ULTRA JAPAN 2019の挑戦 ムーブメントからカルチャーへと昇華した6年目

2019/9/14(土)と15(日)の2日間にわたって、お台場ULTRA JAPAN特設会場にてULTRA JAPAN 2019が開催された。1999年から毎年3月にマイアミで開かれている世界最大級のダンス・ミュージック・フェス、ULTRA MUSIC FESTIVALの日本版として2014年に初上陸したULTRA JAPANは、2019年で6年目に突入。今年は2014年以来の2DAYS開催となった。

初日には通算動員数50万人を突破するという日本のダンス・ミュージック・フェスとしては初の快挙を成し遂げたULTRA JAPAN 2019。ULTRA JAPAN 実行委員会によれば、ダンス・ミュージック・フェスを一過性の流行ではなく、ひとつのカルチャーとして日本に根付かせるべく、これまで「ムーブメントからカルチャーへ」というテーマで行ってきたが、昨年の5周年というメモリアルイヤーで一つの大きな区切りを迎え、土台ができつつあると感じたそうだ。6年目となる今年は、元号・レイアウトの変化と共に、都市型フェスのULTRA JAPANの軸をぶらさずに、来場者にどれだけ新たな価値を提供することができるか、挑戦が必要な年となった。昨年に引き続き2回目となるレポートで、新たなULTRA JAPANがどのようなスタートを切ったのか、現場の模様を紹介する。

9/14(土)には、2年連続・通算5度目のULTRA JAPAN出演となったDJ Snake、フォーブス誌が毎年発表している「世界で最も稼ぐDJランキング2019」で4位となったSteve Aokiがヘッドライナーとして登場。その他、Pendulumのオリジナル・メンバー3人によるDJユニットで今回が日本初お披露目となったPendulum TRINITY、ドラムンベース界の寵児と称されるベルギーのNetskyなどがメインステージでのパフォーマンスを行った。

Steve AokiはDJプレイのテクニックはもちろんのこと、シャンパンを振りまいたり、客席にケーキを投げたりと、パフォーマンスでもオーディエンスを魅了。Alan Walkerと組んだ「Are You Lonely」などの楽曲では会場全体で大合唱が巻き起こった。

Steve Aoki

初日のトリを飾ったDJ Snakeは、最新アルバム『Carte Blanche』収録曲から、世界的なヒットを記録した「Lean On」等のアンセムまで、新旧交えたセットを披露。最終盤には同郷フランスのレジェンド、Daft Punkによるダンス・ミュージック・クラシック「One More Time」まで飛び出し、ULTRA JAPAN 2019初日は大団円を迎えた。

DJ Snake

2日目の9/15(日)は、どちらも2年連続のULTRA JAPAN出演となったAfrojackとGalantisがヘッドライナーとして出演。その他、今年フロントマンのJeffrey Sutoriusのソロプロジェクトとして復活を遂げたThe Return of Dash Berlin、トラップやハードスタイルを巧みに操るベース・ミュージック・シーンの雄KAYZO、活動歴23年を誇るサイケデリックトランスを代表するベテランのInfected Mushroomなど錚々たる面々がメインステージを盛り上げた。

初日のキーとなっていたのがNetskyやPendulum TRINITYによるドラムンベースだったとすれば、二日目のキーはサイケデリックトランスと言えるだろうか。Infected Mushroomの堂々たるサイケ・ビート、KAYZOによるジャンルを横断するベース・ミュージック、復活したDash Berlinの熱の入ったパフォーマンスは、ULTRA JAPANの音楽性をさらに拡張。一つのジャンルにとらわれず、多種多様なダンス・ビートが展開されていく。

Infected Mushroom

ULTRA JAPAN 2019の大トリとして登場したAfrojackは、マッシュアップ連発の息をつかせぬ展開を見せ、初日に続いてDaft Punkの「One More Time」から怒涛の終盤へと突入し、最後は昨年亡くなったAviciiの大名曲「Wake Me Up」で大合唱の幕引きとなった。

Afrojack

アクティビティやスポンサーブースも充実一人ひとりの楽しみ方を提案する会場設計

最寄りの駅に到着すると、駅周辺からすでに多くの人だかり。特設会場はお台場のシンボルプロムナード公園ウエストプロムナードを中心に設置されているが、すぐ近くにダイバーシティ東京プラザやヴィーナスフォートといったショッピング施設があるため、ULTRA JAPAN来場者も気軽に利用している様子だった。会場のゲートをくぐると、まず見えてくるのがULTRA PARK STAGE。ここにも有名DJが多数出演しており、絶え間なく来場者を盛り上げている。ULTRA PARK STAGE周辺は音楽のみならず、インスタ映えするスポットが多数。ULTRA JAPANの看板ロゴや巨大スニーカーが設置されたスポットには、写真撮影のために長蛇の列ができていた。

