警察のミッションにユーチューバー挑む 異色コラボが話題

新潟県警とユーチューバーのコラボ動画。右が左京秀明さん、左は地元のゆるキャラ「バッカちゃん」

 「まさかのケーサツ登場」「展開が面白い」。新潟県警がユーチューバーと共同制作した動画が反響を呼んでいる。

 「特殊詐欺被害を防ぐため、県民の家に防犯機能付き電話を設置せよ」という県警のミッションに、ユーチューバーが挑む。若者に関心を持ってもらいたいと新潟県警が企画、ユニークなコラボ作品ができあがった。

 中心になったのは、県警安全安心推進室の左京秀明(さきょう・ひであき)室長(52)。特殊詐欺被害の防止のため、ターゲットになりやすい高齢者を対象に注意喚起してきたが「若者にもっと関心を持ってもらえれば、孫がおじいちゃん、おばあちゃんと特殊詐欺について会話するようになる。効果は大きいはず」と考え、その方法を探っていた。

  動画投稿サイト「ユーチューブ」が人気と知ったのは昨年5月。20代の息子との会話からだった。サイトを開くと確かに面白い。

  職場に行き、ほとんどユーチューブを開いたことがない県警幹部に、ユーチューバーの「ヒカキン」さんや「はじめしゃちょー」さんの動画を見せて回った。

 「面白いね」「何かやってみれば」と反応は良かった。

 新潟県を拠点とするユーチューバー、シバケンさんに制作を持ちかけ、今春、企画を提案した。しかし、会計課に「これまでやったことがなく、適用できる予算がない」と言われる。

 諦めずに説得した。動画は効果が検証しやすい点を特に強調。視聴回数や総再生時間が分かり、視聴者のコメントから反応も直接、把握できると説明した。

 2カ月半後、会計課から連絡が入る。「予算を確保しました」

 動画はシバケンさんが県警本部を恐る恐る訪れるところから始まる。待っていた左京室長が、特殊詐欺の被害が深刻であることを説明し、防犯電話を県民の家に設置してほしいと依頼する。防犯電話は、通話録音を相手に知らせるので予防効果が大きいからだ。

 「家に行って(設置して)もいいですか?」。シバケンさんは新潟市の中心部で若者らに声を掛けるが、何十人にも断られ続ける。ミッションはクリアできるのか?

ユーチューバーのシバケンさんが左京さんと女性警官に送り出される場面

 シバケンさんが左京室長の名前をネタに「右京さん(ドラマ「相棒」の主人公)ではないんですね」と突っ込みを入れたり、地元のゆるキャラが突然登場したり…。

 笑いも交え、テンポ良く進む。視聴者からは「見てて最高です」「これからの時代はこういうケーサツもいいんじゃない」とコメントが寄せられた。

 シバケンさんは当初、警察から依頼を受けて「テレビなど他のメディアもあるのにユーチューブを選ぶとは」と驚いた。かたい内容にしないよう心掛けたといい、配信後は「動画をきっかけに親族のために何か対策をと考えるようになったという反響もあります」と手応えを感じている。

 左京室長は「第2弾、3弾のコラボ動画を作りたい」と意気込む。さらに、若者に別のアプローチができないか“取材”しているそうで、筆者(30)にも「いい方法はありませんか」と逆質問してきた。特殊詐欺撲滅への思いは強い。

 動画はユーチューブの「にいがたTV」チャンネルで視聴可能だ。(共同通信=功刀弘己)

警察とのコラボ動画はこちら↓

https://www.youtube.com/watch?v=MtTSfexEroI

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