【プレミア12】連勝で突破決めた侍J、初スタメンの山田は無安打も「心配はいらない」ワケ

プエルトリコ戦に「1番・一塁」で先発した侍ジャパンのヤクルト・山田哲人【写真:Getty Images】

6回1安打零封の高橋は「肝が座っている投手」、3ランの主砲は「普段の鈴木誠也」

 野球日本代表「侍ジャパン」は6日、台湾・桃園市の桃園国際野球場で「第2回 WBSCプレミア12」(テレビ朝日系列で放送)のオープニングラウンド第2戦・プエルトリコ戦に臨み、4-0で完勝した。先発の高橋礼投手(ソフトバンク)が、5回までプエルトリコ打線をパーフェクトに封じるなど6回1安打無失点の快投。打線は3回に鈴木誠也外野手(広島)の3ランなどで4点で奪った。

 侍ジャパンは2連勝を飾り、日本で行われるスーパーラウンド進出が決定。不調だった坂本勇人内野手(巨人)が2安打を放つなど明るい材料もあった。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、昨季まで2年間はヤクルトでバッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は「今後に向けて楽しみな気持ちを持たせてくれる一戦になった」と指摘。このプエルトリコ戦が初スタメンとなった山田哲人内野手(ヤクルト)にヒットは出なかったが、「心配はいらない」と話した。

 まずは、サブマリン投法でプエルトリコ打線を手玉に取った高橋について、野口氏は「(相手は)初見では(打つのは)無理でしょうね」と指摘。投球自体も「見事だった」と振り返り、精神面の強さを評価した。

「プエルトリコ打線があの投げ方を嫌がっているのかな、という感じはありましたが、ボール自体もすごくいい。バッターの手元での力が非常にある。スピードガン表示よりも全然速い感じですね。高めの真っ直ぐも有効に使えていて、インコースにもしっかり飛び込めている。そういうところが素晴らしいですね。インコースの速い球に意識がいったなと思ったらシンカーなり、スライダーなりでうまいこと押したり引いたりができている。肝が据わっている投手に見えますね。相手は何回か対戦してようやく糸口を、というピッチャーだと思います。国際大会でも生きるピッチャーですね」

 今大会は先発での起用となっているが、国際大会では救援としての起用も面白いと指摘。「これから先、ジョーカー的に使いたいピッチャーですね。ピンチで中継ぎで出す、ということをしたいピッチャーではあるかなと」。金メダルを目指す来年の東京五輪に向けても、その価値を再確認できる投球となった。

1番で初スタメンの山田は無安打も「心配はいらない」

 また、4番としての役割を果たした鈴木については「らしい一本が出ましたね。ベネズエラ戦で見えた迷いみたいなものを感じませんでした。『バットが出てこない』という感じがなかったので、もう普段の鈴木誠也かなと思います」と称賛。ベネズエラ戦では、なかなか「バットが出てこない」鈴木に稲葉監督がエンドランのサインを出したことについて「強制的にバットを振らせるという意味では、ヒットエンドランは非常に有効な作戦。積極的に振る意識を無理矢理にでも呼び起こさせようとしたのではないか」と推測していた野口氏。それだけに「エンドランがいいきっかけになったのかもしれません。これだけのスーパースター揃いなので、本当にちょっとしたきっかけでガラっと変わるものです。『本当にそんなことで変わるの』ということがけっこうあるので。それがベネズエラ戦のエンドランだった可能性もありますよね。見事なホームランでした」と振り返った。

 さらに、不調に苦しんでいた坂本に2本のヒットが出たことについても「これでものすごく楽にはなっているはずです。身体もしんどいでしょうが……」と言う。ベネズエラ戦では、代打を出された坂本について「国際大会は復調を待っていたら終わってしまう」としつつ、「1球くらいヒットになっていれば、気持ちが楽になってきて、あれほどの実力者なので調子を取り戻していく可能性はあります」とも話していた野口氏。「1本出ていたらきっかけになるかもしれないと言いましたが、それがようやく出たわけですから。このチームにとって坂本の存在は大きい」と今後のさらなる活躍に期待した。

 一方、「1番・一塁」で初スタメンとなった山田は3打数無安打1四球とヒットが出なかったが、野口氏は「心配はいらない」と見ている。

「ヒットこそ出ませんでしたが、大丈夫そうに見えます。3打席目は、たまたまいいところに投げられてしまいましたが、1打席目にハーフスイングで三振したボールと同じようなコースへの左投手のスライダーをレフトに運びました。正面への左飛になりましたが、あそこに飛んだ打球がスライスしていた。自分の方に入ってくる球を打った打球がスライスしたということは、バットが内から出ている証拠です。それを若干こすったというか、たまたま正面に飛んだだけで。内側からバットが出てしっかり捉えたなら、何の問題もないなと感じました。たまたまポイントが近かっただけなのではないかなと。もう1つ前に自分のタイミングで打っていれば、スタンドまで行ったでしょうから」

 状態は決して悪くないだけに「このまま山田が1番、坂本が6番という形がいいかなと思います」と野口氏は言う。

「この一戦で少し期待値が増えたかなと感じました。ベネズエラ戦は勝利が最大の収穫という試合でしたけど、プエルトリコ戦は今後への楽しみを持たせてくれる一戦になりました。スーパーラウンドでも、高橋の使い方は重要になるということも再確認できました。すでに進出を決めたアメリカ、メキシコあたりにもアンダースローが効きそうなので、他にもいいピッチャーいっぱいいますが、やはり高橋をどの試合で投げさせるかが鍵になってくると思います」

 スーパーラウンドでは、オープニングラウンド同組の相手との対戦成績はそのまま採用されるだけに、すでに進出を決めている国同士の対戦となる7日の台湾戦も絶対に負けられない一戦。さらに多くの選手が本調子を取り戻し、勝ってスーパーラウンドに弾みをつけたいところだ。(Full-Count編集部)

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