『Re:minder(リマインダー)』- 80年代のカルチャーが集まる場所を作りたい!

『今、聴いている音楽』を大切にしていってほしい

Re:minderの立ち上げはいつごろから?

太田:スマホサイトなども立ち上げて今の様な形になったのは2017年からですね。

『80年代の音楽エンタメに特化』ということですが、今の時代にこういったメディアを作ろうと考えられた動機は?

太田:元々、スペースシャワーTVやMTVといった音楽専門チャンネルに勤務していて、20年以上メディア〜コンテンツ業界にいたんです。そこで新しい音楽…今のトレンドを常に発信し続ける一方で、80年代に10代を過ごした私は、その時代に自分が聴いてきた音楽の魅力を改めて今の世の中に紹介したいという気持ちがありました。勿論、最近の音楽にも素晴らしいものが沢山ありますが、正直なところ、2010年代の音楽を10代、20代の人達よりも強い気持ちで心から薦められているか?という疑問がありました。であれば、自分が心から人に紹介できるものは、自分が過去に聴いて感動した音楽や触れてきたカルチャーだと。

特定の時代の文化や世代に伝えようとするには、リアルタイムでその時代に一番影響を受けてきた人や、受け手と同世代の人間が語るほうが伝わりやすいですよね。

太田:ビジネス的な部分でも【昔は音楽を聴いていたけど仕事が忙しかったり子供ができたりしてしばらく音楽から遠ざかってしまっていた】という人達が沢山いるんです。そういった人達が50代ぐらいになってくると、だんだん仕事や子育ても落ち着いて改めて自分の次の人生を考え始める時期になってくるんですね。そういった人達が10代の頃の気持ちを思い起こして新しいことにチャレンジしたり、これからの生活を楽しく豊かにするためにRe:minderのようなメディアがあっても面白いんじゃないかと。実際にそういった世代のお客様に多く利用頂いています。

―主にどういった情報を中心に発信されているんですか?

太田:基本的には毎日ふたつのコラムをアップしています。音楽や文章の専門家も勿論いらっしゃるのですが、普通に会社勤めをしている方や主婦の方から、お医者さん、映像ディレクター、レコード会社のOBの方など、様々な音楽好きの人達が書いてくださっています。業界の経験談であったり、音楽を享受していたファンとしての目線であったり。色んな視点が混ざり合って80年代の音楽を語る場になっていて、手前味噌ですが非常に「ユニーク」なアーカイブになっています。通り一遍の音楽評論サイトではないし、今更そういったものを読んだところで面白くもないと思いますしね(笑)。最近は10代、20代で昔の歌謡曲が好きな人達が結構いて、そういう若い人達も記事を書いてくれるんですけど、我々とは違った視点や感性があって、こっちが「なるほど・・・!」と感じさせられるような新しい発見があって面白いですよ。

ここ何年かの間で若い世代を中心にシティーポップなど、昔の歌謡曲への再評価が進んでいますよね。

太田:「流行り」って時代をぐるぐると廻っていくものだと思うので、ちょうど今そういう時期なのかもしれないですね。ただ、当時の音楽というのは、アナログからデジタルへ切り替わっていく流れでスタジオの環境も変わり、シンセサイザーなどの機材も安価に手に入るようになった時代なんです。新しいものを使いたがるミュージシャンや音楽業界の人達が多かったので、アレンジがトゥーマッチになりがちで、色んなものを重ねていって取っ散らかっている印象がある一方、実はメロディーラインはとても普遍的なんです。ゲートリバーブが掛かりまくっているような当時のニューウェーブとかもアレンジメントを分解して聴いてみると物凄く良いメロディーが多いですよ。そういう部分も再評価に繋がっているんじゃないかと思いますね。

バブル当時は、音楽も大量消費の時代だというイメージがありますが、良いものはちゃんと残るんですね。

太田:粗悪なものもあるとは思うんですけど、その分、良いものも沢山作られたということでしょうね。実は当時、売上で言うと数千枚とかしか売れていない物も多いんです。それが今若い人たちや海外の方が評価してくれて盛り上がってますよね。Re:minderの利用者は40代、50代がメインですが、最近はそういった20代、30代の方も結構増えています。

そういう、ネットで昔の音楽に触れる層にも、Re:minderのようなメディアは需要がありそうですね。

太田:若い頃に聞いた音楽ってずっと心に残るし、年を取ってから音楽を聴かなくなっちゃうのは勿体ないと思うんですよ。なので今の若い人達も昔の音楽であっても『今、聴いている音楽』を大切にしていってほしいという思いもあります。

前に進むために過去を振り返る

音楽以外のカルチャーも取り扱うこともありますか? 80年代は音楽もテレビも今より盛り上がっていた時代なんじゃないかというイメージがあります。

太田:メインは80年代の音楽ですが、それに紐づいて当時のテレビドラマや映画も取り扱うこともあります。当時はテレビ、ラジオ、雑誌などは『みんなが共有するメディア』だったんです。毎日のようにテレビで音楽番組が流れていて、「ザ・ベストテン」「トップテン」「ヒットスタジオ」など。そういったものが音楽の中心的な媒体として機能していました。今はCDは売れているけど全然知らないという現象って当たり前だけど、当時のヒット曲はみんなが知ってるんですよね。

今は細分化しちゃってて国民的ヒットソングがないですよね。

太田:松田聖子さんの楽曲ってみんな聴いたことがあると思うんですけど、80年代って実はレコードが一番売れていない時代なんです。だけどみんな知っているし、それぐらい当時はメディアの影響力が強かった。

逆に最近の音楽は聴かれますか?

