かつ丼チェーンに投資して4年で20倍、数億円を稼いだサラリーマンの投資法

人気投資ブログ「エナフンさんの梨の木」の筆者エナフンさんこと奥山月仁さん(いずれもハンドルネーム)は大化けする割安成長株を見つけ出し、数億円の資産を築きました。普段は会社に通う普通のサラリーマン。そんなエナフンさんに投資家として成功するまでの道のりや普通の初心者でも大きく儲けられる方法を聞きました。前編・後編に分けてお伝えします。


3年で2,000万円を貯める

――株式投資を始められたのは高校2年生のとき。父親から株を譲り受けたのがきっかけとエナフンさんの著書「エナフン流株式投資術」(日経BP社)に書かれています。

子供の頃から折りに触れて親戚が私にくれていたお祝い金を両親が預かっていて、大学生になる前に返してもらえることになりました。金額は30万円ほど。受け取り方は現金か父のもっていた株のどちらか好きな方を選択するようにと言われたので、迷わず株を選びました。銘柄は山一証券でした。後に自主廃業に追い込まれるのですが、そのころはバブル経済の入り口で、1000円くらいだった株価が上昇して2年で3倍になったんですよ。その体験のおかげで株式投資に興味をもつようになりました。大学は経済学部を選び、証券理論のゼミで学びました。

――証券理論を学びながら株式投資を実践されたのですね。

大学時代はギャンブルをして遊んでばかりいましたね。株も趣味の延長線上で自分なりに考えて買うようになりました。ファナックやら東京電力やら会社の規模が大きくて話題の本命株を買っていましたが、今思うと、へたくそですね。勝ったり負けたりしていました。ただ、株式投資でチャンスを見つけるための素養はこの頃に生まれたと思います。

――趣味を脱して本格的に株式投資を始めたきっかけは?

結婚生活がきっかけでした。私も奥さんも年収は世間並み。まずは二人で働きながらお金を貯めようと節約生活を始めました。電気はこまめに消すとか閉店間際のスーパーで安売りの総菜を買うとか、世の中にあふれている節約術をひたすらしていました。

節約は難しくないと思いましたね。やるかやらないか覚悟を決めるだけですから。努力が結果に表れやすいし、ゲームだと思うと、けっこう楽しめます。ドケチを貫いた結果、3年余りで2,000万円も貯まり、600万円を株式投資にまわすことにしました。

――ドケチで貯めたお金の3割を株式投資につぎ込むとは思い切りましたね。

株式投資を再開したのはちょうどいいタイミングだったんですよ。2003年から2007年にかけて小泉純一郎政権の政策でマーケットが安定していて、特別なことはしていなかったのに株価はどんどん上がって、4年間で元手の600万円を3倍にすることができました。だけど、そのときになってすごく後悔しました。「もっと儲かる方法があった」と気が付いたからです。

その頃はファンダメンタルズを重視した短期トレードで、何パーセント上がったら利益確定、何パーセント下がったら損切りとルールを決めて売買していました。投資家の間でも主流の方法でしたし、私も正解と思っていましたが、正解ではなかった。

というのは売らずに持っていたら、8倍、10倍になっている銘柄がいくつもあったんですよ。「なんて稚拙なトレードをしていたのか。これじゃやらないほうがマシだった」とすら思いましたね。

――その後悔から投資方法が短期売買から長期売買に変化したのですね。

はい、どっしり構えて、少々の変動を気にせずに成長力のある株を中長期でもつことにしました。そもそも短期トレードはサラリーマンには難しい。日中は株価が気になって仕方がないし、それでは本業にも影響を与えてしまう。株で損して上司に怒られてでは最悪。勝っていても値動きが気になりますからね。

成長株はどうやって探す?

――成長力のある株はどのように見つけたのですか?

どのような投資方法が自分に向いているか考えているときに思い出したのが、米国の伝説的なファンドマネージャーピーター・リンチが書いた「ピーター・リンチの株で勝つ」という本でした。たまたまドケチ生活をしていたときに読んだのですが、「古い投資法かな」と、その頃はあまり共感しなかったのですが、株式投資をある程度経験してから、改めて読み返すと、「これだ!」と確信しました。

――どのような理論なのですか?

ピーター・リンチは「誰もが目を背けるような不人気な業種」や「自分の身近にある会社」の銘柄を買えと言っています。

今でいえばAIやロボットなど輝かしいイメージの企業の株が人気になりやすい一方で、まったく見向きもされない業種の株は安いまま放置されていますが、業績が悪いかといえばそうではない。

――なるほど。人が見向きもしない銘柄とはたとえばどのような業種ですか?

私が買った銘柄では葬儀会社の「ティア」がありました。葬儀会社はイメージはいたって地味ですが、高齢化で需要が見込めるし、景気に左右されない。買ったのはリーマン・ショック後の2009年頃でしたが、映画「おくりびと」の話題にも乗って株価は大きく上昇しました。リーマン・ショック後で、日本を代表するトヨタの株が値下がりしていましたが、葬儀会社の株で儲けることができました。

――「自分の身近にある会社」とはたとえばどのような会社ですか?

自分の日常生活や趣味にかかわる会社の中に意外な大化け株があります。外食産業で何かピーター・リンチ理論にあてはなる会社はないかと探していたときに見つけたのが、いつも利用していたかつ丼チェーン「かつや」でした。

サラリーマンは本当にかつ丼が好き。「かつや」はそのかつ丼を低価格で提供していました。観察すると、おっさんのサラリーマンがどんどん入ってきて回転率がすごくいい。調べてみると運営しているのは「アークランドサービスホールディングス」という上場企業。オートフライヤーで合理化することで安い料金を実現し、なおかつ人が調理した味に近づける努力をしていることもわかりました。業績が伸びているのに株価はすごく割安。「これはいい! ついに見つけたぞ」と勝負をかけました。2008年に購入した株は4年後、20倍になりました。

――それはすごいですね。外食産業は飽和状態と言われますが、大化けする株が身近に潜んでいるんですね。

外食産業のように全体的にはダメだと思われている業種から伸びている株を探せばチャンスがあります。ピーター・リンチは「砂漠の中の一輪の花」と言っています。

ソニーの株価上昇を予想

――そうした銘柄を見つけるには日頃から自分のまわりを意識して観察する必要がありますね。

観察力で見つけた例ではソニーがあります。最先端の技術力で日本を代表する企業だったソニーも2000年代はかつての勢いを失い、業績も低迷していました。2015年はマーケット環境が良くなくて、ソニーの株価も大きく下がっていました。

そんなときに、家電量販店に行くと、「音を奏でる照明」という画期的な商品が売られていました。「へー、ソニーはこんなものを売り出すのか」と思ったときにピンと来ました。

「そういえば、ハンディカムもテレビも『ソニーが一押し』と商品棚に書かれていたな」と。2012年に平井社長が就任し、ソニーの経営は良くなっているのではないか、とファンダメンタルズを調べてみたら、特損を出しているものの業績は確実に伸びていました。世間的には「ソニーはつぶれるんじゃないか」とすら思われていた時期。そのギャップに注目して買ったところ、株価は倍以上になり大儲けしました。

――大化け株を続々とゲットし、サラリーマンでありながら数億円の資産づくりに成功できたのは、すごい才能だと思います。

いやいや、大化け株は誰にでも見つけられますよ。初心者がいきなり大化け株を見つけるのは難しいかもしれませんが、勉強して実践を重ねてコツがわかれば必ずチャンスをつかめるようになりますよ。

※本記事は取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。投資に関する最終決定はご自身の判断でなさるようお願いいたします。

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