ボルボ V40 クロスカントリー試乗│今のボルボを牽引してきた人気モデル、その完熟度やいかに!?

ボルボ V40 Cross Country

今のボルボを牽引してきたV40が遂に生産終了!

ボルボ V40 Cross Country

華々しく登場したニューモデルも時が経つとその役目は終わる。しかし、その終わりをメーカー自らアナウンスするモデルは数少ない。それもスポーツカーやメーカーを象徴するモデルならともかく、普通のモデルであれば尚更だろう。

ここ数年、日本で最も勢いのある輸入車ブランドと言えば「ボルボ」だろう。2016年のXC90を皮切りに新世代モデルを矢継ぎ早に導入。その評価は高く、中でもコンパクトクロスオーバーのXC40やステーションワゴンのV60は、現在も数多くのバックオーダーを抱えている状態だそうだ。全体の販売台数も右肩上がりで、2019年の販売台数もすでに前年比越えは確実と言われているそうだ。

そんな中、2013年の登場以来、日本のボルボの知名度を上げると共に販売台数をけん引してきたコンパクトハッチバック「V40」が2019年で生産終了と発表された。残念な事に現時点で後継モデルは存在しないそうだ。そんな事もあり、インポーターのボルボ・カー・ジャパンは多めの台数を確保していると言う。

そこで今回、完熟のファイナルモデルで宇都宮~東京までのショートトリップを行なった。今回のモデルはV40をベースにクロスオーバー化したV40クロスカントリー(以下V40CC)のガソリンモデルの最上級グレード「T5 AWD サマム」だ。

フロントマスクは新世代モデル共通ながら、内装は流石に古さを感じる

ボルボ V40 Cross Country

エクステリアはスポーティで引き締まったデザインに加え、2016年のマイナーチェンジにより、フロントマスクを新世代モデルと共通イメージに刷新されているので、今見てもあまり古さを感じさせない。

しかし、インテリアは今では懐かしいフローティングセンタースタックに配置された操作系や7インチのディスプレイなど古さを感じるのも事実。ちなみにこの操作系は事前学習なしで使おうとすると難儀だが、実は慣れると意外と使いやすい事はあまり知られていない……。

ドッシリとした安心感を持つハンドリングは「小さなGT」

ボルボ V40 Cross Country

宇都宮から東京までは約150km、そのまま走るとすぐ着いてしまうので、寄り道をしながら……。まずは鉄道好きのKカメラマンの提案でわたらせ渓谷鐡道わたらせ渓谷線「神戸(ごうど)駅」を目指す。

宇都宮市街を抜け、日光宇都宮道路を通り国道122号線を走る。

ワインディングではライバルのようにグイグイ曲がる性格ではないものの、コンパクトなボディと素直で軽快なハンドリングと、そしてCセグメントであることを忘れるドッシリとした安心感を持つハンドリングは、クロスオーバーながらも「小さなGT」と呼ぶにふさわしい乗り味だ。

ボルボ V40 Cross Country/足尾銅山

当時は“過剰設計”と言われていたが、時代が追いついた

プラットフォームは世代的には古いが、適材適所に高張力鋼/超高張力鋼/極超高張力鋼/ウルトラ高張力鋼やアルミ、プラスチックの使用はもちろん、レーザー溶接や構造用接着剤の採用など、今では当たり前の材料や工法を早いタイミングで採用。車両重量は若干重めだが、それを差し引いても安全性能はもちろん、走る/曲がる/止まると言った基本性能の部分は今でも通用する。当時は“過剰設計”と言われていたが、時代が追いついたのだ。

とは言え、大きめのギャップを超える時などの衝撃のいなし方や操舵時の前後バランスなど時代を感じる部分もあるのも事実だが、その傾向はV40よりもV40CCのほうが少な目。恐らく、ストロークが増したサスペンションとハイトのあるタイヤがカバーしていると思う。ただ、最初回転半径は意外と大きく、小回りが効かないのは少々気になる所……。

