増えており、投資家はESGのリスクと機会を評価・管理するために、より精度の高い情報を求めているという。世銀のハイシャン・フー開発データ・グループ長は「SDGsに沿った健全な投資判断を下すためには、質の高いデータが不可欠。質の高いデータは、投資の選択の幅を広め、持続可能な開発の成果を向上させることにつながる」と話す。

GPIFは2017年から、持続可能な投資を促進するために世銀と連携し、共同研究を進めてきた。水野CIOは、「投資家は以前から、ESG情報は投資と高い関連性があり、多くのケースでは不可欠と認識をしていた。特に途上国への投資の場合、この傾向が顕著だが、経験やデータが乏しいことから十分な情報に基づいた意思決定を行うことが難しかった。ESG データポータルは、入手可能なESGデータの質や範囲、透明性、適時性を高めるだけでなく、分析やフィールドワークの経験を投資家らが活用できる機会を提供するもの」と話す。

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