太田:もちろん聴いてますよ!今はサブスクリプションがあるからCDを買ったりまではしませんが。良い曲は沢山あると思いますが、パターン化していて同じような曲が多いなと感じることはあります。私が仕事柄、ヒット曲を中心に聴いている余計にそう思ってしまうだけなのかもしれませんが…。私の世代だと家にステレオセットがあって、レコードを買ってじっくりと聴きこむという行為が音楽との向き合い方でしたが、今はクラブやフェスなどでみんなで騒ぐという楽しみ方になっていて、音楽の作り方もそれに合わせて変わってきていると思います。勿論それが良いとか悪いとかではなく。

80年代のカルチャーが集まる場所を作りたい

今後、リマインダーで若い層に向けて発信していきたい事はありますか?

太田:あまり考えてないですね。若い世代を意識してやると違うものになっちゃいそうなので、今後も基本的には4、50代の層をメインに発信していって、それを若い人達が興味を持ってくれたら覗きに来てくれれば嬉しいな、ぐらいに考えています。…ただ、昔は良かったとか懐古主義に陥るのは嫌なんです。懐かしいという気持ちは良いと思うんですけど、過去ばかり見て生きていくんじゃなくて、Re:minderが新しく何かを始めるキッカケになればと思っているんです。あくまでも前に進むために過去を振り返るというのが大事ですよね。

Re:minderでは「80年代イントロ十番勝負」などのイベントも開催されていますよね。

太田:2018年の2月からイベントもやり始めまして、お陰様で好評で11月30日(土)にLOFT9 Shibuyaで行うイベントで5回目の開催になります。イベントに毎回出演していただいているスージー鈴木さんや、イントロマエストロの藤田太郎さんに出会えたというのが凄く大きいです。ネットだけだとなかなか実態が見えなかったりしますし、SNSなどで要望も多かったのでユーザー同士が繋がれるリアルな場を作りたかったということが動機になっています。

次で5回目の開催になるわけですが、若い参加者もいらっしゃって客層が幅広いですよね。イベントで世代間の交流が生まれていて面白いなと感じます。

太田:新しい参加者も徐々に増えてきているので嬉しいですね。イントロクイズといっても世の中には膨大な楽曲が存在しているわけで、80年代に限定しているというのも参加しやすい理由なんだと思います。気軽に参加できてワイワイガヤガヤ楽しめるイベントとしてやっていきたいですね。

11/30のイベントはテレビ東京ミュージックとの新プロジェクト「80sコネクション」という建て付けになっていますが、これはどういったプロジェクトになるんですか?

太田:テレビ東京は80年代にアイドルの番組を結構やられていたんですけど、今テレビのメイン視聴者層でもあるエルダー層(中高年層)に向けたアプローチとしても、改めてまた80年代のカルチャーを取り上げたいということでお話を頂き、一緒にプロジェクトを始めることになりまして。プロジェクト第1弾として、ホストのスージー鈴木さんが大ファンだという早見優さんをゲストにお招きしてイベントを開催することになりました。アイドル時代のお話は勿論ですが、音楽的な部分も紹介できればと思っています。シティーポップやロックテイストの楽曲があったりと、実はアルバムでは色んなアプローチで面白いことをやっているんですよね。制作陣も松本隆、筒美京平、三浦徳子、中原めいこ、Chageなどかなり豪華なんです。当時のアイドルソングって結構チャレンジングな楽曲が多いし、クオリティが高いんですよね。歌も披露していただくので楽しみにしてもらいたいですね。早見優さんのファンは勿論、80年代はどういう時代だったのかという新しい発見もあると思うので、若い人達にも来ていただきたいです。

今後、Re:minderとしてや、80sコネクションでやっていきたいことなど、展望はありますか?

太田:80年代に特化した音楽フェスをやりたいでね。80年代のアーティストって現在も活動を継続されている方が多いんです。そういったアーティストや80年代のカルチャーが集まる場所を作りたい。同窓会的な感じになるかもしれないけど、日本もそういう時期に来たと思うんです。松田聖子さんがヘッドライナーの80年代フェス、面白くないですか!? 体力的にも我々だけでは実現できないですが、皆さんの力を借りて近い将来に実現したいです。80sコネクションは今後もイベント以外も色々と展開していきたいと考えているので、楽しみにしていてください!

■ Re:minder(リマインダー)

80年代の音楽エンタメに特化したコミュニケーションメディア「リマインダー」。毎日休まず更新されるオリジナル記事には、新しい発見やユニークな視点が満載です。懐かしむより超えていけ!

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