途中、ルート沿いにある足尾銅山跡で撮影を行なう。かつては日本の近代化を支えた場所だが、長年に渡る鉱毒事件の影響や産出量の減少で閉山してから40年以上経った。現在も暗い影を少し残した雰囲気でヒッソリしている。ただ、山間に突然現れる巨大な廃墟は儚さと共に、何とも言えない美しさを感じたのも事実である。

ディーゼルを選ぶとAWDの選択ができないのが悩ましいところ

ボルボ V40 Cross Country/草木ダム

パワートレインはデビュー当初とは異なり、ボルボの新世代パワートレイン「Drive-E」へと移行済み。今回のモデルは245ps/350Nmを発揮するガソリン2Lターボと8速ATの組み合わせ。1580kgと意外と重量級だが、大人3人と撮影用機材を載せても、動力性能に不満はない。

ただ、ATの制御は良く言えばスムーズで穏やか、悪く言うとメリハリがないが、これはポールスター・パフォーマンスソフトウェアをプラスすれば解消できるはず。

個人的には190ps/400Nmを発揮する2Lディーゼルターボをお勧めしたいが、ディーゼルを選ぶとAWDの選択ができない(触媒の関係でレイアウトが成り立たない)。この辺りは非常に悩ましい部分だ。

更に進むと利根川水系渡良瀬川の本川上流部に建設された「草木ダム」と「草木湖」が。せっかくなのでここでも撮影を行なった。

撮影日は青空で穏やかでダム下流にも行くことができたが、台風19号の接近の際はこの辺りも大変だったのだろう……とシミジミ。

安全性に関しても小さい、世代が古いと言う妥協は一切ない

ボルボ V40 Cross Country/わたらせ渓谷線 神戸(ごうど)駅

更に走ると神戸駅に到着。時が昭和から止まってしまったような「ザ・田舎の駅」と言ったレトロな駅舎やホームを見ると、ホッとしてしまうのはオジさんになってしまったからなのか!? 駅構内には元1720系デラックスロマンスカーを利用したレストランがあるが、せっかくなのでお昼はこちらで「舞茸ごがん定食」を、ごちそうさまでした。

ここからは東京に向けて走る。北関東自動車道~東北自動車道ではACC(全車速対応)を活用。ドライバーの意図を組んだ加減速を行なうACCに加えて、直進安定性の高さも相まって安心感と疲労の少なさはクラスレス。

ちなみに前後左右をカバーする11種類以上の最新の先進安全装備は全車標準装備。歩行者・サイクリスト検知機能付衝突回避・軽減フルオートブレーキシステムはもちろん、世界初採用された歩行者用エアバックは2016年にスバル インプレッサに先駆けて全車標準装備と、安全性に関しても小さい、世代が古い……と言う妥協は一切ない。

「V40を今選ぶ」と言うのはアリ

自動車研究家の山本シンヤ氏

居住空間は優先度が高いのはフロントだが、リアシートも必要十分なスペースはある。シートはスウェーデンの外科医がアドバイザーとして開発に関与、シートサイズの大きさはもちろん、長時間乗っても疲れにくいのは上級モデルと一切変わらない。正直150km程度の距離では物足りないくらい(笑)。

本当の実力は「デビューから時が経った時にどうなのか?」が重要だ。リアルワールドで実際に使われることで、商品の“本質”が評価されるクルマが生き残る。

そういう意味でも、「V40を今選ぶ」と言うのはアリだと思う。実は筆者は2016年式のV40を所有するが、今回の試乗後に「最終モデルに乗り替えようかな!?」と悩んだ(笑)。今なら新車5年保証(一般保証3年+長保証2年を無償提供)なので、国産車からの乗り換えのハードルも少ないと思う。

[筆者:山本 シンヤ/撮影:小林 岳夫]

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