依存症患者に肯定感を 精神科医・吉田さん 熊本市で講演

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 アルコールや薬物依存に悩む患者と家族の支援に取り組む、精神科医で藍里病院依存症研究所(徳島県上板町)の吉田精次所長の講演が2日、熊本市であり、患者の行動を否定しないことで治療を継続できる環境を整える「CRAFT」と呼ばれる治療手法を解説した。

 CRAFTは1980年代に米国で開発。日本では2010年ごろから導入が始まった。患者の6割超が治療につながるとの報告もあり、注目を集めている。

 依存症は患者自身が病気を受け入れ、年単位の長期治療を続けることが重要とされる。ただ「お酒や薬を飲んではいけない」という説諭型の言葉は患者にストレスを与え、依存行動を繰り返す原因ともなる。吉田医師は「患者本人も自分に絶望している。正論は人の心を閉ざす。問題点を指摘するやり方はよくない」と話す。

 CRAFTはまず家族や支援者をカウンセリング。肯定的な言い回しなどを学ぶ。具体的には「酒を飲むな」ではなく、「私はあなたに元気でいてほしい」などと伝える。吉田医師は「主語を『You=あなた』から『I=私』に変えると、対立を生みにくい」と助言する。

 カウンセリングでは、家族内にある「もやもや」を全て吐き出してもらうことも重視する。患者が受診を受け入れるきっかけを探り、本人の肯定感につながる言葉などを、ともに考えていく。

 患者をコントロールしようとすることで、拒否や反発を受ける家族もまた、心身にダメージを受ける。吉田医師は「家族が患者への理解を深めてお互いの内面が変化すれば、回復を支援する家族間の関係が良くなり健康度も増す」と説明した。

 講演は熊本市こころの健康センター主催。中央区のウェルパルくまもとであり、依存症の患者家族ら約50人が聴いた。(林田賢一郎)

(2019年11月8日付 熊本日日新聞朝刊掲載)