東名あおり、危険運転不成立を主張 控訴審で弁護側

 大井町の東名高速道路で2017年6月、「あおり運転」を受けて停止させられた静岡市の一家4人が後続の大型トラックに追突されて死傷した事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪に問われた無職男(27)の控訴審初公判が6日、東京高裁(朝山芳史裁判長)であった。弁護側は、危険運転致死傷罪の成立を認めて懲役18年(求刑懲役23年)とした一審判決を批判し、一審と同様に同罪の成立を巡って争う姿勢を示した。公判は即日結審し、12月6日に判決が言い渡される。

 一家の直接の死傷原因がトラックの追突事故である中、被告の妨害運転が一家の死傷という結果をもたらしたと言えるのかどうかが控訴審の争点。

 18年12月の横浜地裁判決は、被告の妨害運転が危険運転に当たるとした上で、その後に一家の車を路上に停車させた行為や、停車後に父親に暴行を加えて一家を路上にとどまらせたこととも「密接に関連する」と指摘。危険運転に端を発する一連の行為によって追突事故を招いたとして、同罪の成立を認めた。

 これに対し弁護側は控訴審で、「一家は被告の車に衝突して亡くなったわけでも、ハンドル操作を誤って壁面や他の車両と衝突したわけでもない」と主張。被告の妨害運転の危険性は路上に停止した時点で途絶えているとし、「一家の死傷という結果を直接もたらしたのはトラックの追突事故」と強調した。

 検察側は「一家の車が停止せざるを得ない状況をつくり出し、追突事故を招いたのは被告の妨害運転そのものである」と反論。トラックの運転手の過失は軽微だとも述べ、控訴棄却を求めた。

 一審判決によると、被告は17年6月5日夜、現場から約1キロ手前の中井パーキングエリアで、車の止め方を注意されて憤慨。一家のワゴン車の進路をふさいで路上に停車させた上、被害者の男性=当時(45)=に暴行を加えるなどし、後続の大型トラックが突っ込む事故を引き起こした結果、男性と妻=当時(39)=を死亡させ、娘2人にも軽傷を負わせた。

© 株式会社神奈川新聞社