日本中が知ったラグビーの面白さ W杯の熱次代につなぐ

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南アフリカーカナダ戦で試合後、観客席にお辞儀する両国選手=10月8日、ノエビアスタジアム神戸(撮影・大山伸一郎)

 あれだけ蒸し暑かった神戸のスタジアムがうそのようだ。ラグビー・ワールドカップ(W杯)が南アフリカの優勝で幕を閉じた2日、横浜の夜はジャケットを着込んでも肌寒かった。44日間にわたる長い戦いを終えると、季節は変わっていた。

 たくさんの場面が心に残る。国歌やアンセム(曲)を歌いながら涙する選手たち。たとえ大差をつけられても、一つのトライを目指して体をぶつけ続ける姿。「何をゴールに決めて 何を犠牲にしたの」-。松任谷由実さんが名曲「ノーサイド」で歌ったラガーマンたちがそこにいた。日本が歴史的な決勝トーナメント進出を決めた夜、第1回大会主将の林敏之さんを現地で取材した。その両隣の席で松任谷由実、正隆夫妻が歓喜に沸いていたのは忘れられない。

 大会の盛り上がりには、スタジアム内外で海外から訪れた人々も欠かせなかった。カナダの選手たちが台風19号の被災地でボランティアに従事して感動を呼んだのはハイライトだろう。そのカナダと神戸で対戦した南アの選手が、ボールキッズに笑顔でおじぎした映像も会員制交流サイト(SNS)を通じて世界中に広まった。アイルランドの選手が兵庫県三木市で伝統産業の刃物作りを体験したのは、知られざる文化交流かもしれない。

 そしてファンの熱さだ。特にアイルランドやイングランドのファンは試合前から熱狂的だった。その手に握られた缶ビールは(どうせ1本で済まないからなのか)ロング缶がほとんど。兵庫県ラグビー協会の松原鉄司理事長が「W杯の楽しみ方を外国人から教わったのでは」と話していたが、会場周辺の日本人のはじけ方も日を追うごとに増した気がする。

 大会終盤、神戸市内の公園で楕円(だえん)球と戯れる子どもたちを見かけた。県内のラグビースクールへの体験希望も目に見えて増えているという。

 W杯の熱をどう次代につなげるか。ある元日本代表選手は言っていた。「4年前のように蒸発してなくならないようにしないと」。神戸製鋼には世界的スターのダン・カーターがいる。ニュージーランド代表のブロディ・レタリックも来る。日本中が知ったラグビーの面白さを、次はトップリーグで伝えたい。(山本哲志)