巨大な外骨格ロボットが人体の動きと連動するスケルトニクスや、無料でヘアアレンジをしてもらえるHAIR BEAUTY BOOTH、様々な味のチュッパチャップスの配布など、アクティビティやブースも充実。Tシャツ、ビーチタオル、キャップ、パーカーなど20種類以上もあるオフィシャルグッズを身につけている来場者も多く、ボディペインティング、フェイスペインティングを合わせた華やかなファッションでフェスを楽しんでいる様子だった。

さらに会場の奥に進むと、広大な面積を誇るMAIN STAGEが見えてくる。世界的なスターDJが集うだけあって、音楽そのものを楽しんでいる来場者が多い印象だ。MAIN STAGEには女性専用エリアが設けられている他、会場の左手にはVIP専用エリアを設置。後方にはドリンク・フードが取り揃った飲食ブースが立ち並ぶ。来場者一人ひとりが自分なりの楽しみ方で安心してULTRA JAPANを楽しめる工夫がなされていた。

「フェス業界初」や「コラボレーション」も新たな施策でクリーンさと快適さを追求

ULTRA JAPANは「SNSで広がるフェス」であり、今年もSNSへの投稿を推進する様々な試みが見られた。その一つがフェス業界初となるAR FACE FILTER導入だ。これはULTRA JAPANの公式 InstagramやFacebookで使用でき、画面をタップするごとにフィルターの種類が変わって色々なモチーフが浮かびあがるという機能。「#ultrajapan」のハッシュタグには、AR FACE FILTERを使って会場で撮影した写真が多数投稿されていた。

今年は9月7日に開催された『第29回東京ガールズコレクション2019 AUTUMN/WINTER』にて新しいフェスファッションをテーマにULTRA JAPANとのコラボステージを実施。そのコラボもあって、世界的なトレンドであるネオンカラーを取り入れたフェスファッションが来場者に浸透していた。FacebookでオフィシャルグッズのネオンTシャツに反応するフィルターが登場していたこともあり、最先端のフェスファッションで写真撮影・SNS投稿を楽しんでいる来場者の姿が多かった。

また、今年からの新たな施策として、よりクリーンで快適なフェスの実現に向けたULTRA CLEANプロジェクトを実施。このキャンペーンは、大量の飲食用コップや容器の放置・ポイ捨て、紙巻たばこの喫煙による煙のニオイの問題や吸い殻のポイ捨てといった、大規模イベントが抱える課題を解決するための環境改善プログラム。来場者全員に会場入口で専用スタンプカードを配布し、会場内で放置されているゴミを指定回収所に集める度にスタンプが貯まるという内容で、一定数のスタンプが貯まった来場者は抽選でメインステージを一望できる専用タワーブース/VIPエリアへのアクセスが可能となる。実施初年にも関わらず多くの来場者がキャンペーンに参加しており、会場内は例年以上にクリーンに保たれていた。

変化を繰り返すULTRA JAPANレイアウト変更とホスピタリティの充実

客層は、トレンドやファッションに敏感な20代の男女を中心として、ULTRA JAPANの楽しみ方を知っているリピーターも多い印象。ただ、若い層だけでなく幅広い年代の人でも楽しめる、あるいは毎年訪れているファンであっても飽きずに楽しめるよう、ホスピタリティ面では様々な工夫が見られた。

その一つがチルアウトスペースの設置だ。VIP専用のチルアウトスペースである「ULTRA LOUNGE」は、6年間で初めて、MAIN STAGEを眺めながら、南国のリゾートを思わせるソファーなどが芝生の上に設置されたラグジュアリーな空間でチルアウトできるロケーションにアップグレード。最後まで途切れることのない熱狂の様子を、ソファーに座りながら悠然と眺めることができるスペースとなっていた。

この「ULTRA LOUNGE」をはじめとして、今年のULTRA JAPANはレイアウトの大幅な刷新が行われた。その理由は2020年の東京オリンピック開催と関係していたのだという。

東京オリンピックが開催される関係で、今年のULTRA JAPANはお台場で開催すること自体に大きなハードルがあり、行政との度重なる折衝の末、なんとか会場を押さえることができた。ただ、一部エリアがオリンピックテストイベントの使用地に指定されていたため、レイアウトの変更を余儀なくされた。レイアウトが変わることを来場者にどれだけポジティブに捉えてもらうか、委員会で何度も議論を重ねた結果、出た結論が「新しいレイアウトを活かし、フェス体験をより向上させる」コンテンツを用意すること。やむを得ないレイアウトの変更をポジティブに変換し、ホスピタリティの向上へと繋がったと言える。

2日開催への変更やレイアウトの刷新をはじめとして、大幅な変化があった2019年だが、SNSの投稿や会場の来場者からは「最終日の翌日が祝日であることが嬉しい」という反響もあったという。6年の歳月をかけてダンスミュージック・フェスというカルチャーを日本に根付かせ、その象徴的な存在となったULTRA JAPAN。ULTRA JAPANが特別であり続ける理由の一つには、ULTRA JAPANとしての軸を決してぶらすことなく、音楽性に演出、ホスピタリティなど、あらゆる部分を刷新し続けてきたことが挙げられる。様々な試みが見られた6年目も、日本のダンスミュージックシーンに大きな影響を与えたことは間違いないだろう。

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