過酷な環境条件で争う新生電動SUV戦『エクストリームE』、“砂漠”ラウンドはサウジアラビアで

 ABBフォーミュラE選手権創設者でもあるアレハンドロ・アガグが2021年からの開催を目指す、電動オフロードマシンによるクロスカントリー競技『Extreme E(エクストリームE)』。その初年度シーズンの開催地となる3つ目の地域が発表され、地球上の過酷な自然環境のなかで“砂漠”を司るラウンドとしてサウジアラビアでの開催がアナウンスされた。

 北極圏や熱帯雨林を担当する地域として、すでにグリーンランドとブラジル・アマゾンでの開催が発表されているエクストリームEは、残るエリアとなる“砂漠”、“氷河”、“海洋”の全5戦のうち3番目となる、砂漠戦の開催地を中東エリアに定めた。

 すでに実際の使用ルート候補地の選定に入っているというが、EVモータースポーツの先駆者としてこのエクストリームEでもファウンダー兼CEOを務めるアガグは、サウジアラビア当局の重要人物ふたりとともに、この新生EVモータースポーツ開催の発表を執り行った。

 首都リヤドのラウンチでそのアガグとともに姿を見せたのは、サウジアラビア総合スポーツ局代表のアブドゥラジズ・ビン・トゥルキ・アル・サウード王子と、同自動車連盟代表のカレド・ビン・スルタン・ビン・アブドラ・アジズ・アル・ファイサル王子のふたり。ともにアスリートや実業家、レーシングドライバーの顔も持つ、サウジの要人である。

 将来的な革新技術を主な議題としたフォーラムの会場で挨拶したアガグ代表は「この革命的なチャンピオンシップの主要な基盤のひとつは、世界に存在する過酷な環境や気象条件でレースを行うことにより、トップドライバー、チーム、エンジニアに限界領域での勝負を促し、そのフィードバックにより技術開発のリミットを押し上げることだ」と、改めてシリーズの意図を説明する。

「EVマシンにとって、砂漠のロケーションは未知のテリトリーであり、飛躍的な進化を遂げる契機になるだろう。ゆえに、サウジアラビアでの開催は自然な成り行きでもあった」

「ここは世界最大級の砂漠地帯が広がるフロントラインであり、その広大さと過酷さ、地形は驚くほどだ。そうした容赦ない環境で技術を磨き、モビリティにとって厳しい路面状況、バッテリーやモーターにとって過酷な暑さと真剣勝負を繰り広げるにあたって、我々のマシンとドライバーは最適なコンビネーションとなるはずだ」

 すでに2020年ダカールラリー開催地にも決まっているサウジアラビアだが、このエクストリームEでどの地域を使用するかは今後数カ月の間に決定する見通し。そして、EVモータースポーツの先駆けとなったシングルシーター・シリーズ、ABBフォーミュラE選手権はこの11月にもディルイーヤで2度目のイベントを開催することになっている。

「エクストリームEをこの国で開催できるのは大変よろこばしく、歓迎の意を表したい。我々が掲げる『ビジョン2030』のコンセプトにも合致し、スポーツの柱として強化する絶好の機会になるはずだ。この広大な砂漠から、世界レベルの電動モータースポーツ・イベントをお届けしたい」と、アガグに続いて壇上に立ったアル・サウード王子。

「私自身もレーシングドライバーであり、このスポーツの成長に貢献し、持続可能な未来に向けた革新を手助けすることは大いなる誇りの源泉だ。それと同時に重要なことは、この電動モビリティシリーズの開催と、それに伴う自然環境保護啓蒙の活動により、この国のユニークな生態系保護の機運を高められることだ。それこそが、このパートナーシップから得られる最大の利益だと思っている」

 これで全5戦中3戦の開催地が発表されたエクストリームEシリーズ。2021年の初年度シーズン開催に向け、残る“海洋”と“氷河”の候補地も調査中で、シリーズ運営側は現在ヒマラヤ地域の調査を進めている。

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